アリが複雑な巣を効率良く掘り進めるメカニズムとは?

GIGAZINE



アリについては多くの研究が行われており、人間と同様の戦争を繰り広げる理由や、アリの行列が渋滞しない理由などが明らかになっています。新たに、カリフォルニア工科大学の研究チームによって、アリが巣作りする際のメカニズムの一部が解明されました。

Unearthing real-time 3D ant tunneling mechanics | PNAS
https://doi.org/10.1073/pnas.2102267118

The science of ants’ underground cities | EurekAlert!
https://www.eurekalert.org/news-releases/926057

Study: Ants create stable tunnels in nests, much like humans play Jenga | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2021/08/tiny-jenga-ants-can-sense-which-soil-grains-to-remove-when-digging-tunnels/

アリは、地中を掘り進んで複雑な構造の巣を作ります。研究チームは、アリが巣を作る際にトンネルを掘る道筋を考えながら掘り進んでいるのか、それとも行き当たりばったりに掘り進んでいるのかを確かめるべく、アリが巣作りする様子を観察しました。研究チームの一員であるホセ・アンドラーデ氏は「私たちは、アリが『掘ったら崩れてしまう地点』を、ジェンガをプレイするように避けることができると仮定しました」「私たちはアリが地中を掘り進む際に砂の粒をたたいて、それぞれの粒に加わっている力の大きさを評価していると考えたのです」と述べています。

研究チームは1年近くかけて観察に適した個体数までアリ(Pogonomyrmex occidentalis)を繁殖させた後、土で満たしたカップにアリを入れて巣を作らせ、エックス線を用いてアリが掘り進んだ巣の形を可視化しました。その結果、アリが主に直線を描くように土を掘り進めることや、カップに面した位置を多く掘り進むことが明らかになりました。


アンドラーデ氏は「直線は2点間を結ぶ最短経路であるため、アリが土を直線に掘り進めることは理にかなっています」「アリはカップの側面を利用することで、土掘るために費やす体力を省き、非常に効率的に地中を掘り進むことができます」と述べ、アリが巣作りを可能な限り効率化していると考察しています。

次に、研究チームはカップの中の土の粒子1粒ずつの力の大きさや方向を可視化し、アリが土を掘る前(左)と堀った後(右)の地中の力のかかり具合を比較しました。その結果、アリが掘り進んだ後も、地中の粒子同士のバランスが保たれ、巣が崩壊しにくい状態が保たれることが判明しました。


今回の研究では、アリが巣の崩壊を防ぐためにバランスを保ちつつ、効率良く穴を掘り進んでいることが明らかになりました。しかし、アンドラーデ氏は「アリは巣の構造を考えながら穴を掘っているのではなく、何らかの法則に従って掘り進めていることが分かりました」と述べ、アリが考えながら穴を掘っているという仮説を否定しています。

また、アンドラーデ氏によると、アリの土を掘る順路を決めている法則は、アリ単体ではなくアリの集団全体が一つの脳のように振る舞うことで形成されているとのこと。アンドラーデ氏は「アリは超個体として法則に従いながら穴を掘ります。その行動プログラムが複数のアリの脳全体にどのように広がっているかは、私たちが説明できない自然界の不思議です」と語り、今後もアリが巣作りに利用している法則を解明するべく研究を続けると述べています。

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