本当にそうなった”失われた30年”:GDPはあと数年で10位まで下落

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バブル崩壊後の経済低迷を揶揄して「失われた〇年」という表現は耳にタコができるほど聞いてきましたが、19日付日経トップ記事「止まらぬ円安、縮む日本 ドル建てGDP、140円換算で30年ぶり4兆ドル割れ 経済構造の転換急務」を読む限り、数字として改めて見せつけられた気がします。個人的にはショックです。

この記事のポイントを羅列しましょう。

  • 日本のGDPは今年末にもドイツに抜かれて4位になる公算高し
  • GDPは30年ぶり、1992年来の4兆㌦割れ
  • 平均賃金はドル換算で見れば1990年並み
  • 今年の日経平均はドル建てで23%安、だが、外国人投資家の触手は動かず

仮にこの円安がこの水準、ないし更に悪化し、それが定着した場合、日本のGDPは5-8年程度で世界10位程度まで下落する公算が出てきました。その場合の一人当たりGDPは見るに堪えない数字になりそうです。

voyata/iStock

日本の年収中央値である男女の年収300万円とか400万円といった水準はドル建てで2万㌦から2万8千㌦程度ですが、北米でちょっと稼ぐ人なら3-4か月分の収入でしかないのです。これで世界有数の経済大国というのはおこがましいかもしれません。

では円安なら貿易が伸びるだろうと思いますが、これがまた散々なのです。8月の貿易統計は輸出が8.1兆円、輸入が10.9兆円、その差額2.8兆円の赤字です。ちなみに1-8月の貿易赤字の累計は12.2兆円で年間で過去最大の赤字だった2014年の12.8兆円を9月に抜くのがほぼ確実でその時には大きなニュースになるはずです。

円安だから輸出が伸びているだろう、といえば金額的には伸びているのですが、輸出入数量指数が下がっているのです。この指数は品目ごとの単価を合成して作る指数なのですが、残念ながらこの7-8年、ほぼ変わっていないのです。ましてや円安だから輸出ドライブが効くというのは80年代までの話なのです。

国内の製造能力指数というのもあります。為替リスクや運送コストを嫌い、税制や現地雇用など政治的配慮や許認可問題をクリアするため、企業の海外移転(いわゆる地産地消)も進みました。国内では景気の先読みに対する躊躇や少子化から投資が伸びなかった結果、現在の製造業の生産能力はなんと1984年水準とされます。おまけに輸出したくてもその部材を輸入しなくはいけないのでどうにもならないということであります。これでは手も足ももがれてしまったようなものです。

このような総悲観の中で明るいネタになりそうな観光業の復活はどうなのだろうか、と思うでしょう。ところが今週の日経ビジネスの特集が「出直し観光立国 『訪日客6000万人の罠』」です。罠なのですね。

記事でまず菅元総理がコロナ前の観光立国に向けた動きに関してご自身のご自慢の功績が披露されています。その上で菅さんは「5月に発表された世界経済フォーラムの21年版『旅行・観光開発指数』で、日本は世界1位になりました。インバウンドを3200万人に増やした努力が評価されたのでしょう。日本のインバウンドは6000万人ぐらいが通常になると見ています」と超強気の姿勢です。

ところがこの特集記事のポイントは「稼げる観光を実現するミッション 『数』の罠から脱却し 『質』で客を魅了せよ」であります。菅さんのご意見を否定しています。記事中に星野佳路さんが「実情は観光客の『数』を追うことに終始していました。その結果、売り上げは増えたものの利益はあまり出ず、理想にはほど遠かったと言えます」と厳しいコメントを残しています。

つまりいくら来ても儲からないビジネスだという訳です。それもちょっとおかしな気がします。ただ、個人的な意見としては観光地の宿泊施設は古くリノベしていないところも多く、一般的な外国人が期待するスタンダードに到達していないところも多いようです。テレビ番組などでコアな日本ファンのボイスだけを拾いすぎて何が本当の意見なのか判断できなくなっているきらいがあります。サービスを一生懸命しているスタッフに対して外国人客の期待は全然違うところにあるといったすれ違いなどは飲食店では日常茶飯事的に起きています。これではお金は落としてもらえないのです。

私はこのブログで「大丈夫か、ニッポン」を10年以上言い続けてきました。それに対して外国人はいらない、人口は減ったほうが密度が下がっていい、日本の力は捨てたものじゃない、日本がアルゼンチン化するわけがない…とご意見を頂戴し続けました。それはそれでごもっともであるのですが、最近は私の立ち位置にご理解いただける方も少し増えた気がします。

こういうことは中から見るとわかりにくいものです。また、よそ者が何を言う、中にいる人が幸せならそれでいいじゃないか、と言う意見もあります。しかし、60代、70代の方の人生最後のストレッチの話ばかりではなく、まだ第一コーナーに差しかかったばかりの若者や30年間浮かばれない社会を経験した第三コーナーにかかる世代のことも考えてあげるべきだと私は思うのです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年9月20日の記事より転載させていただきました。

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