炎が宇宙探査に水を差すとかシャレにもならない。
現在、南カリフォルニアで猛威を振るっている山火事は、宇宙からでも見えるほどの規模。しかも、宇宙関連の研究にまで影響を及ぼしているらしいですよ。
山火事で想定外の避難
パサデナにある米航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所(JPL)では、イートン火災が迫ってきたため、1月8日に避難を余儀なくされ、13日まで閉鎖されました。幸い研究所自体は火の手を免れましたが、この緊急事態によってJPLのデータ処理が支障をきたすことになったといいます。
火災はJPLコミュニティに大きな影響を与えましたが、遠距離宇宙通信網(DSN)は、避難中も稼働しているすべての宇宙機器や探査機との通信を維持できたとのことです。
JPLのLaurie Leshin所長は、X(旧Twitter)に次のような投稿をしています。
消防士の皆さんの献身的な働きのおかげで、JPLは火災の被害を免れました。しかし、150人以上の職員が家を失い、さらに多くの職員が避難を強いられるなど、私たちのコミュニティは深刻な打撃を受けています。
この厳しい状況は、JPLのFacebookの管理者による12日のコメントで確認できます。今週はほとんどのスタッフが在宅勤務をしているそうです。
開設60年でオペレーションセンターが初の無人状態に
JPLはNASAに代わってカリフォルニア工科大学が運営する、連邦政府出資の無人宇宙探査研究所です。また、巨大な電波アンテナを使って宇宙探査機との通信を行なうDSNの本拠地でもあります。
1950年代後半から60年代初頭に設立されたDSNは、現在もボイジャー探査機や火星探査車、木星を周回するジュノー探査機との通信を維持しています。
JPLの宇宙飛行オペレーションセンターは「1964年以降、毎日運用とスタッフ配置が行なわれてきました」とNASAは述べています。
施設も機器も今のところ無事
研究所のウェブサイトに掲載された避難勧告によると、
JPLの施設、研究室、機器は安全に保護されています。通常JPLで行なわれているDSNの運用は、バックアップのオペレーションセンターに移されました。
とのこと。
少し明るいニュースとして、DSNチームは避難中も宇宙機との連絡を維持していたとSpace.comが伝えています。
Space.comによると、メリーランド州で開催されている第245回アメリカ天文学会の会議で、NASAのNicola Fox副長官が次のように述べたそうです。
我々の素晴らしいDSNチームは、データの損失を防ぐために全力を尽くしました。JPLのミッションコントロールセンターから誰もいなくなったのは、60年の歴史の中で初めてでした。緊急センターに移動しなければならなかったため、非常に感慨深い出来事でした。
一部のデータ処理に支障も
残念ながら、避難の影響で一部のデータ処理に支障が生じました。その中には、宇宙機器で記録された直後に利用可能な情報である準リアルタイム(NRT)データや、土壌に含まれる水分を能動的、受動的に観測するSMAPプラットフォームのデータ、大気の状態を1日2回測定するマイクロ波リムサウンダ(MLS)のデータなどが含まれるといいます。
JPLが無事だったことは科学界にとって朗報ですが、15日まで続くと予想されているサンタアナの乾燥した強風に研究所がどんな影響を受けることになるのか、まだまだ予断を許さない状況が続きそうです。