日米から民間の2機が月に向かって打ち上げ。輸送サービスの実現に期待

月がどんどん身近になっていきそう。

2024年はIntuitive Machines(インテュイティブ・マシーンズ)が民間企業として初の月面着陸を実現し、人類と月の距離が一歩縮まった感じでした。Intuitive Machinesに限らず、今やさまざまな民間企業が月を目指していますが、2025年1月にはさっそくふたつの民間宇宙船が月を目指して飛び立つ予定です。

1月に打ち上がるのは、米国Firefly Aerospace社の着陸船・Blue Ghostと、日本のispace社の着陸船・Resilience(レジリエンス)です。どちらも1月中旬に予定される6日間のどこかで、SpaceXのFalcon 9ロケットに載せられて月を目指します。

それぞれの月の海へ

Blue GhostとResilienceが着陸するのは、それぞれ別の「月の海」です。月の海とは、月の表面に黒っぽく見える平原で、太古の昔に微小な惑星の衝突でできたクレーターが溶岩で埋まって形成されました。

FireflyのBlue Ghostミッションは、NASAの商業月面輸送サービス(Commercial Lunar Payload Services、CLPS)の一環として、10種類の科学装置を輸送します。着陸地点は「クリシウム海」(または「危難の海」)と呼ばれる地域で、NASAいわく25億〜33億年前の玄武岩でクレーターが埋まっています。

Firefly Aerospaceによれば、クリシウム海に降り立ったBlue Ghostは月における「1日」(地球の14日間に相当)をかけていくつもの作業をこなします。たとえば月における日没の撮影や、月の表土の太陽に対する反応のデータ収集などです。そのためBlue Ghostは、月の表土採集や放射線耐性テストなどに必要なペイロードを積んでいます。

一方ispaceは東京を拠点とするスタートアップで、着陸船Resilienceには「Tenacious(テネシアス)」という小さな探査車を載せています。目指すのは月のかなり北のほうになる、「フリゴリス海」(または「寒さの海」「氷の海」)というエリアです。Blue Ghostと同じように科学装置を満載していますが、それら装置を開発しているのも主に日本の宇宙ベンチャーたちです。

ispaceが月面着陸を試みるのは、今回が2度目になります。最初にトライした2023年4月のHAKUTO-Rミッション 1(M1)では、着陸船が月に墜落してしまったんです。HAKUTO-R M1のペイロードは官民両方あり、JAXAなどが開発した探査車「SORA-Q」も載せられていました。

月への民間定期輸送を見据えて

Blue GhostとResilienceは同じロケットで打ち上がりますが、ロケットから月への道のりは違いますSpaceNewsによれば、Blue Ghostは25日ほど地球の軌道上にとどまってから月の軌道に入り、そこで16日過ごしてから月にタッチダウンします。

一方Resilienceはもっと時間をかける予定で、HAKUTO-R M1のときは月面到達までに4カ月半を要していました。こちらのHAKUTO-R ミッション2の解説によると、まず地球の軌道で1カ月ほど周り、月とフライバイするタイミングで月の重力を使い「低エネルギー遷移軌道」という大きな軌道に移行してから、月への軟着陸を試みるそうです。

2025年初旬には、Intuitive Machinesも次なるミッション・IM-2を予定しているとのこと。もしBlue GhostやResilienceも無事にミッションを成功させれば、民間企業による月面着陸が相次いでいくかもしれません。

Blue GhostもResilienceも、月の上に降り立つ場所やミッションの細かい中身こそ違うものの、月への民間定期輸送サービスを見据えたミッションという点では共通しています。1月の打ち上げも予定通りできるかどうかはまだわかりませんが、いずれにしても遠くない将来、月と地球を行き来するのがごく普通になっていきそうな予感ですね。