肉食オオカミ、蜂蜜なめて植物の交配のお手伝い

スイーツ好きのオオカミがいたっていいじゃない。

オオカミが蜜をなめているという驚きの発見が話題になっています。肉食動物として知られるエチオピアオオカミ(Canis simensis)が、花の蜜をおいしそうになめている姿が初めて観察されました。

日本では見た目からアビシニアジャッカルとも呼ばれていますが、英語名はEthiopian wolfです。DNAはジャッカルよりもオオカミに近いそう。たしかに見た目はオオカミよりコヨーテやキツネに近い感じがしますね。

大型肉食動物が花粉を媒介している可能性

オックスフォード大学の生態学者チームが学術誌Ecologyに発表した研究結果は、エチオピアオオカミが昆虫や鳥などの一般的な花粉媒介者と同じように、花粉を花から花へと運んでいる可能性を示唆しています。大型肉食動物が意図的に花の蜜を摂取する様子が確認されたのは、これが初めてということです。

研究チームは、Ethiopian Red Hot Poker(シャグマユリ属)の開花時期に特定のオオカミの群れを追跡調査したところ、一度に30本もの花の蜜をなめる個体もいたといいます。

また、まだ幼いオオカミが、親や群れの他の個体から蜜をなめる方法を教わる「社会的学習」も確認できたと報告しています。

研究者たちは、オオカミが蜜をなめるために花から花へと移動することで、花粉を媒介している可能性が高いと考えています。

ちなみに、オックスフォード大学のClaudio Sillero氏によると、Ethiopian Red Hot Pokerの蜜は心地よい甘さなのだとか。なめたんかい。

地元の人たちは、この花の蜜をハチミツやコーヒーの甘味料として使っているらしいですよ。ちょっと味見したい。

研究チームによると、オオカミの行動は偶然じゃなく、植物との相互作用の一部である可能性が高いそうです。肉食動物と植物が相互に関わり合って地域の生態系のバランスを保っているのだとしたら、なんかよくないですか?

今回の結果は、エチオピアオオカミが単なる肉食動物ではなく、地域の生態系においてこれまで知られていなかった役割を果たしている可能性があることを示唆しており、エチオピアオオカミの生息地を保護する重要性を再認識させるものとのことです。

研究者は今後、花の蜜がオオカミの栄養摂取でどのような役割を果たしているのか、オオカミが機能的に花粉媒介者としての役割を果たしているのか、オオカミと植物が相互進化しているのかなどを解明したいと論文の中で述べています。

エチオピアオオカミは絶滅の危機

エチオピアオオカミは、世界で最も希少なイヌ科動物で、肉食動物としてアフリカで最も絶滅の危機に瀕しており、エチオピアにある6つの飛び地に限定された99の群れに500匹に満たない個体が分散しているといいます。

論文の主執筆者であるオックスフォード大学のSandra Lai氏は、ニュースリリースで次のように述べています。

この研究結果は、絶滅の危機にあるエチオピアオオカミについて、私たちの学ぶべきことがどれだけ多いかを浮き彫りにしています。また、アフリカの屋根と呼ばれる美しいエチオピアの高地に生息するさまざまな種同士の複雑な相互関係も明らかにしています。この非常に独特で多様な生態系は、今も生息地の消失や分断という脅威にさらされています。

Source: Lai et al. 2024 / Ecology, University of Oxford

Reference: Ethiopian Wolf Conservation Programme (EWCP)

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