英プレミアリーグがオフサイド判定にiPhoneによる新システム導入

たしかに小さくて防水で高解像度で深度も測れるカメラ。

サッカーの試合を見てると、ゴール前にボールがパスされ、シュート! …と思った瞬間試合が中断され、「オフサイドですね〜」って場面、ときどきありますよね。

オフサイド自体、素人にはわかりにくいルールなんですが、「オフサイドかどうか」の判定に使われるビデオ判定(video-assistant referee、VAR)もまた、時間がかかりすぎるなどの理由であまり評判が良くありません。

28台のiPhoneを駆使

そこでイングランドのサッカーリーグ、プレミアリーグ (EPL)は、VARにかかる時間を大幅短縮すべく、数十台のiPhoneを連動させる半自動オフサイド判定システムGeniusIQ」を今シーズンから導入するそうです。GeniusIQを開発したGenius Sportsは、米国のNBAで「光学トラッキングおよびデータに基づく実績」をすでに築いてきました。

プレミアリーグではGeniusIQを実装するため、iPhone28台を各スタジアムに配置する予定です。ちなみに使われるiPhoneのモデルは、WiredではiPhone 14となってますが、The VergeではiPhone 15 Proとされていて、本記事執筆時点ではまだ確認中です。

GeniusIQのiPhoneは、電源につながった状態で防水ケースに入れられ、冷却ファンも付いています。最大4台のiPhoneを搭載したマウントが2台、スタジアム全体に配置されます。台は可動式ですが、試合中は基本的に静止した状態で、一定の角度から動画を撮影します。

Wiredによれば、GeniusIQは「各プレイヤーについて、常時7,000〜1万のデータポイントをトラッキングできる」そうで、「筋肉量や骨格の違い、歩き方」といった特徴まで考慮に入れ、オフサイドの可能性を分析します。

The Vergeの取材に応じたGeniusIQのチーフプロダクトオフィサーMatt Fleckenstein氏によれば、従来のVARシステムが扱えるデータポイントの数は、プレイヤーあたり30〜40件程度に留まっていました。Wiredいわく、従来の動画技術が50〜60FPSに留まるのに対し、GeniusIQは最大で毎秒200フレーム捉えることができます。ただし実際のシステムでは、「レイテンシーと正確性、コストのバランスを取る」ため、100FPSに留めています。

GeniusIQでは直近のプレイがオフサイドだったかどうかを判定できるだけじゃなく、これからオフサイドが起こりそうかどうかの予測もできるそうです。オフサイドが起こりそうになると、カメラのフレームレートを自動的に上げて、より正確な判定を可能にし、その状況が終わるとフレームレートを通常に戻して電力セーブするそうです。

GeniusIQが集めたデータはすべて、「オブジェクト・セマンティック・メッシュ」なる機械学習システムに入力して、学習によりさらに賢くなっていくとのこと。

ちなみにGeniusIQの具体的な導入時期は、The Guardianによれば「来月(9月)のインターナショナルブレイク以降」になりそうです。サッカー観戦の興奮が途切れないようなシステム、できるでしょうか?

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