カバーディスプレイが便利。モトローラの折りたたみスマホ「Razr 50」

6月に発表されたMotorola(モトローラ)の折りたたみスマホRazrの2024年モデル。日本でもMotorola Razr 50の名称で発売が予定されています。

発表後すぐのハンズオンでも絶賛されていましたが、さらに米Gizmodo編集部がじっくりレビューを公開。ハンズオンでの直感通り折りたたみとしては素晴らしい。ただし、昨今のスマホとしてはカメラがね…。


縦型折りたたみでは最大級のカバースクリーンを搭載。昨年リリースされたMotoeola Razr 40は、正直、あまりライトが当たらなかった気がします。というのも、ハイエンドモデルのMotorola Razr 50 Ultraとは異なり、カバースクリーンが小さいかったから。防水性能もないし、暗所での撮影がいまいちだから。結果、価格差を考慮せずにRazr 40とSamsung(サムスン)Galaxy Z Flip 5と比較すると、軍配はSamsungに上がったのが2023年。

Razrのアメリカでの販売価格は700ドル(約10万1600円)、高位機種のRazr+が1,000ドル(約14万5200円、日本での価格は未発表)。

昨年から一転、今年のMotorola Razr 50はカバースクリーンがサイズアップ。去年の高位機種と同じく3.6インチまで大きくなりました。Motorola Razr 50 Ultraは4インチに。今のところ、市場にある縦型折りたたみスマホで、カバースクリーン4インチは最大。この一点だけでも、折りたたみスマホ業界のトップに君臨することができる魅力があります。

そのほかにもチップやジェスチャー機能、Gemini AI音声アシスタント、防水機能向上などアプデポイントは多数。去年のモデルと比較するのはフェアじゃないと思えるほど、今年のRazrは仕上がっています。

カバーディスプレイの向き不向き

レビュー期間中、大活躍したのが、3.6インチのpOLEDカバーディスプレイ(1056×1066、HDR10+)。このサイズなら絶対使うとは思っていましたが、思ってた以上によく使っていました。

Slackの通知などちょっとした確認はもちろん、簡単なゲームや、寝る前にちょっと見るYouTubeの動画も、折りたたみを開くことなく、このカバーディスプレイで事足りてしまいました。あとはメール見たり、写真撮ったり、Gemini AIに質問したり…。つまりスマホで行うほとんどのタスクが、このカバーディスプレイでできたということ。これ大事です、できるではなく、実際にできたということ。

画面のデザインとして、カメラエリアを設けずに画面で囲んだことで、よりスペースを感じる作りになっていて良い。ただ、すべてのアプリが3.6インチディスプレイに対応しているわけではないので、そのカメラ部分で見えなくなることも。

例えばYouTubeの広告スキップメニュー、これちょうどカメラの位置に表示されます。てことで、カバーディスプレイだと一生広告スキップできないことに。もちろんこれも対策があって、カバーディスプレイにはフルスクリーンモードデフォルトモードというのがあります。後者ならばカメラ周りを避けた四角い表示になるので、コンテンツの一部が見えない問題は回避できます(下の画像でモード比較)。

例:Slackのフルスクリーンモード(左)、デフォモード(右)
Image: Dua Rashid – Gizmodo US

デフォモードだと画面がちょっと切れちゃいます。ですが、機能が使えない vs ちょい画面が切れるなら、まぁ切れる方がまし。YouTubeアプリで使いましたが、特にストレスありませんでした。

どちらのモードがいいかはアプリ次第。アプリによってはストレスしかない場合もあるので、これは適宜使ってみて…ですね。例えばInstagramだと、フルスクリーンだと機能が(カメラ周りで隠れて)ほぼ使えない。デフォモードだと、ポスト全体を見るのにスクロールしまくらないといけない。と、まぁ、そもそもカバースクリーン向けではないアプリもあります。

ゲームもやってみました。『Scooter Xtreme』、『Retro Drift』をカバーディスプレイでプレイしましたが問題なし。『Perfect Piano』もプレイしましたが、これはさすがに開いて6.9インチ画面を使いたくなりました。以上のゲームはすべてプリインストールされていて、比較的プレイしやすいやつ。

昨年モデルでは、カバーディスプレイの動きをメインディスプレイが把握していないというのが不満でした。例えばThe VergeのJohnson記者は、カバーでセットしたタイマーが、メインディスプレイでは確認できないという話を挙げていましたが、これ、改善されています。今年のRazrは、タイマーやYouTube、ゲームなど多くのアプリでカバーとメインディスプレイでの連携が可能に。

前述の『Perfect Piano』も、3.6インチカバーディスプレイ、リフレッシュレート90Hzでプレイを止めたところから、6.9インチ&120Hzのメインディスプレイで続きをプレイできました。リフレッシュレートの差は特に感じませんでした。YouTubeの動画、メインディスプレイ(2640×1080 FHD+、3,000ニト)で超キレイ。

ヒンジがアップデート

昨年モデルはヒンジが硬いって文句言った記憶あり。フリップとかパカパカなんて感覚ではなく、ヨイショっと開けないとダメでしたね。また、開閉時のヒンジの音もうるさくて、好きじゃありませんでした。これはどちらも今年改善されています。

端末触ってすぐに気づくのが、ヒンジの心地良さ。完璧といっていいかと。硬すぎることも緩すぎることもないいいバランス。バチーンと閉じちゃうこともなく、ちょうどいいという言葉がぴったりの力具合です。閉じるときのクリック音も良し。ただ、このヒンジの完璧、快適さが使うにつれてどう変わるか、今後劣化していくのかはわかりません。あくまでも、新品の今は完璧というお話。

Image: Dua Rashid – Gizmodo US

画面のヨレもかなり改善されています。6.9インチのメインディスプレイでは、ヨレはほぼ見えず気になりません。特定のアングルで光が画面に当たれば、真ん中に画面のシワあるなぁくらい。折りたたみスマホだということを忘れてしまう、そこまでいっていいレベルで気になりません。

画面はCorning Gorilla Glassコーティング。背面はヴィーガンレザー。そしてサイドは強化アルミニウム。重さ188g。グレー、オレンジ、ベージュの3色展開ですが、今回レビューしたのはベージュの「ビーチサンド」。色が美しい。

防水・防塵は、昨年のIP52からIPX8に。耐水性はアップしたものの、防塵性能は劣化。折りたたみスマホにおいて防塵は必須と思いますが、大丈夫なのかな? これもヒンジと同じで、少なくとも数カ月使ってみないとわかりません。

チップはMediaTek

今年のRazrは、モデルによってチップがかなり違います。高位モデルのRazr 50 UltraがSnapdragon 8s Gen 3チップ搭載なのに対し、基本モデルのRazr 50に載っているのはMediaTek Dimensity 7300X

ちなみに去年の高位機種は、Snapdragon 8+ Gen 1搭載。Razr 50 Ultraはまだレビューしてませんが、MediaTekチップなら高位機種と比較しても申し分ないのではないでしょうか。

少なくとも、1週間のレビュー期間で性能に不満を感じたシーンはありませんでした。G-mail、Slack、Chromeでのウェブ観覧とマルチタスク作業しても、ゲームとYouTubeを交互に見ていても、あれ?って思うことはなし。端末が熱くなることも、アプリ切り替えで表示がもたつくこともなし。Geekbench 6のスコアは、シングルコアで1,051、マルチコアで2,997。これ、価格100ドル増のOnePlus 12とほぼ同レベルなんです。

搭載されているOSはAndroid 14。Motorolaユーザーなら、搭載OSが旧バージョンだったりすることがありがちなのはよく知っていると思うので、今回はうれしいですね(去年のRazr+はいまだにAndroid 13)。

Motorolaの保証はAndroidアプデ3回、セキュリティ4年。保証がもっと長い企業(Samsung)はあるものの、まぁ昨今の常識の範囲内。

カバーディスプレイへのアプリ追加

昨年の主にウィジェット用という印象のディスプレイとは違い、今年のカバーディスプレイはしっかり使えます。右上のペンアイコンから、カバースクリーンにアプリを追加可能。

また、一部アプリ(Googleストック、ストップウォッチ、Spotifyなど)はウィジェットとして、カバーディスプレイの別ページに追加可能。画面下スワイプでクイック設定可。

Image: Dua Rashid – Gizmodo US

カスタマイズ機能も多彩で、テーマやフォント、色味などを好きに設定できます。しかも簡単。ロック画面もホーム画面も、数秒で自分好みにめちゃかわいくできました。

スクリーン裏=背面をタップすると、設定したアプリが起動するという新機能もなかなかいいです。あとは電源ボタンに設定できる機能(通知、クイック設定表示、スワイプでカメラやマップのズームなど)もあって、全方位的にカスタマイズが非常に豊富です。

操作ミスを防ぐべく、感度も調整できます。電源ボタンって物理的に押しやすい&触りやすいので、機能設定しておくと重宝するだろうなと思ったのですが、残念ながらそんなに使いませんでした。

個人的にはズームにスムーズさがない、意図しない操作ミスなど、かえって邪魔だと感じるとこもあったのですが、電源ボタンのカスタマイズをどう思うかは好み分かれそう。ちなみに電源ボタンホールドで、Gemini AIを発動できます。

Image: Dua Rashid – Gizmodo US

カメラは相変わらず暗所激弱…

今年もカメラが…しょぼ。メインは50MP、セカンドカメラが超広角の13MP。フロントは32MP。すべて動画撮影4K UHD(30fps)またはフルHD(60fps)に対応。

スペックよりも実際に撮った写真を見るのが早いですね。暗所での撮影はハッキリと「悪い」といえるほどです。ズームするとノイズが多く、ディティールも失われています。レンズの弱さを補うために、過剰にシャープな補正がかかってしまい、仕上がりがさらに悪くなってしまっているような…。

同じ木を昼と夜で撮影してみた
Image: Dua Rashid – Gizmodo US
同じ通りを昼と夜で撮影してみた
Image: Dua Rashid – Gizmodo US

カメラに関して、去年より唯一良くなったのは物理的な部分。カメラの出っ張りが少し大きくなり、明確にレンズを手で確認できるので、不要に触ることがなくなりました。カバースクリーンを使うときにこれは助かります。でも、それだけ。

Image: Dua Rashid – Gizmodo US

バッテリー&スピーカー

搭載されているバッテリーは4,200mAh。ヘビー使いしても1日半はいけそう。あんまり使わないって人なら2日間いけそう。レビュー中は、仕事、エンタメ、ゲームと結構使って(明るさ50%、省エネモードなし)、16時間後に帰宅したときもまだ40%残っていました。1日だけフル充電で家を出て、11時間でバッテリー切れした日がありましたが、それでも不満はなし。

30Wの充電アダプタがありますが、これは別売。また、ワイヤレス充電は15Wに対応。

Dolby Atmos対応のペアステレオスピーカーで空間サウンドも実現。ボリュームも十分。7割から8割の音量で、ワンルームの部屋なら十分音で満たされます。スマホスピーカーあるあるですが、ベースはそこまで響きません。

総評:価格に見合った端末

700ドルという価格を考えれば、価格に見合った適切な端末だと思います。ただし、しょぼいカメラと防塵性能なしは大きなマイナス。せっかくベーシックモデルもカバーディスプレイが大きくなって、ギミックから抜け出してリアルに使えるハードになったのに…。UI、どんなアプリでも使える適応力、そしてデフォモードという救済策も含め、カバーディスプレイに関しては大正解な端末です。

デザインでも、画面ヨレの改善とヒンジの改良が大正解。ただし折りたたみには必須と思える防塵機能を外してしまったのが解せません。不安です。パフォーマンスでは、MediaTekのチップの効率の良さでマルチタスク(アプリ)も問題なし。バッテリー持ちも良し。

つまり、ベタ褒めできないのはカメラと防塵性能なしのせい。折りたたみという仕様のために、カメラをどこまで諦められるか…。逆に言えば、スマホでカメラを重視する人には、折りたたみ云々以前に絶対向かない端末なのです。

◾️いいところ:画面のシワがほぼ気にならないレベルまできた改良ヒンジ。CPUでマルチタスク性能UP。カバーディスプレイが本当の意味で使えるようになった。

◾️残念なところ:防塵性能が低い。相変わらず暗所に弱いビミョーなカメラ

Source: Motorola