土星の衛星エンケラドゥス、氷の噴出メカニズムに新発見

土星の衛星「エンケラドゥス」。表面が氷で覆われたこのエンケラドゥスは、太陽系内で最も生命が宿る可能性のある天体としても知られています。

この衛星には、「タイガーストライプ(Tiger Stripes)」とよばれるひび割れた地形があり、この割れ目からジェットのように水や氷が宇宙に向かって噴出されるという現象が起こります。

カリフォルニア工科大学の研究チームはこの地質活動の発生について新たな発見をしたと発表しました。この研究はNature Geoscienceに掲載されています。

タイガーストライプの研究

研究チームは、このタイガーストライプに焦点を当てました。このひび割れた地形は南極付近に存在する長い亀裂であり、その成り立ちははるか古代に巨大な物体が衝突したことで起きたといわれていました。

その後ほかの研究者が、エンケラドゥス特有の不規則な軌道が発生の原因であると結論付けました。エンケラドゥスは弧を描きながら土星から遠く離れ、その後また戻ってきます。これを繰り返すなかで土星の引力によって生じる潮汐力によって熱が発生し、星が変形するのだそうです。

エンケラドゥスの構造と横ずれ運動

研究チームは、コンピューターモデルでタイガーストライプの断層の動きについての特徴をシミュレートすることで噴出がどのように発生するかについて研究したのです。

Image: James Tuttle Keane

研究者はタイガーストライプの断層や構造と噴出の関係について以下のように述べています。

私たちは、横ずれ運動がタイガーストライプの幾何学的な凹凸に沿って、プルアパート構造のようなせん断を拡張していくと考えています。これによってジェット活動を調節していると仮説を立てています。

タイガーストライプ上の横ずれの動きが噴出の発生に寄与しているといえるわけですね。

噴出したプルームから発見される有機化合物

さて、エンケラドゥスは氷に覆われたその内部に海が存在していると科学者は考えています。これによってより興味深い天体として捉えられています。科学者たちは、エンケラドゥスの亀裂から噴出した氷の物質でできたプルームによってその海を垣間見れるというわけです。

昨年、この噴出した物質のなかから生命の構成要素であるリン酸が含まれていることがわかりました。さらに、数カ月前にはカッシーニ探査機からのデータにより、有機化合物であるシアン化水素が噴出した物質のなかに存在していたこともわかっています。

横ずれ運動によって引き起こされる

エンケラドゥスの南極のプルームは、約33時間の公転の間に2つ生成されるそうです。ある理論では、タイガーストライプの断層が閉じたり開いたりすることで、さまざまな量の物質がエンケラドゥスから飛び出していくというものでした。

しかし、今回の発表によれば、そのメカニズムは科学者がエンケラドゥスの潮汐力によって生まれると予想するよりも多くのエネルギーを必要とするといい、今回の研究のモデルでは別の理論を提示しました。

プルームの頑丈さは、断層が互いにせん断する横ずれ運動によって強度が変化する可能性があり、断層に隙間を作ることで噴出が発生して物質が飛び出すということです。

今後の展開としてレーダーによる観測を進めたい

研究の筆頭著者であるカリフォルニア工科大学の大学院生であるAlexander Berne氏は、以下のように述べています。

軌道上の衛星からレーダーでの観測によって、地球上の地震などの断層すべりを画像化できるようになりました。

これらの手法をエンケラドゥスに適用することで、内部の海洋から地表への物質の移動、氷の地殻の暑さ、エンケラドゥスでの生命の形成と進化を可能にする長期的な条件などをより深く理解できるようになるはずです。

先述のように、エンケラドゥスは太陽系で生命が宿る可能性のある最も有力な天体と考えられています。エンケラドゥスについての研究が進むにつれて、私たちはその生命がどのようなものであり、どのようにして生命を発見できるかについて理解が近づいていくことでしょう。