“世界のクロサワ”の『天国と地獄』をApple TV+がリメイク

“世界のクロサワ”こと黒澤明監督による1964年公開のサスペンス映画天国と地獄』がアメリカでリメイクされることがわかりました。

Varietyによると、本作はApple TV+と映画配給会社のA24による共同製作で、『ドゥ・ザ・ライト・シング』や『マルコムX』などで知られる巨匠スパイク・リーが監督を努め、デンゼル・ワシントンが主演となる予定です。

制作は2024年の3月から始まるとのことで、アメリカでは2024年内には公開予定。日本公開時期などは当然未定ですが、劇場公開後にほどなくApple TV+にて配信が開始されることでしょう。

オリジナル版『天国と地獄』とは

黒澤明監督によるオリジナル版『天国と地獄』は、エド・マクベインの小説『キングの身代金』を原作とした誘拐犯との対決を描いた犯罪サスペンス映画です。

ストーリーは、三船敏郎演じる実業家の権藤がある日「息子を誘拐した」という電話を受け取るところから始まります。しかし、実際には誘拐されたのは部下の子どもでした。権藤は社内政治の工作などの事情もあり身代金の支払いを拒否しようとしますが、最終的には応じることに。

その後、身代金の受け渡し事件の真相犯人の追跡、そして犯人がなぜ権藤の息子を誘拐しようとしたのか、といった謎が明かされていく、というものです。

『天国と地獄』で最も有名なのは、身代金の受け渡しのシーンかもしれません。「特急車両のの窓からお金の入ったカバンを投げ落とす」という強烈なシーンは現在でも語り継がれる有名なものです。

筋として誘拐サスペンス映画ではあるのですが、細部まで丁寧に描かれ緻密なストーリーとなっているこの作品は黒澤明監督の現代劇の中でも上質な心理劇といえるでしょう。

スパイク・リー監督によるリメイクへの期待

Image: Tinseltown / Shutterstock.com

スパイク・リーといえば、アフリカ系アメリカ人が直面する偏見や差別をリアルかつ刺激的に描き、ジャーナリズム性と作中におけるドラマのエンターテインメント性を見事に捉える映画監督です。

今回主演するデンゼル・ワシントンとも幾度もタッグを組んでいて、黒人解放運動家のマルコムXを描いた『マルコムX』はスパイク・リー作品でも重要な作品のひとつといえるでしょう。また、2006年にはこのタッグで強盗サスペンス映画インサイド・マン』も公開されました。

こうしたスパイク・リーの特徴から、今回の『天国と地獄』を現代アメリカに置き換えたときにどんなものになっていくのかどういったポイントを捉えてこの心理劇を組み立てていくのかといった点が楽しみです。

また、裕福でありながら問題を抱える実業家というキャラクターを名優デンゼル・ワシントンがどのように演じるのかも気になるところです。

Slash Filmでは、スパイク・リーがかつて韓国映画の『オールド・ボーイ』(元を辿れば日本のマンガですが)をリメイクしたことにも触れつつ、単なるリメイクではなく時代や場所を変更して、創造性や新たな味付けによって別の作品に仕上がった点を指摘しています。

オリジナルがどのようになるか、そしてスパイク・リーがどんな作品に作り上げるのかが非常に気になる作品です。

source: Variety, Slash Film