深宇宙の謎。1988年から22分おきに点滅を繰り返す星

謎が解けると、あらたな謎が増える。

地球からおよそ1万5000光年離れた宇宙に、強い磁気を帯びた中性子星が浮かんでいます。この星は22分ごとに宇宙空間に電波を放っていることがわかり、その周期があまりにも長いことで天文学者を驚かせています。

強烈な磁場を持つ中性子星はマグネターと呼ばれます。22分周期で電波を発する、というと地球の感覚では「結構、こまめに点滅するのね」という感じですが、通常マグネターの周期は数秒から数分なので、これはかなり長周期だといえます。先日、科学雑誌ネイチャーにこの天体に関する研究成果が掲載されました。

カーティン大学国際電波天文学研究センター(ICRAR)の天文学者で、この研究の筆頭著者であるナターシャ・ハーリー・ウォーカー氏はICRARのリリースで以下のように述べています。

この驚くべき天体は、宇宙で最もエキゾチックで極端な天体である中性子星とマグネターに対する我々の理解に挑戦するものである。

マグネターは宇宙全域で発生する高速電波バースト(FRB)の大きな要因で、私たちの銀河系で起きたものを含め、多くの天文学者が目撃しています。しかし、

長周期の電波バースト(またの名を超長周期バースト)はあまり見られません。

30年以上、超長周期バーストを続ける特異な天体

超長周期バーストを起こすマグネター、GPM J1839-10を最初に発見したのは、西オーストラリアの人里離れた場所にある電波望遠鏡「Murchison Widefield Array(マーチソン広視野アレイ)」。

今回、研究チームが電波のアーカイブを探ったところ、マグネターのバーストは最長5分間続き、少なくとも1988年以来30年以上繰り返されていることがわかりました。

研究チームがはじめてこの長周期マグネターを発見したのは2022年1月のことでした。しかし、その天体が特別なのか、他にも同じような天体があるのか、その時点ではわかりませんでした。

そこで2022年7月から9月にかけて、マーチソン広視野アレイを使って電波バーストを観測したところ、最初に見つけたマグネターより最大で5倍長く続く(可能性のある)電波バーストを起こすGPM J1839-10を発見したのです。

これまでの宇宙理論では説明できない

研究チームは、この星の周期について「孤立した中性子星からの双極子電波放射を予測する古典的な理論モデルの限界にある」と記しています。

不可解なことに、このマグネターはこれまでの理論では、このようなエネルギッシュなバーストを放出することはできないはず。「我々が発見した天体は、電波を出すには回転が遅すぎる。死線を下回っているのだ」とハーリー・ウォーカー氏は言います。

これがマグネターだとすると、この天体が電波を出すことはありえないはず。しかし、実際に我々はそれを目にしている。

マグネターのデータがもっと集まれば、GPM J1839-10がどれだけ特別な天体なのかハッキリするでしょう。2022年12月に建設が始まった世界最大の電波望遠鏡、Square Kilometer Arrayが完成すればその謎の解明に一歩近づくかもしれませんね。

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