メタがTwitter対抗の新SNS「 Threads 」をリリース。基本的なスペック、広告の有無などを紹介

DIGIDAY

メタ(Meta)は7月第2週、Twitterに対抗する新SNS「Threads(スレッズ)」のサービス提供を開始した。Twitterをめぐっては、CEOのイーロン・マスク氏が先日発表したツイート閲覧制限が混乱を招き、広告主のリーチ拡大を阻むとして批判が起きている。そうしたなかThreadsが登場し、ユーザーとマーケターの双方にとって避難所的存在となるプラットフォームの候補として浮上した。

以下、Threadsの概要と、ソーシャルメディア業界などへの影響の見通しについて紹介する。

Threadsとは何か?

Threadsは、リアルタイムでテキストメッセージを共有できるシンプルな会話アプリで、 機能面でよく似たTwitterとしばしば比較される。「いいね」「返信」「写真・動画などの投稿共有」「直接メッセージ送信」を通じてユーザー同士が繋がれる点では同じだが、ひとつ大きな違いは、Threadsがメタ傘下のエコシステム内で運営されている点だ。

そのため、インスタグラムと共通のユーザー名を使ってアカウント情報を引き継げる機能を備え、20億人にのぼるインスタグラムユーザーがTwitterからThreadsに乗り換えやすい仕組みになっている。

メディアエージェンシーであるハッチグループ(Hatch Group)のソーシャル部門を率いるジャック・ムーア氏は、メタの戦略を賢明な判断と評価し、その理由を次のように説明する。「仮にThreadsが、Twitterのモデルとはまったく異なるモデルを採用したSNSだったとしたらどうか。おそらくユーザーやクリエイター、ブランド広告主に訴求しようとしても説得力に乏しく、普及は難しいだろう。しかしメタは、たとえTwitterと多くの点で似通っていると言われようとも、なじみやすく使い勝手がよい機能で、利用者にシームレスな体験を提供できるプラットフォームを構築した」。

Threadsの基本的なスペック

Threadsのホーム画面のフィードには、最大500文字のテキストが投稿できる(注:文字数は1バイト言語の場合)。

インスタグラムのキャプションに書き込める上限の文字数(2200文字)よりかなり少ないが、Twitter初期の1投稿につき140文字まで(2017年に280文字までに拡大)という制限があったころよりも随分とマシだ。Threadsではテキストに加えて、リンクを貼ったり、写真や動画(5分まで)を投稿したりできるほか、「いいね」「返信」「再投稿」の機能により、ユーザー同士の交流が楽しめる。

対Twitter

Threadsは当初、7月6日に予定されていたリリースが1日前倒しされ、5日からAppleの「App Store」およびGoogleの「Play Store」でダウンロード可能になった。2023年もっとも注目のアプリであり、サービス開始前から人々の期待感が高まっていた。

この期待感の背景にあるのは、果たしてメタが自社の土俵でTwitterに対抗できるかという好奇心だろう。もしThreadsが広く受け入れられれば、Twitterはもう使わなくていいと判断するSNSユーザーが増える可能性もある。また、Twitterの運営方針や2024年米大統領選関連の投稿に対するユーザーの不満が噴出していたところへ、このタイミングでThreadが登場するとなると、Twitterは不利な状況に追い込まれそうだ。

Threadsが誕生するまで

Threads導入への布石は、Facebook(メタの旧社名)が2019年10月、親しい友達と繋がりたいインスタグラムユーザー向けに、「Threads from Instagram」というアプリを発表したときにさかのぼる。

当時リリースされた初期バージョンのThreadsはTwitterのライバルというより、写真共有に重点をおいたモバイルメッセンジャーサービスであるSnapchat(スナップチャット)の代替となるアプリ、という位置づけだった。しかしこの初期バージョンは注目を集めるに至らず、結局はインスタグラムに統合され、「親しい友達(Close Friends)」機能として知られるようになった。

インスタグラムの一機能だったThreadsはその後プログラム改修を経て、Twitterに対抗しうるテキストベースのアプリに短期間で進化した。エンジニアは何もないところからアプリを開発する必要がなく、今年5月にはThreadsをメタの独立したSNSとして、世に送り出せる準備が整った。

マーケターへの影響は?

いまのところ、Threadsの収益化や広告事業に関する発表はないが、メタが運営するSNSだけに、そのうちThreads上でも広告が表示されるようになるのではないだろうか。

「可能性は大いにある」と、コンサルタント会社のスパロー・アドバイザーズ(Sparrow Advisers)の創業者、アナ・ミリセビッチ氏は言う。「すでにメタ/インスタグラムとの広告取引があるブランド各社にとっては、Threadsプラットフォームへの予算配分は容易だろう」。

また、「手続きに必要な書類はすぐにそろえられるうえ、決済ルートも確立されている。ブランド各社には今週あたり、メタ/インスタグラムから、これまでTwitterに投入していた広告予算を、第3四半期に向けたThread広告のテストに使ってみないかという提案があるかもしれない」と同氏は推測する。

そうした新たな施策も、さして難易度が高いとは思えない。「インスタグラムが『発見(Explore)タブ』で広告に進出したときと同じように、Threadsもおそらく、メタの『アドマネージャ(Meta Ad Manager)』におけるオプションのひとつとして広告の掲載先になるだろう」と、マーケティングサービスコンサルタント会社のケプラー(Kepler)で入札可能商品担当リーダーを務めるジョナサン・ダスーザ・ラウト氏は言う。「発見タブには最初、広告が掲載されていなかった。しかし、導入後は拡大し、広告は今やインスタグラム最大の収入源になっている」。

つまりThreadsは広告なしのスタートか?

メタの作戦としてはまず、オーディエンスをある程度獲得してから広告を導入する流れになりそうだ。ダスーザ・ラウト氏によると、英ロンドンで7月第1週(Threadsのリリース前)に開かれたメタのパフォーマンスマーケティングサミット(Performance Marketing Summit)では、広告に関する具体的な話は出なかった。

情報不足のなか、広告主各社は慎重ながらも楽観的な見方で、近い将来、Threadsにも広告が導入されると考えているようだ。メディアエージェンシーであるソーシャルエレメント(The Social Element)のタマラ・リトルトンCEOによると、「同社ではすでに複数のクライアントとThreads上の実験的施策の議論を進めており、ペイド広告出稿のチャンスが来るまで、当面はオーガニック検索を通じたマーケティングを検討する」と言う。

加えて、「(Threadsへの)移行を促すひとつの方法が、インスタグラムとの直接リンクだ。それにより、プラットフォームをまたいだブランドコミュニケーションが容易になる」とリトルトン氏は言い添える。

デジタルマーケティングエージェンシーのガールパワー・マーケティング(Girl Power Marketing)のクライアントも、Threadsに登録する予定だ。同社の創業者兼ディレクターのアニー=マイ・ホッジ氏によると、その主な理由は「Threadsのアプリが慣れ親しんだフォーマットで使いやすそうだから」であり、メタが運営するアプリへの信頼感もあるだろうという。

また、「クライアント各社はすでにインスタグラムのアカウントを開設しているため、ユーザー名をThreadsに引き継いで、インスタグラム上でフォローしているアカウントをThreadsでもフォローするというメリットを享受できる。Threadsへの移行は理にかなっている」と納得する。

Threadsもユーザーデータをトラッキングするのだろうか?

端的にいえば答えは「イエス」で、そのため懸念を抱く人々もいるだろう。メタは以前から強引なトラッキング戦術を展開して規制当局と対立し、ユーザーの厳しい批判を浴びてきた。しかしThreadsは、分散型アプローチの採用により課題の一部に対処している。分散型プラットフォームでは、ユーザーデータは中央サーバーに保存されず、ネットワーク化したコンピューターに分散して保存・管理されるため、外部からのアクセスがきわめて難しく、データのプライバシーとセキュリティが保たれやすい。

それでもまだ、EU諸国の当局を納得させられるレベルではないようだ。Threadsは米国と英国でもすでにリリースされているが、アイルランドのデータ保護委員会(Data Protection Commission)は、GDPR(EU一般データ保護規則)に照らして、当面のあいだ、EU域内でのThreads利用を禁じるとしている。

[原文:Meta’s Twitter rival Threads has launched — here’s what you need to know

Krystal Scanlon(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)

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