アダルトコンテンツ企業が記録的な数の著作権訴訟を進行中、営利目的で著作権を乱用する「著作権トロール」とは?

GIGAZINE
2023年07月11日 07時00分
メモ



コンテンツの著作権侵害への対策として、例えばハリウッドなどの大手スタジオは、海賊版プラットフォームの大手サプライヤーを追跡する取り組みなどを行っています。一方で、著作権を行使して「海賊版コンテンツのアップローダーを個別に追跡して和解に持ち込むことで金銭的利益を得る」という企業も存在します。そのような企業が行う訴訟が2023年上半期だけで1660件を超え、「記録的な数の海賊版訴訟を起こした」とされた2022年をさらに57%上回るペースで訴訟が発生しています。

‘Copyright Troll’ On Route to File Record Number of Piracy Lawsuits This Year * TorrentFreak
https://torrentfreak.com/copyright-troll-on-route-to-file-record-number-piracy-lawsuits-this-year-230705/


‘Strike 3’ Filed a Record Number of Piracy Lawsuits This Year * TorrentFreak
https://torrentfreak.com/strike-3-filed-a-record-number-of-piracy-lawsuits-this-year-221227/


アダルトコンテンツを扱う「Strike 3 Holdings」は、自社コンテンツに対する海賊行為の疑いに対し、2022年に2788件の訴訟を起こしました。これは権利者が1年間に起こす訴訟の数としては記録的な多さで、2022年にアメリカで起こされた著作権侵害訴訟の大部分を占めます。

主に著作権侵害とデジタル権に関するニュースを提供するTorrentFreakによると、2017年に起こされた海賊版やファイル共有に関する訴訟は全部で1019件だった一方で、Strike 3が訴訟に本格参戦した2018年は6000件程と急増し、1年間で行われた同種の著作権侵害訴訟としては過去最高を記録しました。そのうちStrike 3が起こした訴訟は2094件で、アダルト映画を制作しているMalibu Mediaの1231件と合わせて、1年間の著作権侵害訴訟件数の半数以上を2社で占めていることが明らかになりました。

以下のグラフは2017年以降にStrike 3が起こした著作権侵害訴訟の件数をまとめたグラフ。2018年以降、Strike 3は毎年1000件近くの訴訟を行っており、2022年には3000件近くまで訴訟件数が増加し、過去最高の訴訟件数を記録しました。


2023年にはさらにStrike 3の著作権侵害訴訟件数が増加しており、上半期だけで1660件の訴訟がアメリカ国内の連邦裁判所で提起されていることが判明しています。同様のペースで訴訟が提起されていけば、2023年にStrike 3が行う著作権侵害訴訟の件数はこれまでで最大となります。以下の画像は2023年3月にStrike 3が提起した著作権侵害訴訟の一部。


Strike 3による大量の訴訟について、訴訟の結果得る金銭的利益のために著作権の権利行使を行う「著作権トロール」であるとTorrentFreakは指摘しています。著作権法は本来「著作物の創造を奨励すること」を意図して定められているにもかかわらず、著作権法の損害賠償規定の不均衡さや被告の勝利が難しい点を狙って金銭的利益を目的として著作権を乱用することで、逆に創作の意欲を減退させていることから、「トロール(荒らし)行為」だと呼ばれています。過去には他の権利所有者も同様の戦略を展開していましたが、現在も継続して関与している大手企業はStrike 3のみだそうです。

Strike 3が大量の訴訟の結果どれくらいの利益を得ているかは不明ですが、TorrentFreakは「訴訟の結果に、Strike 3は非常に満足しているに違いないと私たちは推測しています。もしそれが赤字であれば、毎年何千件もの苦情を提出することはないはずです」と述べています。

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