ペンギンが水中で素早く泳げる理由は特殊な「翼」にあるという研究結果

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ペンギンは鳥でありながら水中では非常に速いスピードで泳ぐことが可能であり、中でも南極周辺に生息するジェンツーペンギンは最高時速35kmにも達します。中国科学院やタイのモンクット王工科大学ラートクラバン校の研究チームが、ペンギンの翼を流体力学的に分析した結果から、「泳いでいる間に翼の角度を変える能力がペンギンの水泳能力にとって重要」だと報告しました。

Hydrodynamic performance of a penguin wing: Effect of feathering and flapping | Physics of Fluids | AIP Publishing
https://doi.org/10.1063/5.0147776


Penguin Propulsion: The Physics Behind the World’s Fastest Swimming Birds – AIP Publishing LLC
https://publishing.aip.org/publications/latest-content/penguin-propulsion-the-physics-behind-the-worlds-fastest-swimming-birds/

What makes the Gentoo penguin the world’s fastest swimming bird? • Earth.com
https://www.earth.com/news/what-makes-the-gentoo-penguin-the-worlds-fastest-swimming-bird/

The physics of how gentoo penguins can swim speedily underwater | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2023/07/the-physics-of-how-gentoo-penguins-can-swim-speedily-underwater/

ペンギンは陸上でこそよちよちと歩いている印象が強い生き物ですが、水中ではスピードと機動性を両立した動きで巧みに泳ぎ回ります。そんなペンギンの翼は空中を飛ぶための構造をしておらず、水中を泳ぎ回るヒレのような役割を担っています。

一般に水生生物は水中において推力を生み出すため、ボートをこぐような「ローイング」と呼ばれる動きか、羽ばたくような「フラッピング」と呼ばれる動きのいずれかを採用しています。抗力を利用するローイングはより低速な動きに適しており、揚力を利用するフラッピングはより高速な動きに適しているとのこと。

ペンギンの翼は空を飛ぶ鳥の翼よりも短くて平らな形状をしており、うろこ状の羽で覆われています。緻密に密集したうろこ状の羽のおかげで皮膚と水の間に空気をためることが可能となっており、これによって泳ぐ上での抵抗になる水中の摩擦と乱流を軽減しているそうです。


さらに研究チームは、ペンギンが泳ぐ映像と2Dモーション解析を組み合わせ、翼の周囲の複雑な力と流れをシミュレートする流体力学的モデルを構築。ペンギンの翼がどのように水中での推力を生み出すのかを調べるために分析を行いました。

流体力学的モデルには、翼の動きによる推力・揚力・横方向の力といったパラメーターや、流体の粘度や速度に関するパラメーターなどが組み込まれました。また、翼の羽ばたき速度や前進速度の比率を使用して翼の動きをモデル化し、進行方向に対する翼の角度からなる「angle of thrust(推力角)」という新しい変数も取り入れたとのこと。

分析の結果、ペンギンは水中を泳ぐ時に揚力ベースの推進メカニズムをしており、「フェザリング」と呼ばれる動きが強力な推進力を生み出す鍵になっていると結論付けました。一般にフェザリングとは、航空機がプロペラを進行方向に対して垂直に向けることによって抗力を最小化し、滑空比を向上させることをいいます。翼の角度を微調整してフェザリングを行うことで、ペンギンは水中で推力を得ていると研究チームは説明しました。

論文の共著者であり、モンクット王工科大学ラートクラバン校の研究者であるPrasert Prapamonthon氏は、「ペンギンのスタート/ブレーキ、加速/減速、旋回といった優れた遊泳能力は、自由に動かせる翼によるものです。この翼のおかげでペンギンは水中で推進力と機動力を発揮し、陸上ではバランスを保つことができます」とコメントしました。


今回の研究結果は、単にペンギンの水泳能力について物理的に解明するだけでなく、水中における効率的な推進方法を開発する上でのヒントにもなります。これにより、最先端の水上車両や水中探索ロボットなどを構築するための手がかりが得られるとのことです。

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