30分待ちも…マクドナルド「モバイルオーダー」超便利なのに利用率が低い理由


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マクドナルドのHPより

 スマホのアプリから注文すればレジカウンター前に並ばずに商品を受け取ることができるマクドナルドの「モバイルオーダー」。便利なサービスに思えるが「来店客のうちモバイルオーダー利用客の割合は2~3割ほど」(東京都内の店舗従業員)という声もあり、いまいち普及が進んでいない様子だ。受け取り時間を指定できなかったり、「店舗で商品受け取りまで30分ほど待たされた」(30代男性)という事例もあったりと、改善を希望する声も多いようだが、2020年1月の本格導入から3年が経過した今、現在の利用状況をマクドナルドはどのように評価しているのか――。同社に聞いた。

 原材料価格やエネルギーコストの上昇を受け外食チェーン各社が値上げを行うなか、マクドナルドもこの1年半で計4回の値上げを実施。今年1月の一律値上げでは、「ハンバーガー」は150円(消費税込み/一部店舗では異なる/以下同)から170円に、「チーズバーガー」は180円から200円に、「マックフライポテト(Sサイズ)」は160円から190円に、「チキンマックナゲット(5ピース)は200円から240円など約8割の品目が価格改定。そして今月には、7月19日から東京・名古屋・大阪エリアを中心とした都心部184店舗とデリバリーにおいて値上げをすると発表。「ビッグマック」は通常450円のところ、都心店では最大50円の値上げで500円、準都心店では最大20円値上げて470円に。「サムライマック」は最大60円、「ダブルチーズバーガー」「てりやきマックバーガー」「フィレオフィッシュ」などは最大40円(準都心店は10~20円)の値上げとなる。

 一方、値上げによる目立った客離れなどは起きていない模様で、マクドナルドの業績は好調。運営会社・日本マクドナルドホールディングス(HD)の2022年12月期の売上高は前年比10.9%増の3523億円、営業利益は過去最高益を記録した前年から2.1%減となったもののほぼ同水準の338億円を維持している。

モバイルオーダーの利点と難点

 そんなマクドナルドは外食業界のなかでIT活用に積極的な姿勢で知られている。12年には業界に先駆けてネットなどで注文を受け付ける宅配サービス「マックデリバリー」の全国展開を開始。20年からはモバイルオーダーを本格導入している。

 モバイルオーダーの利用は簡単だ。スマホにマクドナルドの公式アプリをダウンロードし、店舗と商品を選択後、持ち帰りか店内飲食かを選択。この際、持ち帰りの場合は店内カウンター、駐車場、ドライブスルーのいずれか、店内飲食の場合はテーブルに商品を届けてもらうかカウンター受け取りかのいずれかを選ぶ。店舗に到着したら「受け取りに進む」ボタンを押して、画面に表示された注文番号が店内のモニターに表示されたら、カウンターに進んで商品を受け取るという流れだ。支払い手段としてはPayPay、d払い、楽天ペイなど各種QR決済サービスに加えクレジットカードが可能であり、現金支払いは対応していない。

「店舗に入ってカウンターに並ばずに席に着いてからスマホで注文して、席まで商品を届けてもらうという使い方も可能だが、なぜかあまりこの使い方は浸透していない模様。使えば便利なサービスで特に利用者側に大きなデメリットが生じるわけではないので、積極的に使ってよいと感じるが、いまいち普及が進んでいない印象。しいて難点を挙げるなら、店舗に行く前に受け取り方法までをいったん入力して、店舗に着いてから『受け取りに進む』を押して注文を確定させるという操作プロセスが少しわかりにくい。その部分がよくわからない客が店員に質問している光景がたまにみられる」(外食チェーン関係者)

 そんな便利なモバイルオーダーだが、難点としてSNS上などで指摘されているのが以下の点だ。

・店舗に到着してから商品受け取りまで、長い時間を要することがある
・ドリンク類の氷抜きや「マックフライポテト」の塩抜きなど、カウンター注文では可能なカスタマイズの一部がオーダーできない
・受け取り時間指定ができない
・楽天ポイント、dポイントが付与されない(「d払い」の支払いでdポイント、「楽天ペイ」の支払いで楽天ポイントが付与)

「未来型店舗体験」を推進

 そこで、マクドナルドに話を聞いた。

――現在、モバイルオーダーを利用する客の割合はどれくらいなのか。

「全国、全時間帯で見ると2022年の実績では、フロントカウンターでのご注文の約16%がモバイルオーダーでのご注文です。店舗や時間帯によってはもっと高い場合もございます。モバイルオーダーは2019年から一部の地域で導入が始まり、2020年1月に全国導入が完了して以来、ご指定のお席や駐車スペースにスタッフが商品をお届けするサービスや、ドライブスルーでの受け取りなどお客様の利便性向上のために機能を追加・強化してまいりました。コロナ禍での接触を避けたいというニーズの高まりもあり、ご利用は着実に伸びております」

――モバイルオーダーの導入から3年が経過したが、当初貴社が想定・期待していた効果と現状をどのように評価しているのか。

「マクドナルドではお客様の店舗体験を向上させることを目指して、2019年からピープルとデジタルを融合させた『未来型店舗体験』を推進してまいりました。お客様のライフスタイルが多様化する中で、『クルーのホスピタリティ』というピープルの部分とともに、デジタルも活用してお客様のニーズにお応えすることが狙いでした。モバイルオーダーはその中の一つの取組みです。

 お客様にマクドナルドをもっと身近に感じていただき、より快適にご利用いただきたいという想いから、お客様からのご意見を基に、これまで様々な改良を続け進化させてまいりました。その一環で当初は別のアプリとして導入したモバイルオーダーやデリバリー、KODOというアンケートアプリを公式アプリに統合いたしました。おかげさまで、マクドナルド公式アプリは、2022年12月末でアクティブユーザーが2500万人と、多くのお客様にご利用いただいております。モバイルオーダーにつきましては、注文の際にゆっくりと時間をかけてお好きな商品を選べる、店舗で注⽂の列に並ばずに商品を受け取れる、席まで届けてくれて助かる、など、ポジティブなお声もたくさんいただいております(KODO:お客様アンケートより)。一方でまだまだ改善できる点もございますので、お客様により使っていただけるアプリを目指してまいります」

――店舗に到着後に「受け取りに進む」のボタンを押してから商品受け取りまで30分ほど待たされたという証言も聞かれる。

「一部の店舗・時間帯で商品のご提供に時間がかかってしまいご迷惑をお掛けしてしまいましたことは認識しており、大変申し訳なく思っております。そのような店舗では、週末のランチタイムにはクルーを多く配置してご提供を早める工夫や、厨房の製造能力を高める機器を導入するなど、対応を行っております」 

――カウンターでの注文だと可能だがモバイルオーダーでは注文できないカスタマイズはあるのか。

「ご健康上やお好みの理由からピクルスやオニオン、ソースなどを抜かれたいお客様向けに、これらの具材を抜くカスタマイズサービスをモバイルオーダーでも実施しております。商品や食材の数が多岐に渡りますので、モバイルオーダーではレジで特にご注文が多いカスタマイズをご利用いただけるようにしております」

――受け取り時間指定の実施の予定はあるのか。

「現時点ではそのような予定はございません」

(文=Business Journal編集部)

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