日焼け防止対策の UPF アパレルはブランドにとって新たなチャンス

DIGIDAY

グランド・ビュー・リサーチ(Grand View Research Inc.)によると、紫外線防護指数(UPF)産業は2030年までに12.7億7000万ドル(約1839億円)規模になると予測されている。現在販売されているUPFブランドのほとんどは、年配の消費者やアウトドア愛好家、子供をターゲットにしており、スイムウェアやラッシュガードにかなりの重点を置いている。現在、ブランドはUPFの機会を狙って、ライフスタイルアパレルをローンチしている。

UPF衣料は、気温が高く、美の基準として色白の肌を重視しているため年間を通して日焼け対策が必須となっているアジアでの人気が高い。

若者をターゲットにしたおしゃれなUPF衣料ブランド

UPFブランドのクローデント(Claudent)は、ファッション性をより重視したUPFプロテクションのアスレジャーアイテムを求めるZ世代とミレニアル世代の消費者に対応するため、2023年6月にローンチした。かつてヴィンテージデニムブランドのリ・ダン(Re/Done)と美容ブランドのヴァースド(Versed)にいたミア・ジー氏と、同じくリ・ダンやアスレジャー企業のセットアクティブ(Set Active)、ライフスタイルブランドのサイモンミラー(Simon Miller)に在籍していたエマ・ガーバー氏が創業した。

コレクションの最初の7点のモジュラーアイテムはさまざまな色合いが揃い、価格は65ドル(約9400円)からとなっている。コレクションに使用されている各生地のUPF値は、米国繊維化学技術・染色技術協会(American Association of Textile Chemists and Colorists)のTM183のUV有効性テストに対して第三者機関によって独自に検証されている。TM183基準によると、衣服はUPF50+という最高の保護基準を満たさなければならない。

クローデントのCEOであるジー氏は、2019年の休暇後に日光アレルギーと診断された。「日傘をさしてSPF50を塗っていたにもかかわらず、休暇2日目に狂ったように発疹が出て、帰宅後すぐに皮膚科に行った」とジー氏。「多形日光疹、つまり日光アレルギーと言われた」。

UPF50+はUPFスケールの最高ランクである。この数値は太陽のUVAとUVBの少なくとも98%が肌に届かないことを意味し、生地がバリアとして機能する。平均的な白い綿のTシャツは、乾いた状態ではUPF5〜7、濡れた状態ではUPF3程度である。これではUVA/UVB光線の3本に1本程度の光線が皮膚を透過し、日焼けのダメージに対して比較的無防備な状態となる。

「もっとも重要だったのは生地だ。ラッシュガードのような感触にはなるべくしたくなかった」と、クローデントの共同創業者でクリエイティブディレクターのガーバー氏は言う。「ハイキングに行ったり、ピックルボールやテニスをしたりするときに着られるような、それでいてジーンズに合わせてランチにも着ていけるほど洗練された服を作りたい」。このブランドのスタイルには、自社サイトで400ドル(約5万8000円)で販売されているリブ編みのポロシャツなどがある。

日光アレルギー対策として注目されるUPFの服

TikTokでは、#sunrash(日光疹)というハッシュタグが110万ビューを記録している。日光疹はもっとも一般的な日光アレルギーのひとつだが、発赤や鱗屑といったほかの症状もよくみられる。米国国立衛生研究所によると、多形日光疹は一般的に日光アレルギーとして知られており、米国の人口のおよそ10〜20%が罹患しているという。患者は主に20代から30代の女性だ。皮膚がんは、米国でもっとも多く診断されるがんで、今年だけでも540万人以上の米国人が何らかの皮膚がんと診断され、10万人以上がはるかに深刻なメラノーマと診断されている。

「UPFの服は有害な紫外線から肌を守るために特別に作られ、テストされており、日焼けを防ぎながらアウトドアを楽しむためのすばらしい方法だ」と述べたのは、メラノーマリサーチアライアンス(Melanoma Research Alliance)のプレジデント、ステファニー・カウフマン氏だ。「UPF生地やその他の日焼け防止デザインをファッションラインに取り入れることで、消費者は自分のスタイルや日焼けに対する安全性に自信を持てるようになる」。

「日常生活で日焼け防止の服を着てもらうのは、それが以前市場に存在したバージョンと代わり映えしないのであれば難しい」とCEOで共同創業者のジー氏は述べた。「UPFの市場調査をしていたとき、鮮やかな色やプリントならたくさん存在しているのがわかった。私たちはもっとクラシックなものを作りたかった」。

ファッションブランドが予防医学の提供者となる

ユニクロ(Uniqlo)は2019年にUVシリーズをローンチしており、毎夏、男性、女性、子供向けにUPF40+のアイテムを4~6点提供している。ルルレモン(Lululemon)やアンド・アザー・ストーリーズ(& Other Stories)のようなブランドには小規模なUPFシリーズがあるが、ほとんどのUPFアイテムはいまだに高い年齢層向けに偏っている。気候変動によって気温と紫外線が強くなるにつれ、UPF衣料はブランドにとって新たなチャンスとなっている。

「UPFの開発は、ファッションブランドが予防医学の提供者であるというトレンドを活用できることを意味していると考えている」と、戦略的展望企業ザ・フューチャー・ラボラトリー(The Future Laboratory)のトップ美容アナリスト、オリビア・ホートン氏は語った。同氏は6月27日に発表された新しいウェルネスレポートの中で、UPFアパレルカテゴリーが出現し始めていることを指摘している。「セルフケアは単なる流行語ではない。予防医学の再定義なのだ。私たちは消費者が自分の体をコントロールすることを主張し、従来のヘルスケアシステムを敬遠するのを目の当たりにしている」。

現在、クローデントは若者市場をターゲットに、TikTokとインスタグラムでの教育的マーケティングに注力している。「(UPFの服は)ウェアラブルな美容製品でもあるので、UVの分野にはストーリーテリングと教育の機会がある」とガーバー氏は言う。「スキンケアやファッションの愛好家だけでなく、テニスやゴルフのようなニッチな分野を通じて、当社がリーチできる多くの異なる層が存在している」。

[原文:The opportunity for brands in UPF apparel]

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

Source