文字の自由度高めな字典『五體字類』は読むと元気が出る

デイリーポータルZ

大ベストセラー漢字字典『五體字類』は、文字が枠線を飛び出し、たむろし、文字の中に文字が入り、めちゃくちゃ自由です。

文字たちのあまりの勢いに、ながめるだけで元気がでます。最近自分で購入し、家でじっくり鑑賞しています。

ページを開いたときの衝撃

大学の授業で、江戸時代の文章を読む課題が出たときのこと。

大胆にくずして書かれた文字が読めず困っていたところ、先輩から「この本で調べてみなよ」と渡されたのが、

この『五體字類』(西東書房、写真の本は第3版、1984年)でした。
「調べるぞー」と開いてみると、

 

えっ  (p.102)

 

えええっ! (p.459)

 

​​​​​・・・!?

思わず本を閉じてしまいました。

早く閉じないと、文字が本から飛び出してしまいそうだったからです。

かなり頼れる字典

あまりの文字の自由度に度肝を抜かれたこの『五體字類』、漢字のさまざまな字体を収録した字典であります。

漢字の下に、引用した古典を表す文字がそえられている(p.148)

『五體字類』の初版はなんと大正5(1916)年。100年もの間売れ続けている超ロングセラーです。

発売された当時は、毛筆で書かれた文字がほとんど。昔の人でも、くずして書かれた字は読むのに困ることも多かったそうです。そういった日常生活の場面で使う​こと​を想定して作られた『五體字類』はめっちゃくちゃ売れたのだとか。

今でも大学研究の調べ物に使います。かなり頼れる存在です。

枠線にとらわれないダイナミズム

『五體字類』は内容が充実していて便利なのはもちろんですが、やはり大きな魅力は

どーーーん!  (p.281)

枠線をゆうゆうとはみ出す文字の力です。

最後の筆遣いでシュッと2行つらぬく! (p.292)

 

タテもニョーンと大きく使う! (p.411)

ちまちま線に合わせることなく、バン!とレイアウトされていてカッコいいです。

 

こんな理由でページをめくることもしばしば。

1つの芸術作品として愛でています。

それでは、私のお気に入りページ3つをご紹介したいと思います。

いったん広告です

マイお気に入りページ第3位:とんでく「飛」

まずみなさんにお見せしたいのはこちら、

「飛」のページです! (p.578)

これは一つの絵画として見ていただきたいです。

一番上の大きな「飛」の上昇感はさることながら、その下にくずした書体の「飛」がバラバラと続きます。まるで「飛」ロケットが発射され、煙が噴き出しているよう・・・。

漢字の意味と形とレイアウトが織りなすハーモニーが最高の1ページです・・・!

第​2​位:わらわら集まる石へんの漢字群

こちら、「破」「砧」などの石へんの漢字のページなのですが、(p.361)
漢字が枠線を無視してたむろしております(p.361)

どデカい文字も良いのですが、小さめの字がぎゅぎゅっと集まってるのもまた良い・・・。

普段は線に沿って整列してるけど、今日は無礼講・・・という歩行者天国的な自由さも感じ取れます。

第1位:遊び心の「酒」

私的第1位は「酒」のページです。
 

よくみてください (p.533)
でかい「酒」のわっかの中に、小さい「酒」が・・・! (p.533)

これぞ「酒マトリョーシカ」です。

さらに、左のさんずいの間にも、小ぶりな「酒」が入っております。

デカい文字の中に別の文字を収納!スペース生かしまくりの遊び心のあるレイアウトに心いぬかれました。私的第1位です。おめでとうございます。

四角四面な文字に飽きたら

日々、パソコンや活字で四角四面な文字ばかり見ていると肩がこります。

そんな時にはぜひ『五體字類』をひらいて文字がワイワイうごめく様子に元気をもらってください。

元気を出したいときにどうぞ

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