「転換期を迎えるサードワークプレース~メタバース・ワーケーションの台頭~」と題したレポートを、一般社団法人日本テレワーク協会が6月8日に公表した。同レポートでは、1)企業はワーケーションやメタバースを含め選択肢が拡大していることを踏まえ、自社従業員のワークプレース選定ガイドラインを整備すべきである、2)企業は従業員の健康管理方法に注意しなければいけない――という2つを提言している。
“サードワークプレース”とは、勤務先オフィス、自宅などに続く3つ目の働く場所のこと。日本テレワーク協会の「サードワークプレース研究部会」は、「企業の生産性を上げ、同時に個人のQOLを向上させる」ことを目標に2017年度に活動を開始。2022年度は計7回のウェブ会議で研究会を開催し、レポートをとりまとめた。
1つ目の提言については、「サードワークプレースは自社オフィスのような管理が及ばないことから、そこでの執務には一定のリスクが発生する」としながらも、「サードワークプレース利用を許容しない働き方は現実的でなくなっている」とし、これらを両立させるためのガイドラインの作成を提言している。
ガイドラインを作成するにあたって、会社全体で方針を決め、チームや従業員にそれぞれ適切な許容範囲を設定することが必要だとしている。さらに、各組織の現状を踏まえて継続的な改善が必要だという。
また、働く場所として、オフィスや自宅だけではなく、「ワーケーション」「メタバース」「タッチダウンオフィス」など選択肢が広がっている。特にタッチダウンオフィスの普及もあり、サードワークプレースは容認する必要があるとしている。ワークプレースの利用料金や交通費、移動中の事故はどのように扱うかといったことも検討すべきことだとしている。
このサードワークプレースの1つであるメタバースについては、2021年度の研究会で複数回にわたって話題に出たことから、2022年度は外部企業の講演とディスカッションを実施。メタバースはテレワークの発展形ではなく、企業の外にも広がるコミュニティの在り方を再定義している。
2つ目の提言に関して、勤務先が従業員を対象に行っている健康管理の1つに労働時間の把握がある。オフィス勤務の場合、タイムカードなどで出勤と退勤を記録することで労働時間が管理されている。
しかし、自宅でテレワークを行っている場合、いつでも働けるという状況になってしまう。さらに、副業も行うとなると従業員が労働時間を自己管理する必要がある。研究会では「無視できる問題ではない」という意見で一致したが、自己管理を支援するかどうかは意見が割れている。
また、研究会の第3回では、伊藤忠インタラクティブ株式会社の川島氏と土居氏による講演「メタバースでの生活者“マインド”変化による新たな企業アクションの考察 人々の関係性を拡張する『メタバースコミュニティ』で気持ちよく働こう!」が行われた。
同講演は、メタバースで働く従業員ではなく、生活者という視点で行われた。メタバース内では匿名が好まれやすいとされる一方で、アイデンティティを失いたくないと障害者が表明していることも紹介された。また、質問に答えるかたちで、アバターはマルチメタバースでは重要だとしている。企業も家族もコミュニティの1つと考えられることから、目的により匿名性や本人性が意味を持つのではないかといった回答だった。
サードワークプレース研究部会の活動は2023年度も続けており、新規メンバーの募集も行っている。「オフィス面積を減らしている企業もあり、サードワークプレースの利用はさらに進むと考えられる」としている。