スタバ、越谷イオン内「7店舗も」出店の巧妙な戦略…競合他社への客流出を防止


スタバ、越谷イオン内「7店舗も」出店の巧妙な戦略…競合他社への客流出を防止の画像1
越谷イオンレイクタウン内のスターバックス コーヒー(同タウンのHPより)

 スターバックス コーヒーが4月、イオンレイクタウン(埼玉県越谷市)内に店舗を出店。スターバックスにとっては同タウン内で7店舗目の出店となり、SNS上では「スタバに乗っ取られてる」「スタバタウンじゃん」「地方スタバ増えすぎ」などと話題を呼んでいる。主要駅の周辺に同一チェーンが複数の店舗を出店するケースはしばしばみられるが、同一商業施設内に7店舗も営業するというのは珍しいケースといえる。なぜスタバはこのような判断に至ったのか。専門家に解説してもらう。

 全国に約1800店舗を展開するスターバックスは、1996年に東京・銀座に1号店をオープンし、その後は一貫して拡大路線を取り、2015年には47都道府県への出店を達成。すでに店舗数ではドトールコーヒーショップを抜き去り、現在ではカフェチェーン業界2位で約1100店舗のドトールを大きく引き離し、圧倒的な首位の座を築いている。ちなみに店舗数ベースでみると、近年存在感が増すコメダ珈琲店が3位、タリーズコーヒーが4位、サンマルクカフェが5位となっている。

「スターバックスとドトール・日レスホールディングスの『ドトールコーヒーグループ』カテゴリ(エクセルシオール カフェその他含む)の数字を比較すると、店舗数では前者が後者の約1.4倍なのに対し、売上高はスターバックスのほうが3倍以上も高い。メニュー単価が高いのに加え、タンブラーや器具などのグッズ、小売店で市販されているペットボトル飲料やチルド飲料、コーヒー豆も人気が高く値崩れが起きておらず、手広い領域で堅実に稼げている」(飲食店チェーン関係者)

 実際にメニュー価格をみてみると、スターバックスの「ドリップコーヒー(S)」は350円(税込、以下同)で、ドトールの「ブレンドコーヒー(S)」は250円。またスターバックスで人気の期間限定メニューをみてみると、現在販売中の「瀬戸内 レモンケーキ フラペチーノ」は690円、スターバックス ストロベリー フラペチーノ」は680円となっており、比較的高価格を維持。タンブラー類も4000円以上のものも含めてバラエティーに富んだ商品が数多くラインナップされている。

<広さと混雑具合を考えたら多くないと思う>

 そんなスターバックスは前述のとおり越谷イオンレイクタウン内に7つも店舗を出店。SNS上では以下のように話題になっている。

<実際席が埋まってんならこういう展開もアリ>

<どんだけスタバ大好きなんだ>

<広さと混雑具合を考えたら多くないと思う>

 これまでにもスターバックスは東京・新宿駅前に「新宿新南口店」「ルミネ新宿店」「新宿ミロード5階店」など計7店舗を出店するなど、ターミナル駅前の複数の商業施設にまたがって出店するケースはみられたが、同一の商業施設内にこれほどの数の店舗を展開する例は珍しいといえる。その理由について、流通ジャーナリストの西川立一氏に解説してもらう。

同業他社の出店も防ぎ、各店舗で人員を融通

 越谷イオンレイクタウンは2008年10月、JR武蔵野線「越谷レイクタウン駅」北口駅前にグランドオープンした「kaze棟」「mori棟」「アウトレット棟」の3棟で構成され、総賃貸面積約18万3000平方メートルの国内2位の規模の超大型ショッピングモール。開業以来、広域から集客し、年間5000万人が訪れる人気スポットで、専門店、スーパーから構成される物販ゾーンのほかに、シネマコンプレックス、ゲームセンター、フットサルコート、各種スポーツアクティビティ体験施設といった時間消費に対応し、大規模なレストラン街やフードコートもある。

 そのため、週末を中心に長時間滞在する来館者も目立ち、館内にはベンチなどの休憩スペースも各所にある。単純に計算しても1日当たり13万人以上が訪れる計算で、人気の高いスターバックスは、こうした膨大な来館者に対応するためには、1店舗では到底なしえず、徐々に店舗を増やし7店舗まで増えた。大規模な商業施設では複数出店も珍しくないが7店舗はおそらくは最大と思われる。

 ただ、複数出店すると自社の店舗で客を奪い合う可能性もあるが、イオンレイクタウンでは必要十分以上の客数が見込め、広大な施設なので競合せず、満席で他店に流れる客も取り込むことができる。また、同業他社の出店も防ぎ、各店舗での人員の融通もしやすいといったメリットもある。

 コンビニエンスストア、スーパーなどは一定のエリアに複数の店舗を出店し、シェア拡大を図るドミナント化を図るが、スタバも同様な戦略。地域で圧倒的な一番のチェーンになれば、広く認知され、顧客を囲い込むことも可能となる。

(文=Business Journal編集部、協力=西川立一/流通ジャーナリスト)

Source

タイトルとURLをコピーしました