都市部から地方への移住意向が増加、ただし「現在の職場とつながっていたい」――NTTデータ経営研究所調査 

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 株式会社NTTデータ経営研究所は、「地方移住とワーケーションに関する意識調査」の結果を発表した。調査結果を見ると、コロナ禍により都市部から地方への移住の意向は増加しているが、現在の職場とつながっていたいという傾向が分かる。

 同調査は、NTTコムオンライン・マーケティング・ソリューション株式会社が提供する「NTTコム リサーチ」の登録モニターを対象に、インターネットを用いて9月14日~9月17日に実施した。回答者は、都市部に在住している1035人。具体的には、東京都(23区)、千葉県(千葉市、船橋市、松戸市)、神奈川県(横浜市、川崎市、相模原市)、埼玉県(さいたま市、川口市、川越市)、大阪市、名古屋市に在住している人だ。

地方への移住に関心がある人は3割弱、その半数が実際に何らかの行動

 「地方移住への関心」については、「コロナ禍以前から関心がない」が51.2%、「どちらともいえない」が19.7%、「コロナ禍以前から関心がある」が15.0%、「コロナ禍を機に、関心を持った」が12.9%、「コロナ禍を機に、関心がなくなった」が1.3%だった。

 「コロナ禍以前から関心がある」が15.0%で、「コロナ禍を機に、関心を持った」が12.9%という結果から見ると、コロナ禍により地方への移住に関心を持つ人が増えていることが分かる。また、これらを合計すると、現在、地方への移住に関心がある人は27.9%となる、

 実際に移住に向けて行動を起こしている人はどれほどいるだろうか。「コロナ禍以前から関心がある」「コロナ禍を機に、関心を持った」と回答した288人を対象に「地方移住の検討状況」を尋ねた質問では、「興味があるが難しい」が50.0%、「興味があり検討している」が38.2% 、「実施に向けて準備している」が9.4%、「既に実施している」が2.4%だった。

 半数は移住は難しいと考えているが、検討・準備・既に実施を合計すると、実際に行動をしている人も半数いることになる。

「地方移住への関心」と「地方移住の検討状況」

候補地は「首都圏へのアクセスがよい地域」、移住後も「現在の職場で働きたい人」が6割以上

 「移住先の候補地域の選定理由」(複数回答可)の上位は、「自然環境の豊かさ」(49.3%)、「現在の職場へ通勤可能であること」(30.2%)、「住宅費の安さ」(29.9%)などが入っている。

 その一方で、「自身/配偶者等の出身地、または実家や親戚の家に近いから」(25.7%)、「過去に旅行や出張等で訪れたことがある」(23.6%)といった、自分とつながりがある地域を選定理由としている人は比較的少ない。

 具体的な「地方移住の候補地」としては、千葉県、神奈川県、長野県がいずれも15.3%、東京都23区外が12.2%、埼玉県が11.8%、静岡県が10.4%となっている。いずれも首都圏へのアクセスがよい地域だ。

「移住先の候補地域の選定理由」(複数回答)

 「地方移住後の就業に対する意向」では、「主にテレワークを行いながら現在の職場での勤務を続けたい」が44.4%、「主に通勤しながら現在の職場での勤務を続けたい」が16.3%、「移住先の企業・団体等へ転職したい」が15.6%、「就業せずに生活したい」が10.8%、「現在の勤務先において、移住先に近い事業所に異動して勤務を続けたい」が5.6%と続いている。

 「主にテレワークを行いながら現在の職場での勤務を続けたい」「主に通勤しながら現在の職場での勤務を続けたい」「現在の勤務先において、移住先に近い事業所に異動して勤務を続けたい」を合わせると、地方に移住しても現在の職場で働きたい人が66.3%に上る。

 その一方で、「移住先の企業・団体等へ転職したい」のほか、「移住先で就農したい」(3.5%)、「移住先で起業したい」(3.1%)、「移住先の大学等へ就学したい」(0.3%)など、移住先で就業・就学する意向がある人は合わせて22.5%にとどまっている。

「地方移住後の就業に対する意向」

「ワーケーション」の言葉は広まったが、経験した人はわずか

 「ワーケーションに関する知識・経験の有無」については、「『ワーケーション』という言葉を見聞きしたことが無い」が14.2%、「ニュースやテレビ等で『ワーケーション』という言葉を見聞きしたことはあるが、どのようなものかはよく知らない」が31.8%、「ワーケーションを経験したことはないが、ニュースやテレビ等で『ワーケーション』という言葉を見聞きしたことがあり、他者にワーケーションがどのようなものかを簡単に説明することができる」が47.4%、「ワーケーションを経験したことがあり、他者にワーケーションがどのようなものかを簡単に説明することができる」が6.6%だった。

 ワーケーションという言葉を聞いたことがない人は少数派となり、言葉は浸透しているようだ。しかし、経験したことがある人もまた、少数にとどまっている。

「ワーケーションに関する知識・経験の有無」

 ワーケーションの知識の深さと印象の関係性についての調査結果も公表されている。

 この調査では「ワーケーションの知識の有無によってワーケーションに対する印象が異なる」と仮定。「ワーケーションという言葉を見聞きしたことが無い」と「ニュースやテレビ等でワーケーションという言葉を見聞きしたことはあるが、どのようなものかはよく知らない」を「知識無し群」と分類。「ワーケーションを経験したことはないが、ニュースやテレビ等で『ワーケーション』という言葉を見聞きしたことがあり、他者にワーケーションがどのようなものかを簡単に説明することができる」と「ワーケーションを経験したことがあり、他者にワーケーションがどのようなものかを簡単に説明することができる」を「知識有り群」としている。

 その結果、知識の有無によりワーケーションの印象に差があることがはっきりと現れた。例えば、知識有り群においては、「ワーケーションは遊びである」というネガティブな印象は、知識無し群よりも低い。

 一方で、「ワーケーションとは、リゾート地や観光地等で平日は仕事を、休日は休暇を過ごすことである」「テレワーク環境が整備されていれば、ワーケーションであっても通常通りの仕事を行うことができる」との印象は、知識無し群よりも知識有り群の方が高い。

 この結果についてNTTデータ経営研究所では、「ワーケーションに関する知識を消費者に正しく提供することで、ワーケーションに関する偏った印象評価を是正できる可能性を示唆している」としている。

「知識の有無によるワーケーション印象評価の差異(一例)」

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