「富裕層が投資で稼いだお金に課税する法律」は予想以上の歳入をもたらし貧富の格差解消につながる

GIGAZINE
2023年06月26日 06時00分
メモ



アメリカのワシントン州では保育と公教育の予算を確保するため、2021年に「株式や債券の売却で得た年間25万ドル(約3600万円)以上のキャピタルゲインに対し7%の税金を課す」という税法が可決され、2023年4月に初めてキャピタルゲイン税が徴収されました。新たなキャピタルゲイン税がワシントン州にもたらしたメリットについて、ワシントン州の有色人種連合であるWashington Community Allianceの事務局長を務めるカマウ・チェゲ氏が説明しています。

Lessons from Washington State’s New Capital Gains Tax – The Urbanist
https://www.theurbanist.org/2023/06/01/lessons-from-washington-states-new-capital-gains-tax/


ワシントン州には所得税や法人税が存在せず、代わりに日本の消費税に相当する売上税と使用税、事業主が州内で得た総所得に対して課税される事業・職業税などが存在します。チェゲ氏は、これらの税制が「最も裕福なワシントン州民」にとって有利なものであり、低所得層への負担が大きいと指摘しています。

チェゲ氏は大学で会計学を学んでいた頃、低所得者層の税申告を手伝うボランティアをしたことがあるそうです。その際、バスの運転手やホテルの従業員、保育士といった人々の納税率は、税制の抜け穴を知っていたり、優秀な会計士を雇ったりしている富裕層よりも高いことに気づいたとのこと。

チェゲ氏は、「この税制は大金持ちに有利になるように設定されています」「私が知っているほとんどの人たちは、給料をもらいながら生活しています。こうした労働者階級の人々は、住宅ローンや家賃の支払いにより、収入のかなり高い割合を売上税や固定資産税で支払っています。その結果、ワシントン州では最も収入の少ない層が支払う州税と地方税の割合が、最も収入の多い層より約6倍も高くなっているのです」と述べています。


こうした状態を是正すると共に保育と公教育の予算を確保するため、ワシントン州民が株式や債券の売却で得た年間25万ドル(約3600万円)以上のキャピタルゲインに対し7%の税金を課す「キャピタルゲイン税」が、2021年に州議会で可決されました。

この税制では退職金口座や不動産取引によるキャピタルゲインが対象外となっているほか、要件を満たす中小企業も免除されるため、金融取引などで巨額の収益を得ている富裕層を対象にしたものとなっています。

数人の富裕層は「キャピタルゲイン税は州憲法で禁じられている住民税に相当する」と主張して、キャピタルゲイン税の撤回を求める裁判を起こしました。しかし2023年3月、ワシントン州最高裁判所が原告の訴えを棄却し、「キャピタルゲイン税は憲法上の制限を受けない物品税である」と判決を下しました。

Washington state’s capital gains tax upheld by state Supreme Court – Axios Seattle
https://www.axios.com/local/seattle/2023/03/24/washington-state-capital-gains-tax-upheld


ワシントン州はキャピタルゲイン税を可決した時点で、2023年7月1日に終了する2023会計年度において2億4800万ドル(約350億円)の歳入が見込めるとしていました。ところが、まだ一部の対象者が税金を納付していない2023年5月9日の時点で、すでに6億100万ドル(約860億円)もの税金を集めているとのこと。納付の延長を申請した2500人の納税者が申告を済ませれば、最終的に2022年度のキャピタルゲイン税歳入は8億4900万ドル(約1214億円)に達する可能性があると報じられています。

WA’s new capital gains tax brings in far more than expected | The Seattle Times
https://www.seattletimes.com/seattle-news/politics/was-new-capital-gains-tax-brings-in-849-million-so-far-much-more-than-expected/


チェゲ氏は今回の事例から得られた教訓について、「ワシントン州で最も裕福な人々は、私たちが想定していたよりもはるかに裕福であり、かつて想定されていた速度を超えて裕福になり続けているということです」と述べています。

また、富裕層が得ているキャピタルゲインは、低・中所得者層の負担率が大きい税制に基づいて構築された公共インフラと、実際に働いている労働者によって生み出されているものだと指摘。「金持ちが税金を支払わないことを擁護するために使われる、うんざりするような議論はもう終わりにするべきです」とチェゲ氏は主張しました。

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