神田の「日本橋ふくしま館」にて、私は言葉を失っていた。想像以上に干し蕎麦が置かれていたから……というのもあるが、“まさかの形状” をした商品が売られていたからである。それが今回お伝えする『島田そば』だ。
もったいぶらずに言うと、現在の「家そば放浪記ランキング」において、長い間1位を死守するヤマダイの『手緒里 紫峰そば』と同じような、U字型の「折り曲げ干し蕎麦」が売られていたのである……!
ど、どういうことだ? あの折り曲げ蕎麦は、福島の蕎麦だったのか? いや、しかし、たしかヤマダイは茨城県のメーカー……と思い調べてみると、いろいろなことが分かった。簡単に説明しよう。
まず、ヤマダイの『手緒里 紫峰そば』の「折り曲げ」は、どうも「手緒里シリーズ」みたいな感じであり、蕎麦はもちろん、うどんもそうめんもひやむぎも、“手緒里” の名の下に「U字形状」で絶賛販売中。
そんな “手緒里” に関してのことがパッケージに書いてあるのだが、なんでも「つむぎの郷として有名な、茨城県の結城地方で “つむぎを織るように丹精こめて作られている”」と。
おそらくそれは「結城紬(ゆうきつむぎ)」のことであり、商品名のイメージ的には織物ルーツかと思われる。
しかしながら!
そんな「手緒里シリーズ」の「U字形状」が、手緒里オリジナルかと思えばそうではなく、長い麺をダラ〜リと半分に折り曲げた状態で乾燥させる、“島田掛け” という製法によって生み出されるものであるとヤマダイの公式サイトに書いてあった。
ここで出てきた「島田」の文字。
んで!
今回ご紹介する『島田そば』のパッケージを熟読すると、島田そばの由来は、花嫁さんがよくやる「文金高島田(ぶんきんたかしまだ)」でも有名な、いわゆる昔の女性の髷(まげ)、すなわち「高島田髷(まげ / 丸まげ)」に似ていること。
それすなわち、“島田掛け” よって生み出された蕎麦……
つまり!
ヤマダイの『手緒里 紫峰そば』も、今回の『島田そば』も、どちらも “島田掛け” という製法スタイルによって作られているのであり、特に場所的なことは関係ないと思われる。
おさらいすると、あの独特なU字構造は “島田掛け”。そして、それは製法スタイル。これは覚えておいて損はない蕎麦(麺類)知識だ。もしも間違っていたらスミマセン。
そんな座学はこのへんにしておいて……
デカい鍋にタップリのお湯を沸かし……
7分〜8分ゆでて……
完成。
して、そのお味は──
う〜む……。正直、そこまでの衝撃は感じなかった。やや太めの蕎麦。もちもち食感。奥底に感じる蕎麦の味。ウマイんだけど、ちょっと「立ちそば感」があるというか……。
実はそれは茹でている時から感じていて。最も感じたのは茹で上がった蕎麦をあげた時で。色や太さが「立ちそばの蕎麦っぽいな」と。
「家そば」か「外そば」かで言えば、「立ちそば」という点から考えたら「外」かなとは思う。
また、「冷」で食べるより「温」で食べた方が良い気がする。そしたら本当に「立ちそば」になる。
わかめとか入れたり。コロッケとか入れたり。そんな蕎麦が似合う食感と味をしていた。海老天を入れるのも良いだろう。家で立ちそばを感じたい人に。
執筆:干し蕎麦評論家・GO羽鳥
Photo:RocketNews24