アメリカは超音速偵察機を極秘開発するため「ピザ窯に使う」と偽って冷戦中のソ連からチタンを輸入していた

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アメリカを中心とする西側諸国とソビエト連邦(ソ連)が中心の東側諸国が冷戦を繰り広げていた1964年、アメリカのロッキードが最高速度マッハ3に達する高高度戦略偵察機のSR-71(ブラックバード)を開発しました。このSR-71の生産には耐熱性と強度に優れたチタンが必要でしたが、当時は高品質のチタン鉱石の多くが敵国のソ連で生産されていたため、アメリカは「ピザ窯に使うため」と偽ってダミー会社経由でソ連から極秘にチタン鉱石を輸入していたとのことです。

In the early 1960s Soviet Union sold titanium to the US believing they needed it for Pizza Ovens but instead they used it to build the iconic SR-71 Blackbird Mach 3+ spy plane – The Aviation Geek Club
https://theaviationgeekclub.com/in-the-early-1960s-soviet-union-sold-titanium-to-the-us-believing-they-needed-it-for-pizza-ovens-but-instead-they-used-it-to-build-the-iconic-sr-71-blackbird-mach-3-spy-plane/


The Mysterious A-12 Archangel: What You Don’t Know! – YouTube
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高高度偵察機のSR-71はU-2の後継機として開発されたA-12の派生機であり、従来の航空機とは異なる構造により、超音速であるマッハ3での飛行が可能でした。SR-71の初飛行は1964年12月22日に行われ、就役した最初のSR-71は1966年1月にカリフォルニア州ビール空軍基地の第4200戦略偵察航空団(後の第9偵察航空団)に引き渡されました。その後、1968年3月21日には沖縄の嘉手納飛行場にも配備され、北ベトナムやラオスなどへの偵察任務をこなしたとのこと。

SR-71はその特異な外見から通称「ブラックバード」と呼ばれており、沖縄に配備された際は独特の形状と夜間に出撃することから「ハブ」とも呼ばれていたそうです。


SR-71はこれまでに開発されたどの航空機よりも速く、より高い高度を飛行できるだけでなく、ステルス性を最大限に高めるための工夫が詰め込まれていました。ロッキードで軍事関連製品の極秘開発を担当した部門「スカンクワークス」の伝説的エンジニアだったケリー・ジョンソン氏は、SR-71はそれ以前の航空機とはまったく異なるカテゴリーにあり、「すべてを発明しなくてはなりませんでした」と当時のことを回想して言っています。

開発の過程で問題となったのが、最高速度マッハ3に達する機体は大気との摩擦によって継続的にカ氏1000度(セ氏537.8度)以上の高温に達するため、従来の機体と同じ金属では飛行中に機体が溶けてしまうという点です。

この耐熱性の問題を解決しつつ強度や軽量化を両立するにはチタン合金が必要であり、実際にSR-71の機体は全体の93%がチタン合金でできています。ところが、アメリカにはチタンを生産するために必要な鉱山がなく、当時はチタンを輸入する必要がありました。

記事作成時点ではオーストラリアや南アフリカがチタン鉱石の主要な輸出国ですが、1950年代後半~60年代の主要輸出国は、当時アメリカが敵対していたソ連だったとのこと。SR-71は東側諸国の偵察を主な任務としていたため、当然ながらソ連から表立って偵察機製造のためのチタン鉱石を輸入することはできませんでした。


そこで中央情報局(CIA)は、極秘にソ連からチタン鉱石を輸入するため、国外に設立したダミー会社のネットワークを構築しました。

この作戦においてCIAは、「ピザを高温で焼くピザ窯に使用するチタンが必要」というカバーストーリーをでっち上げ、ソ連からチタン鉱石を輸入していたとのこと。実際にソ連産のチタンがSR-71に使用されたという証言は複数上がっており、このカバーストーリーは役に立っていたようです。


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2023年06月19日 17時30分00秒 in 乗り物,   動画, Posted by log1h_ik

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