公開前から様々な話題を呼んでいた実写版「リトル・マーメイド」。ついに本日2023年6月9日から日本公開された。個人的には否定的な声の方が多く見かけたが、先だって公開されたアメリカでは4日間で1億1750万ドル(約164億円)の興行収入をたたき出すなど、好調なスタートを切っているのだそうな。
ディズニーアニメをほとんど見ない私(中澤)でも知っている本作。ここまで騒がれると内容が気になる。そこで公開初日に観に行ってきたため、感想を正直にお伝えしたい。ディズニーフィルターのかかってない人間からはこう見えました。
・初日の雰囲気
訪れたのは新宿の巨大シネコン「新宿バルト9」。吹き替え版、字幕版、ドルビーシネマの3シアターで1日11回上映されている。なんだかんだでディズニーの大ヒット作の実写化だし、前述の通り、アメリカでも大ヒット中の作品。やっぱり初日の今日は満員なのだろうか。チケット取れるかな?
と思いきや、余裕だった。開始直前の購入で埋まってるのは24席。おかげで、真ん中で前に人がいない席を取ることができた。まあ、平日昼間だしな。
そして、エントランスである9階フロアには「リトル・マーメイド」の巨大垂れ幕が登場している。鳴り物入りだ。明日からは人ゴミはきっとヤバイに違いない。
上映されるシアターの案内板には、以前の記事でお伝えした「光過敏性発作やてんかんの症状など、光感受性反応による諸症状を引き起こす可能性のあるシーン(光の点滅が続くシーン等)が含まれております」という注意事項が。これについてどういう感じだったかは内容に触れるため後述する。
・まず思ったこと
内容としてまず触れたいのは、ハリー・ベイリーの黒人アリエル。公開前の話題というのはほとんどがこれに関してアリかナシかというものだった。ざっくり言うと、アリ派は「肌の色で差別するな」、ナシ派は「原作の設定をポリコレで変えるな」という論争である。
ディズニーファンでもなく黄色人種である私から言わせてもらうと、アリエルについては何も気にならなかった。さすがR&Bシンガーだけあって歌ウマイなと思った程度。逆に言うなら「実写アリエルはこの人じゃないとダメだ」というものもあまり感じられなかったのだが。
お互い引けなくなってるのかもしれないなあ。映画だけに向き合った感想を正直に述べるなら、蚊帳の外の人間として私は次の意見を表明したい。「どっちでもええやないか」と。異論は認める。
・いまいちに思った点
それよりも、気になったのは、魚類などの脇キャラがガチの魚である点。アニメの「リトル・マーメイド」の世界観って、魚類とか鳥とかがデフォルメされているところが大きいと思う。キャラデザから、ウィットに富んだギャグとか飛ばしそうな雰囲気がにじみ出ている。
だが、実写版はフランダーがガチの魚すぎるCGだ。スカットルもガチの鳥である。デザインがガチすぎて「怖い」と言われた『ソニック・ザ・ムービー』の初期ソニックみたいな方向性で実写化されているのだ。
それゆえに、世界観もガチ感というか切実さが凄い。例えるなら、ドラクエだったものが、ファイナルファンタジーになったような感じ。これについても賛否あるだろうが、「リトル・マーメイド」のストーリーでユーモラスな雰囲気がないところは見ててめちゃめちゃ長く感じた。
・良かった点
ただ、そんな中でもセバスチャンは良かった。ティザー映像を見た段階ではただの蟹に見えていたのだが、実際に見ると、セバスチャンだけちょっとキャラデザがユーモラス。ちゃんと「アンダー・ザ・シー」を歌いだしそうな顔してる。
コミカルに跳ね回る可愛らしいセバスチャンが孤軍奮闘で雰囲気を軽やかにしていた。リアルとフィクションのバランスってこういうことだよな。
また、魔女アースラが人間に変身した時の姿・ヴァネッサも良かった。アースラ役のメリッサ・マッカーシーさんと同一人物かと錯覚するほど、にじみ出る性格の悪い表情が板についていて目が覚めた。ジェシカ・アレクサンダーさんという俳優さんらしい。演技力ってこういうことなのかもしれないなあ。
・注意シーン
そんな映画のクライマックスに嵐の海の中で巨大化したアースラと戦うシーンがある。ここは海に巨大な渦巻きが出来て、絶えず雷が落ちまくる大スペクタクル。例えるなら、『ワンピース』の麦わらの一味が空島に行く時みたいな感じになっているのだが、おそらく前述の注意事項はこのシーンのことだと思う。
結構長い間ピカピカするが、言うならば嵐のシーンがちょっと長く続く程度。ポケモンショックほど過激な点滅ではなかったので個人的には問題はなかった。
とは言え、リトル・マーメイド公式も「光に対する感受性は個々のお客様によって異なりますので、ご鑑賞いただく際には予めご注意ください。光刺激に敏感なお客様は、ご鑑賞に際して、注意深くご判断いただくようお願いいたします」と言っていることだし、注意深くご判断いただけると幸いだ。現場からは以上です。
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.