北米の株式市場の値動きが重い状態が続きます。一方、東京市場は世界の注目を集めるほど急上昇したところで6月7日にはドボンとなった約600円の下げでおののいた方も多かったのではないでしょうか?
まず、日本株の方ですが、この1か月ぐらい時折指摘していたように個別銘柄の値動きは決して良いわけではなく、指数だけが先行する、そんな相場付きでした。これは海外勢が日本の個別株売買よりもグローバルマクロ系が指数を買うことで先物が上がり、それにつられて現物が引っ張られるという状況が生じていたとみています。と言うことは海外勢は日本の個別銘柄への投資は ①わからない ②会社が小さすぎて投資対象にならない ③もともと日本株はボラティリティが高いのでそれを嫌ったということでしょうか?その一方で北米の値動きに対して日本株は登り竜だったので先物やオプションで勝負に出た、と見るのが正解かと思います。
非常にテクニカルな話ですが、6月9日がSQなのでそれに向けて裁定売買が入るため、SQは荒れると昔から言われています。特に海外勢の指数取引の影響力が大きい中での話でしたので7日のようなドボンが生じるわけです。ただ、逆に個別銘柄を見ればさほど下げているわけではありません。なんとなくですが、個人投資家が少し動いてきたように見えますのでSQ通過後の来週からは実弾が入る現物株に着目されるかどうかがキーポイントになるとみています。
さて、北米です。まず、FOMCが6月13-14日に開催されます。アメリカが久しぶりに利上げをフリーズする可能性は概ね7割とされます。また、重要な判断材料となるCPI(消費者物価指数)が6月13日に発表になりますのでそれが判断に影響することは確実です。
個人的には北米の物価高は「こびりついた状態」である程度までは下がるものの物価指数が2%上昇のレベルになるのは24年に達成できないとみています。それは賃金上昇が物価高を支持する形になっていることが主因とみています。原油など資源や物流は通常に戻っており、物価高の主たる要因ではありません。また、高すぎる金利がモーゲージの支払いなどで個人を苦しめ、企業物価も上げざるを得ないとことなど悪い循環にあるとみています。
今朝、カナダ最大手銀行の一つの副主席エコノミストによる朝食会に招かれました。冒頭、今朝、カナダ中銀が利上げをしたこと、そして多分、もう一回利上げをせざるを得ない状況にあるだろうと明快に述べました。オーストラリアが5月、6月と2カ月連続で利上げしたこともあり、カナダが1月に利上げ以降、しばし停止していた利上げ再開はありそうだというのが前日あたりから市場では聞かれていた話です。よってサプライズではありません。
同エコノミストのポイントはインフレはsticky(べとべとしてる)と何度も指摘し、アメリカ同様、少なくとも今年の利下げはなさそうだと指摘しています。24年度に徐々に物価は下がるものの24年末で概ね3.5%程度までしか下がらないだろうと予想しています。
一方、懸念されている景気後退については引き続き消費が旺盛であるため、企業業績は若干悪化はあるけれど「要注意」の領域にはならず、来年にかけてずるずる引っ張る形になりそうだ、と述べています。
この内容からすると来週のアメリカのFOMCにおける利上げ判断はやや上向きのバイアスがあるかもしれない気がしています。個人的には利上げの確率は5分5分とみています。
株式市場そのものを見るとハイテク株にはまだ期待値がありますが、金利との逆相関にあるセクターですので仮に金利の見通しが「利上げ」ないし「利上げ含み」になれば上げ一杯になるかもしれません。現在、他に目立ったリーディングセクターがないため、「もたつく北米株」となるのでしょうか?
先日債務上限問題解決後、6月はつかの間の晴れ間もあるかと思ったのですが、思った以上に市場は重たい、それが日々対峙していて感じるところです。
北米の利上げバイアスは円安ですので日本株にはプラスになります。よって6月ももしかすると日本株は荒波を乗り越えて躍進するのかもしれません。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年6月8日の記事より転載させていただきました。