推してるアイドルグループが全国ツアーをやるらしい。嬉しい反面、前回のライブでチケットが全部落選した苦い思い出が蘇る。
今度こそはライブに行きたい! なんとしてもチケットを手に入れたい! その強い思いを胸に、私は静岡から東京都日本橋へとはるばる足を運んだ。
もうこうなればやれることはただ1つ、全力の神頼みである。
・街中に溶け込む賭け事の神社
一縷(いちる)の望みを抱いてやってきたのは東京都日本橋にある「福徳神社」。全国的にも珍しい、チケットや宝くじの当選祈願ができる神社なのだ。
日本橋にあると聞いた時は、中心部から少し外れたところだろうと思っていたのだが、実際に来てみるとめちゃくちゃ街中でびっくり。
近代的なビル群の中心に緑豊かな神社がある様子は、なんだか都会のオアシスみたい……! 朱色の鳥居も悪目立ちするかと思いきや、意外と周囲の景観とマッチし、良い感じに溶け込んでいる。
街のド真ん中にある綺麗な神社ではあるがその歴史は古く、貞観年間(859~876年)にはすでに鎮座していたみたい。徳川家康をはじめとする数々の武将が参詣し、二代将軍の秀忠が「芽吹稲荷」という別名を付けたんだとか。稲荷だけあって、社殿に控えるのはお狐様だ。
なぜこの神社に賭け事のご利益があるのかというと、宝くじの前身ともいえる「富くじ」とゆかりが深いから。江戸時代、富くじの興行を幕府に許されたのは由緒正しき神社だけで福徳神社のその一社だったんだって。「福徳」っていう名前からしてご利益がありそうだから、昔からたくさんの人を惹き付けてきたのだろう。
・お金も欲しいしチケットも欲しい
日曜日だったためとても混んでいたが、列の流れはスムーズだった。並びながらお願いごとを整理し、自分の番が来たら懸命に祈る。
「ライブのチケットを当ててください」
「願わくばアリーナ席が良いです」
「できれば複数公演当ててください」
「ついでに宝くじも当たったら良いな……」
……チケットさえ当たればよかったのに、欲望は尽きることがないから恐ろしい。一日中こういった願いを聞き続けなきゃだなんて、神様も楽じゃないよね。
ちなみにここに祀(まつ)られている神様は、五穀豊穣を司る「倉稲魂命(うかのみたまのみこと)」。担当外すぎてなんだかより一層申し訳ない気持ちになる。
神頼みを終えたあとは、さらなる念押しとして「御守り」を購入しよう。
福徳神社へと参拝に来る多くの人のお目当てはおそらくこの「富籤守(とみくじまもり)」。宝くじ・チケット当選・金運のご利益があるといい、常日頃チケットの当落やチケット代の捻出に悩まされてるオタクのために作られたかのような代物だ。ありがたや……。
さらにさらに! 希望者は鑑賞券の当選祈願をしてもらうこともできるみたい。要予約なので今回は諦めたが、どうしても推しに会いたい人は人智を超える力に頼るのも1つの手だろう。
・人事を尽くして天命を待て
ビル群のど真ん中にある神社に、まさかこんな珍しい御利益があるとはなぁ。場所が場所だけに、どんな神社か知らずに前を通っている人とかたくさん居そうだ。
今まで何度もチケットの落選で涙を呑んできたが、お参りを終えた今、なんだか今回はいけそうな気がする……! 結果がまだ出ていないので何とも言えないものの、ただ座して待つよりかは万一残念だった場合に諦めもつく。
なにか大事なライブがあるときは、思い切って神様に頼ってみるのはいかがだろう? お金やチケットに執着がなくても、緑あふれる境内にいるだけでなんだかリフレッシュできそうな場所だったぞ。