AI研究の第一人者ジェフリー・ヒントン博士がグーグルを離れた ほか【中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」2023/4/27~5/10】

INTERNET Watch

1. G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合で明らかになった多くの課題

 G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合は閉幕し、閣僚宣言が採択された(Impress Watch)。その骨子は次の6点だ。また、原文はデジタル庁のウェブページから参照できる(デジタル庁)。

  • 越境データ流通と信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)の推進
  • 安全で強靱なデジタルインフラ構築
  • 自由でオープンなインターネットの維持・推進
  • 経済社会のイノベーションと新興技術の推進
  • 責任あるAIとAIガバナンスの推進
  • デジタル市場における競争政策

 いずれも、デジタル社会の推進するうえで大きな課題となっているポイントである。

 とりわけ、各国が取り組むべきは「AIを使った偽情報」への対策だろう。次項目でも紹介しているジェフリー・ヒントン博士の懸念点でもある。

 河野太郎デジタル大臣は「国境を越えた外国からの偽情報が大きな課題になり、民主主義に対する脅威になってきた。人手をかけてやる偽情報と、AI(人工知能)を使ってやる偽情報があるが、量の観点から言えば(AIの多さは)比べ物にならない」と述べている(朝日新聞デジタル)。さらに、西村康稔経産大臣は「AIの規制に前向きとされる欧米の閣僚らを前に、『リスクの解消にあたっては、できる限り技術の開発や利活用を阻害しない形で対応していかなければならない』」と述べたと伝えられている(朝日新聞デジタル)。「責任あるAI」の実現は今後の大きな課題だ。

 さらに、岸田文雄首相は「人工知能(AI)を巡る課題について政府関係者と有識者らで議論する『AI戦略会議』を立ち上げる」と表明した(日本経済新聞)。

ニュースソース

2. AI研究の第一人者ジェフリー・ヒントン博士がグーグルを離れた

 人工知能(AI)の機械学習手法の1つ「ディープラーニング(深層学習)」の先駆的な研究者であるトロント大学名誉教授のジェフリー・ヒントン博士は、過去10年ほどの間、グーグルでも非常勤で研究に携わってきた。しかし、グーグルに関わらない立場でAIの危険性に警鐘を鳴らすためとして、あえて自らの判断でグーグルを離れることにしたと報じられている(CNN)。CNNの記事では、ヒントン博士がニューヨークタイムズの取材で述べたことを引用し「『もはや何が真実なのかが分からなくなる』世界を作り出す潜在的可能性」に懸念を持っているとしている。

 ヒントン博士のより詳細な見解はMIT Technology Reviewに掲載されている。一読の価値がある記事だ(MIT Technology Review)。

 AIの専門家が考える懸念には説得力を感じざるを得ない。日々の進化に多くの人が驚きを感じているはずだが、この技術の発達やその利用を止めることはできないとするなら、その特性を理解し、いかに健康的に使っていけるようにするかを考えることはこれから重要な話題になるだろう。

ニュースソース

  • AIの第一人者ジェフリー・ヒントン氏、グーグル離れる AIの危険性に警鐘[CNN
  • ジェフリー・ヒントン独白 「深層学習の父」はなぜ、 AIを恐れているのか?[MIT Technology Review

3. ドコモ回線がつながりにくい

 NTTドコモは、「携帯電話がつながりにくい問題」について、説明を行った。また、「今夏までの解消を目指す」としている(ケータイWatchケータイWatch)。

 ここ数カ月、「都市部の繁華街などでつながりにくくなるという声」が上がっていることがSNSや一部のメディアで報じられてきた。その原因について「ユーザーの増加に伴う、通信量の増大のほか、再開発などでのエリア変動、専用の周波数で5Gを提供する『瞬速5G』の設置が道半ばであることから、4Gの収容量がひっ迫することに起因する」という説明をしている。

 オープンシグナル社による「モバイル・ネットワーク・ユーザー体感レポート」でも、回線品質においてソフトバンクにその座を奪われている(ケータイWatch)。かつて、回線品質については競合他社の追従を許してこなかったNTTドコモだが、大きな課題を抱えることとなった。

ニュースソース

  • ドコモ、「スマホがつながりにくい問題」は今夏解消目指す[ケータイWatch
  • ドコモが語る「5G」の課題と未来、質疑は「品質低下」に集中[ケータイWatch
  • 通信品質が最も安定しているのはソフトバンク、ドコモ抜く――オープンシグナルのレポート[ケータイWatch

4. メタはメタバースから撤退しない

 メタのCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏は、四半期決算発表の席において、メタバースからの撤退のうわさを否定した(ThinkIT)。さらに、AIとメタバースへの注力を強調した(Gigazine)。2023年後半に発表が予定されている次世代コンシューマー向けVRデバイスに期待をしているようだ。

 しかし、Forbs誌ではメタバースの課題を3点挙げている(Forbes JAPAN)。1つ目はヘッドセットなどの「機能と品質を備えた技術」の開発状況、2つ目は「メタバースに対する消費者の需要とビジネスモデル」、3つ目は「テクノロジー関連の投資」がAIに向いているということだ。メタはこの課題をどう乗り越えるか。

ニュースソース

  • FacebookやInstagramに画像生成AIを搭載する計画をマーク・ザッカーバーグCEOが語る[Gigazine
  • Metaはメタバースから撤退しない。ザッカーバーグ氏、四半期決算で改めて強調[ThinkIT
  • メタバースは「死んだ」のか? AIブームの影で投資減少[Forbes JAPAN

5. 日本コンテンツの海賊版被害額はおよそ2兆円

 一般財団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)が「2022年度のオンライン上で流通する日本コンテンツの海賊版被害額」の推計を発表した(INTERNET Watch)。それによれば、金額規模は1兆9500億円~2兆2020億円ということだ。2019年に実施した同様の調査では約3333億円~4300億円だったので、それと比較すると約5倍にまで被害が拡大していることになる。

 さらに、京都府警察本部と山科警察署が、5つのサイトを運営する男性4名を逮捕したことも報じられている(INTERNET Watch)。

 警察や国外の機関とも連携をして、地道な取り組みを重ねることで、漫画村などの大規模な組織を摘発することで成果も上げているが、全体の被害規模はまだまだ大きい。

ニュースソース

  • 京都府警、リーチサイト「映画の無料動画で夢心地」など5サイトの運営者4人を一斉取締りで逮捕[INTERNET Watch
  • 2022年の日本コンテンツの海賊版被害額、3年前の5倍となる2兆円前後と推計~CODA発表[INTERNET Watch

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