バージニア工科大学・農学生命科学部の研究チームが、アメリカ農務省および国立研究所からの資金提供を受けて実施した最新の調査によると、特定の香りの石鹸(せっけん)で体を洗うと蚊に刺されやすくなったり刺されにくくなったりすることが明らかになりました。
Mosquito study shows soaps with floral scents attract mosquitoes more
https://www.usatoday.com/story/news/health/2023/05/11/soaps-that-attract-mosquitoes-study/70207924007/
Soap application alters mosquito-host interactions: iScience
https://doi.org/10.1016/j.isci.2023.106667
バージニア工科大学の研究チームが2023年5月10日に科学誌のiScienceで発表した論文によると、人間が体を洗うのに使用する石鹸の香りによって、蚊を引き付けたり遠ざけたりできる可能性があります。
論文の著者のひとりであり、バージニア工科大学で生化学の助教授を務めるクロエ・ラホンデール氏は、「石鹸は化学物質を添加するだけでなく、我々が自然に生成する化合物の放出に変化を引き起こすことで、人間のにおいを劇的に変えます」と語りました。
研究によると、蚊は他の昆虫同様に植物の蜜を好んで食べるため、植物由来の香りや植物の香りを模倣したものを好むようで、論文では「フローラルな香りが蚊の意思決定を混乱させる可能性がある」と指摘されています。同研究によると、これまで人間の体臭が蚊におよぼす影響についてはさまざまな研究が存在したそうですが、使用する石鹸が蚊を引き付けたり遠ざけたりする可能性については全く考慮されてこなかったそうです。
研究に参加したクレマン・ヴィノージェ氏は、「石鹸の香りを変えるだけで、平均よりも高い割合で蚊を引き付けている人が、さらに多くの蚊を引き付けたり、逆に蚊を遠ざけたりできる可能性があります」と語っています。
研究では、4人の被験者にDial・Dove・Native・Simple Truthという4つの異なるブランドの石鹸を使用して体を洗ってもらい、「体を洗う前」と「体を洗った後」の体のにおいを科学的に分析。
分析の結果、被験者はそれぞれ異なる体臭を持っているだけでなく、各石鹸を使った後の体臭もそれぞれ異なるものになったそうです。さらに、被験者から収集した体臭を蚊に繰り返し嗅がせることで、蚊が特定のにおいを好む(あるいは嫌う)かどうかを検証しました。
検証に使用された石鹸は4種類で、そのうち3種類はフルーツや花の香りがするものでした。これらのいわゆる「フローラルな香りの石鹸」は蚊を引き付ける効果があったものの、一方でココナッツの香りの石鹸は蚊を遠ざける効果がみられたそうです。
「石鹸は単に体臭に化学物質を加えるだけでなく、一部の化学物質を別のものに置き換えたり、他の化学物質を洗い流したりします。そのため、我々人間から放出される化学物質と石鹸が持つ化学物質との間には、多くの科学的相互作用が生まれるものと考えられます」とヴィノージェ氏は語っています。
また、ヴィノージェ氏は「ココナッツオイルに含まれる脂肪酸などで特定の脂肪酸を増やすと、蚊やその他の昆虫を遠ざける効果があることは、これまでの研究からも明らかになっていました。しかし、実際の調査結果としてこの効果を体感することは、我々にとっても非常に興味深いものでした」と語りました。
研究チームは今回の発見が蚊に刺されにくくなる蚊よけ剤や、蚊を集めるための罠で使用する誘引剤などを開発するための将来の研究に大きな影響をおよぼすことを期待しています。
ヴィノージェ氏は「さまざまな石鹸を試すことは重要です。なぜなら、実際に重要なのは『人間の自然なにおいと特定の石鹸の組み合わせ』であることを、今回の研究結果が示しているからです」と語り、個人個人の体臭と石鹸の組み合わせにより、生成されるにおいが異なるという点を強調しています。
なお、研究チームは今後、石鹸で体を洗うタイミングによって効果は異なってくるのかなどを調査する予定としています。
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