クリエイターが実際に「稼げる」 プラットフォーム は?:拡大するクリエイターエコノミー、対応を急ぐ各サービス

DIGIDAY

クリエイターエコノミーは加熱し続けており、ソーシャルメディアプラットフォームはここ1年ほど、インフルエンサーやクリエイターのためにレッドカーペットを敷くことに力を注いでいる。

パンデミック中、プラットフォームネイティブのクリエイターのニーズ、そして、マーケティングチャネルとしての影響力が拡大したことで、チップジャー機能からクリエイタープログラムまで、ソーシャルメディアプラットフォームはクリエイターを引き付け、つなぎ止めるための道筋をつくろうと努力している。

ロックダウンによって、ソーシャルメディアの使い方に変化が生じたことで、インフルエンサーマーケティングへの関心が高まり、今やほとんどのブランドでメディアミックスの定番と見なされている。対面制作の制限がそうしたトレンドをさらに加速させ、イーマーケター(eMarketer)の2021年の報告によれば、インフルエンサーマーケティングは前年を超える規模になった。この報告によれば、2021年の時点で、インフルエンサーマーケティング戦略を採用しているマーケターは60%強だったが、2022年は70%以上が採用する見込みだ。

クリエイター参入を煽る各プラットフォーム

英国のソーシャルメディア、インフルエンサーマーケティングエージェンシーであるファンバイツ(Fanbytes)の業務担当ディレクター、ジョー・ソウ氏は、クリエイターが収益化する機会が増えたと話す。ブランドはインフルエンサーを戦略上不可欠な存在と捉えているため、この傾向は続くというのがソウ氏の予測だ。

この領域に投入される資金が増えれば、参入を望むクリエイターやインフルエンサーも増えるだろう。そして、プラットフォームは競うように参入を促している。YouTubeとインスタグラム(Instagram)はそれぞれ2000年代初頭と2020年前半からクリエイターに報酬を支払ってきたが、Twitter、Pinterest(ピンタレスト)、リンクトイン(LinkedIn)などもこの1年、挑戦者としての地位を確立しようと取り組んでいる。

プラットフォームのクリエイターファンドやプログラムはクリエイターに新たな収入源をもたらし、クリエイターはブランドと直接仕事をするために必要な経験を積むことができる。米DIGIDAYの取材に応じた専門家によれば、後者はクリエイターにとって金銭的な利益が最も大きいと広く考えられている。

それぞれのプラットフォームが何を提供し、クリエイターはそれらをどのように使っているのか、あるいは、使っていないのかを知るため、米DIGIDAYは23人のインフルエンサーから話を聞いた。

Facebookとインスタグラム:定番で鉄板

インスタグラムがインフルエンサーに人気のプラットフォームとして知られるようになって久しい。しかし、ほとんどの契約は、ブランドとインフルエンサーのあいだで直接結ばれている。2021年、クリエイターエコノミーが成長を続けるなか、インスタグラムはクリエイターの注目を集めるための取り組みを開始し、クリエイターがコンテンツで収益を上げ、同アプリでの活動を継続する機会を増やしている。ライブ配信中に、ユーザーが投げ銭できるバッジ機能、クリエイターがファンに直接販売できるショップ、インストリーム動画広告、ブランデッドコンテンツ、アフィリエイトプログラム、ボーナスなどだ。

リール動画再生ボーナスプログラムは、リール動画のパフォーマンスに応じて収入が得られるというもので、現在のところ、多くのクリエイターに支持されているようだ。ボーナスの金額は、プログラムに参加してから30日間のリールの再生回数に応じて計算される。1回の再生で獲得できる金額については不明だ。

ソーシャルメディアで@ewdatsgrossというアカウントを使い、インスタグラムで3万6000人以上のフォロワーを獲得しているシカゴのインフルエンサー、アシュリー・グロス氏は、このプログラムで30日ごとに最大800ドル(約10万3400円)稼ぐことができると話している。一方、同じシカゴのインフルエンサー、ニコラス・ベイリー氏はソーシャルメディアで@nicksaysgoと名乗り、インスタグラムでは8000人強のフォロワーを獲得しているが、最近、リール動画1本で再生回数が4000に達し、推定43ドル(約5500円)を稼いだと報告している。両者ともインスタグラムをメインプラットフォームとして利用しており、確実にボーナスを受け取るために必要な再生回数がわかるため、インスタグラムのボーナスプログラムは透明性が高いと評価している。

厄介なのは、アルゴリズムの変化に対応することで、現時点では、TikTokと直接競合するリール動画が優先されているようだ。

ベイリー氏は写真より動画コンテンツが優先されていると指摘する。「新しい機能を導入し、すでにそこにあるものを完全に壊すことなく、発想の転換を促すことが可能だ」と、同氏はいう。インスタグラムは変更を加え続けており、クリエイターは絶えず変化するアルゴリズムを注視しているとベイリー氏は補足する。

一方、Facebookは初の黒人クリエイタープログラム、ウィー・ザ・カルチャー(We The Culture)などの拡充プログラムに加えて、インスタグラムと同じような収益化の機会を提供している。また、サブスクリプションや有料オンラインイベントのオプションも用意されている。CEOのマーク・ザッカーバーグ氏は2021年、2022年末までにFacebookとインスタグラムで合わせて10億ドル(約1290億円)以上をクリエイターの収益化プログラムに投資すると発表した。

TikTok:期待の星だが

2020年以降、TikTokはアクティブユーザー10億人を突破し、広告予算やインフルエンサーマーケティング計画の定番になり、ソーシャルメディアの期待の星となった。ファンバイツのソウ氏によれば、ユニークなアルゴリズムのおかげで、一般のユーザーにも話題になるチャンスがあり、その結果、クリエイターの定義に変化が起きているという。

TikTokはいわゆるクリエイター・ネクスト(Creator Next)プログラムのもと、チップやギフト、ブランドとクリエイターをつなぐクリエイターマーケットプレイス、2億ドル(約258億円)のクリエイターファンドなど、さまざまな収益化機能を提供している。TikTokによれば、クリエイターファンドは2020年に米国で始まり、2023年までに10億ドル(約1290億円)に到達する成長軌道が描かれているという。

TikTokのクリエイターファンドは利用しやすいとインフルエンサーは口をそろえる。フォロワー数が比較的少ない(フォロワー数1万人以上、30日間の動画再生10万回以上)クリエイターも対象になっているためだ。また、インスタグラムなどのプラットフォームに比べて、TikTokは利用資格が明確であることも評価されている。インフルエンサーたちによれば、インスタグラムはクリエイターファンドの利用方法や参加者の選考方法に関する情報がほとんどないという。ただし、動画の再生回数に応じて支払われる金額については、TikTokはあまり明確でないとクリエイターたちは証言している。

シカゴのインフルエンサー、グロス氏が初めて利用したクリエイターファンドはTikTokだったが、当初、動画をどのように収益化できるかが不明確だったという。何十万回も再生され、報酬30セント(約39円)だった動画もあれば、再生回数はもっと少なく、報酬がはるかに多かった動画もある。1カ月の再生回数が100万回に達しても、100ドル(約1万2900円)程度しか稼ぐことができなかった。1再生当たりの報酬は不明だ。TikTokのウェブサイトによれば、クリエイターファンドの報酬は地域、動画のエンゲージメントなどに基づいて計算されているという。

「大したことではないが、私をそうさせるのには十分だった」。クリエイターファンドに参加した途端、TikTokでのエンゲージメントが低下したため、グロス氏はメタのリール動画を優先するようになった。

TikTokで@iam_alanamarieというアカウントを使い、3万2000人以上のフォロワーを獲得しているダラスのインフルエンサー、アラナ・マリー氏も同様の経験をした。マリー氏によれば、あるTikTok動画が再生回数100万回、別の動画が推定75万回を達成したことがあるという。クリエイターファンドが算出した2つの動画の価値は50ドル(約6400円)だった。

Pinterest:かませ犬か、それとも?

Pinterestは最近、ショッピングやインスピレーションのためのサイトからクリエイターが集まる場所へと、自身の位置付けを変えようとしている。2021年9月には、ゼナシュ・“ゼニー”・シファロー氏がクリエイターインクルージョンリーダーに指名され、誕生したばかりのクリエイターエコシステムの構築を支援することになった。

Pinterestは2021年4月、プラットフォーム初のクリエイターファンドを米国で立ち上げ、参加者に50万ドル(約6460万円)を助成した。過小評価されているコミュニティから新進気鋭のクリエイターが選出された。4月後半、Pinterestはそのクリエイターファンドを強化する計画を発表した。ニュースリリースによれば、現金、広告クレジット、機材という形で、過小評価されているクリエイターに120万ドル(約1億5500万円)を投資すると約束している。今後も四半期ごとに次のサイクルが発表される予定だ。このファンドには5週間のトレーニングとリソース、ブランドパートナーシップの機会、合わせて2万5000ドル(約323万円)の現金、広告クレジット、機材が含まれている。2022年中にブラジルと英国にも拡大する予定だ。

また、同じく米国では2021年10月、クリエイター・リワード(Creator Rewards)プログラムのベータ版が始動しており、2022年中の本格展開を予定している。クリエイターコンテンツおよびパートナーシップ責任者のアレクサンドラ・ニコラジェフ氏は、他のプラットフォームが提供するクリエイターファンドと異なり、Pinterestのリワードプログラムはバイラル性ではなく創造性を重視していると説明する。つまり、閲覧数や「いいね」の数ではなくエンゲージメントを求めているということだ。参加資格はフォロワー1000人以上だ。

ニコラジェフ氏によれば、Pinterestは6カ月間のレジデンシープログラムも用意しており、月額1000ドル(約12万9000円)の報酬を支払っているという。対象はナノクリエイターとマイクロクリエイターだ。

Pinterestで@dailydoseofluxuryというアカウントを使い、2万3000人以上のフォロワーを獲得しているロサンゼルスのインフルエンサー、ジャズミン・クリア氏もレジデンシープログラムの一員で、「毎月5つのコンテンツで4桁の報酬」を受け取っている。クリア氏によれば、Pinterestは透明性が高く、クリエイター体験が充実しているため、プログラムへの参加を迷う余地はなかったという。クリア氏はインスタグラムとTikTokでも活動しているが、ソーシャルメディアに関してはPinterestを優先しているという。

クリア氏はメール取材に対し、次のように述べている。「彼らはほかのプラットフォームで当たり前になった機能を追加している。ただし、ただ流行だから、あるいは、追い付きたいから行うのではなく、プラットフォームの利益になる形で追加している」。

Twitter:遅咲き

Twitterは一度公開したツイートを編集する方法がないため、何年も前から荒らしが横行している。ツイートを編集する選択肢はまだないが、Twitterは独自のやり方でクリエイターに歩み寄っている。

Twitterは2013年、パブリッシャーやクリエイターがプレロール広告で毎月報酬を得られるTwitterアンプリファイ(Twitter Amplify)を発表した。

2021年1月には、ニュースレタープラットフォームのレビュー(Revue)を買収し、クリエイターがツイートに課金する手段を追加した。同社はクリエイターが得た金額の5%をサービス手数料として徴収している。また、ユーザーはスーパーフォロー(Super Follows)というサブスクリプション機能で毎月収入を得ることもできる。購読料は月額2.99ドル、4.99ドル、9.99ドルの3種類だ。

さらに、2021年後半には、チップ機能が公開され、お気に入りのユーザーに投げ銭しやすくなった。Twitter自身はチップの金額に制限を設けていない。しかし、サードパーティの決済プラットフォームを採用しているため、サービス手数料を請求される場合がある。最後に、クリエイターはチケット制のスペース(Spaces)で音声ベースの有料イベントを開催できるようになった。

3カ月間のアクセラレータープログラムであるスペース・スパーク・プログラム(Spaces Spark Program)など、クリエイターファンドやプログラムも用意されている。特典は月額2500ドル(約32万3000円)の報酬、音声イベントを宣伝するための広告クレジット、新製品や新機能への早期アクセス、コミュニティサポート、アプリ内で認知度を高める機会などだ。スペース・スパーク・プログラムの応募資格は、米国を拠点とし、アクティブフォロワー5000人以上、少なくとも週2回のスペース主催を約束することだ。

@gldivittorio(Twitterのフォロワー数は9万7000人超)、@ThePocketReport(同6万6000人超)として知られるブルックリンのインフルエンサー、G・L・ディビトリオ氏はスーパーフォローを試したことがあるが、あまり収入が得られず、実験は短期間で終わった。2021年11月から2022年3月まで、少なくとも40人のスーパーフォロワーが月額2.99ドルを支払っていた。売上は合わせて171ドル(約2万2000円)で、2回に分けて支払われた。

ディビトリオ氏はメール取材に対し、「無料プラットフォームのユーザーがクリエイターにお金を払うことを期待しても、ほとんどの人がそのアプリにお金を出さないのと同じ理由で、うまくいくはずがない」と述べている。「Twitterなどのプラットフォームは私たちのページに広告を掲載している。人々はその広告を見ているのだから、プラットフォームはクリエイターに利益の一部を支払うべきだ」

ディビトリオ氏はコンテンツを収益化できているが、ほとんど間接的なものだという。コンテンツクリエイターとしての収入の大部分は、Patreon(パトレオン)とTikTokの広告から得ている。それでも、ディビトリオ氏は主にTwitterを使用している。コンテンツの自由度が高く、静止画から動画、コピーまで投稿できるためだ。

そのほかのプラットフォーム:

YouTube:YouTubeは長年、特に動画広告による収入で、クリエイターが稼ぐのに最適な場所として知られてきた。クリエイターはクリエイターファンドに頼ることなく、広告コンテンツで稼ぎ、多くのクリエイターがさまざまなソーシャルメディアプラットフォームにプロフィールを掲載するだけでなく、YouTubeでの存在をアピールするようになった。Google傘下のYouTubeは、YouTubeパートナープログラム(YouTube Partner Program)、ファンがクリエイターに投げ銭できるスーパー・チャット(Super Chat)やスーパー・ステッカー(Super Stickers)、チャンネルメンバーシップ、パートナーシップの機会などを提供している。2021年5月には、2022年末までに1億ドル(約129億円)をクリエイターに分配するYouTube ショートファンド(YouTube Shorts Fund)が始動した。

リンクトイン:リンクトインがプラットフォームにおけるクリエイターの意味を考え始めてからまだ1年しかたっていない。ビジネス特化型のネットワーキングサイトであるリンクトインは1年前、ユーザーがクリエイターを自称し、オーディエンスを拡大できるクリエイターモードのプロフィール設定を絶賛してみせた。そして4月、分析機能の強化、新コンテンツの通知、新しいプロフィール動画ツール、特集ニュースレターなど、これまでの取り組みを拡大する計画を発表した。

2021年9月には、米国のクリエイター最大100人に2500万ドル(約32億3000万円)を投資する10週間のクリエイタークセラレータープログラムが発表された。コーチング、製品リソースへのアクセス、LinkedInチャンネルで取り上げられる機会、1万5000ドル(約194万円)の助成金を提供するプログラムだ。

Triller(トリラー):Trillerは2021年秋、クリエイターに教育コンテンツや世界的なブランドとの仕事の機会を提供する招待制のバーチャル会議アセンブリー・フォー・ブラック・クリエイターズ(Assembly for Black Creators)を初開催した。そして、2021年11月、バーチャル会議に参加した300人の黒人クリエイターを対象に、1400万ドル(約18億1000万円)相当の1年契約を締結する計画を発表した。ニュースリリースによれば、300人は毎月2000ドル(約25万8000円)の報酬とTrillerの株式2000ドル分を受け取ることができる。

Snapchat(スナップチャット):2020年後半、Snapはスポットライト(Spotlight)を発表し、TikTokとインスタグラムのリール動画への対応とクリエイターエコノミーへの進出を開始した。Snapのユーザーがお気に入りのクリエイターに同プラットフォームの「クリスタル」を贈ると、クリエイターはそれを換金できるという仕組みだ。また、スポットライトに投稿したコンテンツのパフォーマンスによって収入を得たり、クリエイターマーケットプレイスを通じてブランドとつながったりできる。

クラブハウス(Clubhouse):パンデミックの到来とともに、音声ソーシャルプラットフォーム、クラブハウスは人気の大波に乗った。クリエイターエコノミーの波に乗り遅れないよう、クラブハウスは立ち上げから間もなく、クリエイターに収益化の機会を提供し始めた。2021年4月、最初の収益化機能として投げ銭機能を導入。ユーザーはお気に入りのクリエイターに送金できるようになり、クラブハウスの決済パートナーであるストライプ(Stripe)がカード決済手数料を徴収した後、クリエイターが残りの金額を得られるようになった。そして、2021年5月、クリエイターに毎月の報酬、ブランドパートナーシップの機会、機材、クリエイティブサポートを提供する「クリエイター・ファースト(Creator First)」アクセラレータープログラムが始動した。

[原文:The growing creator economy: Creators divulge the social media platforms that actually earn them money

Kimeko McCoy(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:分島翔平)

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