衣が分厚い沖縄風天ぷらや三枚肉などの沖縄料理がぎゅっと詰め込まれた重箱おかず。
本来はシーミー(清明祭)や旧盆など沖縄の年中行事の際に家族や親戚が大勢集まって食べるものだが、沖縄にご先祖様がいないのでひとりで食べることにした。
重箱おかずを買いに弁当店へ
今回重箱おかずを買い求めたのは宜野湾市にあるこちらの大型弁当店。
朝早くから夜遅くまで営業しており、お弁当をはじめ天ぷらなどの揚げ物、おにぎり、100円沖縄そばなどが並ぶウチナーンチュ(沖縄の人)の胃袋を支えるオアシスのような存在だ。
オードブルや重箱に関しては基本的に注文製造なので本来ならば3日前に予約が必要なのだが、電話で問い合わせしてみたところ翌日の受け取りでも大丈夫とのことだった。ちょうどゴールデンウィーク前後がシーミーのピーク時期なので、多めに食材を仕込んでいるのであろう。注文を忘れがちな私のようなうっかりさんには大変ありがたい。
持ってみると、その名に恥じぬずっしりとした重さの重箱だ。容器は発泡スチロール製で軽いので、ほぼほぼ中身の重量だといえる。
購入の際、お店の人に「これって何人前なんでしょうか?」と質問したところ、「え!?えっと…特に何人前とかはなくて…お供えものなので…」と困惑させてしまった。重箱に関しては何人前、という考え方はしないものらしい。ただ、割り箸が5本ついてきたのでおそらく推定5人前以上はあるということだろうか。
重箱の中身は手前から時計回りに、結び昆布、三枚肉、揚げ豆腐、煮しめごぼう、いももち、魚の天ぷら、そして中心に赤かまぼこ。地味な色合いのおかずに囲まれた紅一点の赤かまぼこが眩しい。
ちなみに重箱おかずは必ず奇数(縁起が良いとされる数字)になっており、おかずの種類は七品もしくは九品、またそれぞれのおかずの数もちゃんと奇数になっている。
さあさあ、さっそくいただこうじゃないか。
なにから食べよう
なにから食べようか迷うがまずは好物の魚てんぷらだ。
見た目では何の天ぷらか分からなかったが、かじると白身魚が顔をのぞかせた。まだほんのりと温かくて美味しい。
沖縄の天ぷらといえばおかずというよりおやつ代わりの位置づけであり、天つゆや塩ではなくウスターソースをつけて食べるのが主流だが、この天ぷらは衣にしっかり味がついておりそのままでもじゅうぶん美味しい。
ただ、ちょっと油断すると重さのせいでぐわんと手首がもっていかれそうになるので片手で持つときには注意しなければならない。
なお、本来であればこの重箱おかずは
移住者である私はこのシーミーという行事には縁がなく、もちろん重箱おかずも食べたことがなかったのだが、ウチナーンチュの友人からシーミー後のご馳走のおすそわけをもらったり、シーミーそのものにお邪魔させてもらったことがある。親戚のみなさんはきっと内心「誰だろう」と思っていただろうが、ほらほら、あなたも遠慮せず食べて食べて!とご馳走を勧めてくれるご家族のやさしさ、懐の深さがありがたかった。
そんなウチナーンチュの真心が詰まった重箱おかずをまるごと食べる。なんと贅沢なことか。
順調に減っていく三枚肉、減らない昆布
さて当然、一気に食べ切れるボリュームではないので数日に分けて食べていくことにしたのだが、如実に食の好みが反映されてしまうことに気がついた。
順調に減りゆく三枚肉と魚天ぷらに対し、減らない結び昆布と揚げ豆腐。
そう、私はこの結び昆布がちょっと苦手なのだ。なるべくバランス良く消化していこうとは思うものの箸が進まない。重箱の底の色に同化して分かりづらいが、これでもか!というほどぎっしりみっちり詰まっている。
苦手な昆布も細く切って混ぜることで違和感なく食べやすくなった。こりゃ良いぞ。
毎日毎食、おやつに夜食にとコツコツ食べ続け、かなり底が見えてきた。昆布はまだ多めだが。
最後はカレーにしてフィニッシュ
様々にアレンジしつつもいいかげん飽きてきたところでそろそろフィナーレへ。
具材は細かく刻んで食べやすく。既に具材に火は通っているので長時間煮込まずさくっと作れるのも嬉しい。
具材の味が染み出してちょっと和風で美味しいカレーに大変身。昆布も違和感なく馴染んでいて、カレールウの包容力たるや。
これならモリモリいけるぞ。カレー万歳!おかわり!!
もう一生分の重箱おかずを食べた気持ち
最後はカレーに助けられ、おかず達が痛んでしまう前になんとか無事食べきることができた。
日数にして4日間。いやはや長い道のりであった。
憧れの重箱おかずをまるごと食べられて大満足ではあったが、次からは友人から少しおすそ分けをもらうだけでいいなと思った。
そして、本来ならば各一品をご先祖様にお供えしなければならないのに、ひとりでまるごと食べてしまったのでご先祖様に怒られないかちょっとだけ心配だ。