DIGIDAYリサーチ: パンデミック後のイベント事業、パブリッシャーはいまだに模索中

DIGIDAY

2023年、パブリッシャーのイベント事業が大きな話題になっている。テックパブリッシャーのベンチャービート(VentureBeat)では、2021年から2022年にかけてのイベント収益が約100%増加した。またリーフ・グループ(Leaf Group)はより規模の大きなイベントスポンサーシップを広告主に売り込もうと全力をあげている。

パブリッシャーとしては、大規模イベントのタイムラインを先送りすることで、より高いコストがかかるイベント・パートナーシップへの投資予算を立てるための時間的猶予を広告主に与えられると話している。つまるところ、この業界は2023年のイベント収益に関して強気の姿勢だということだ。

だが、パンデミックを経て大勢が集まるイベントに対する人々の見方が変わったのに加え、今は景気後退だ。どのパブリッシャーもいまだイベント事業における最適なアプローチを探っている状況なのは明らかである。この結果は、DIGIDAYが112人のパブリッシャー関係者に対して実施した調査結果から分かったことだ。

パブリッシャーはイベント事業の潜在的な増収を見込む

同調査によると、2021年から2023年第1四半期までの2年間は、パンデミック後の状況と同じように、イベント事業に対するパブリッシャーの姿勢も浮き沈みが激しかったようだ。経済情勢を考慮すれば、イベント事業からの収益というものをどのように捉えるかは難しいところである。

2022年を通して、パブリッシャーはイベント事業収益を伸ばしてきた。2022年第1四半期の時点では、収益の「わずかな部分」もしくはそれ以上をイベント事業から得ているパブリッシャーが63%を占め、同年第3四半期にはその割合が71%まで上昇した。そろそろ外出してもよいだろうという人々の気運が高まり、パブリッシャー側もそれを活かして利益を得る準備が整ってきていたのだ。だが、おそらくは景気後退の影響により、2023年第1四半期には57%まで大きく減少した。

2023年第1四半期の調査では、「収益のどの程度をイベント事業から得ているか」という問いに対して、「なし」と答えたパブリッシャーが最も多く(43%)、次に「わずかなもしくは小さな部分」との回答が多い(33%)。

とはいうものの、総じてパブリッシャーがイベント事業を潜在的な増収が見込める分野と捉えていることは確かだ。今回の回答者のうち、2023年第1四半期にわずかでもイベント事業収益があったと答えたのは57%だったが、その一方で67%のパブリッシャーが今後6カ月間にイベント事業の拡大に「わずかな」もしくはそれ以上の注力をしていくと回答している。

イベント事業への注力は浮き沈みがある

もっともその投資規模は、これまでと比較するとかなり小さくなりそうだ。

3分の2のパブリッシャー関係者が、イベント事業構築にわずかなりとも注力をしていくと回答しているわけだが、実際のところ1年前の数字からは低下している。DIGIDAYが2022年第1四半期に行った調査で同様の回答をしたパブリッシャー関係者の割合は71%だった。しかも2022年第3四半期に78%に上昇した後に、2023年第1四半期の67%へと低下しているのである。

さらに、イベント事業の構築に注力すると答えた人の割合は、6カ月前(2022年10月)に急上昇した後、2023年に入ると減少に転じた。2022年第1四半期の調査では、イベント事業構築に「大いに」もしくは「かなり大きな注力をする」と回答したパプリッシャー関係者の割合は29%だったが、2022年第3四半期に40%に大きくはね上がり、その後2023年第1四半期には25%へと急落している。

大手パブリッシャー(2022年度の収益が5000万ドル[約65億円]以上)に限ってみると、パンデミックの余韻が残る2022年初めにみられた盛り上がりは、不確実な経済状況に足を踏み入れるなかで明らかに失速している。2022年第1四半期の調査では、回答した大手パブリッシャー関係者の4分の3(75%)が収益のなかの「わずかな」部分もしくはそれ以上をイベント事業から得ていると答えているが、2023年第1四半期には3分の2(66%)に低下した。

一方、イベント事業からの収益を得ていると回答した大手パブリッシャーのうち、その程度は「わずかな部分」であるとの答えが、2022年第1四半期の17%から2023年第1四半期の27%へと大きく上昇した。同時に、イベント事業からの収益が「中程度」を占めると答えた大手パプリッシャーの割合も、2022年第1四半期の17%から2023年第1四半期の7%にまで落ち込んでいる。

だが大手パブリッシャーは、現在もイベント事業に収益源としての可能性を見込んでいる(この経済状況ならそれもしかたなく、選んでなどいられない)。2023年第1四半期の調査では、大手パブリッシャー関係者のうち71%が、今後6カ月間のイベント事業構築について少なくとも「わずかな注力」、もしくはそれ以上を行うと回答した。

これは2022年第1四半期の75%と比較してやや減少はしたものの、今回の調査で少しでもイベント事業からの収益があると回答した割合の66%をなお上回っており、大手パブリッシャーがイベント事業に関して成長の余地があるとみていることがわかる。

注目すべきは、イベント事業は今後「大きな注力」の対象になると答えた大手パブリッシャーが2022年第1四半期の17%から2023年第1四半期にはわずか2%にまで低下したことだ。ただし、今後はイベント事業収益の拡大に「かなり大きな」力を注ぎたいとの回答が、2022年調査の4%から今回は12%へと急増している点も目を引く。

一方、小規模パブリッシャー(2022年の収益が1000万ドル[約13億円]未満)では、イベント事業に大規模パブリッシャーが考えるほど大きな可能性は感じていないようだ。たとえば、前年度に収益の「わずかな部分」もしくはそれ以上をイベント事業から得たと答えた小規模パブリッシャーの割合は、2022年第1四半期には71%だったが、2023年第1四半期には47%まで減少している。

さらに、イベント事業からの収益が「かなり大きな部分」を占めると回答した小規模パブリッシャーは、2022年第1四半期の調査では10%あったのに対し、2023年は1社もなかった。また、イベント事業からの収益の程度が「大きい」または「中程度」と回答したのは、2022年の22%から2023年は11%に減少した。その一方で、「小さい」と答えたパブリッシャーの割合は6%から14%へと増加している。

そして、小規模パブリッシャーが今後すぐにイベント事業で大きな賭けに出るようなことはないものと思われる。DIGIDAYの調査結果をみると、今後6カ月間にイベント事業構築のために「わずかな注力」もしくはそれ以上をすると答えた小規模パブリッシャーは2022年調査の71%から2023年は64%へと低下している。

とはいえ、イベント事業構築に少なくとも「わずかな注力」をする小規模パブリッシャーが3分の2近いというのは、かなり高い割合だといえる。そしてそのうち、イベント事業に「大きな注力」をすると回答した小規模パブリッシャーがもっとも多く、22%にのぼった(これは2022年から変動していない)。

一方、今後6カ月間にイベント事業に「中程度の注力」をすると答えた小規模パブリッシャーは、2022年第1四半期の22%から下がって2023年第1四半期は14%だった。また、「少しの注力」をすると回答した割合は2022年の6%から2023年の11%へと少し増加している。

[原文:Digiday+ Research deep dive: Publishers are still piecing together the events puzzle post-pandemic

Julia Tabisz(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)

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