オウム同士でビデオ通話させることを教えると、オウムはビデオ通話を要求するようになり、通話相手のオウムからスキルを習得したり、オウム自身の幸福度の向上にもつながることが、最新の研究により明らかにありました。
Researchers Taught Parrots to Video Call Other Parrots
https://news.northeastern.edu/2023/04/21/parrots-talking-video-calls/
ノースイースタン大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)、グラスゴー大学の研究者が、ペットのオウムに「タブレットやスマートフォンを使ってビデオ通話することを教える」という研究を行いました。研究の結果、ビデオ通話がオウムにとってのコミュニケーションに役立ち、幸福度を改善することにもつながる可能性が示唆されています。
ノースイースタン大学のレベッカ・クラインバーガー准教授、オウムの行動学を研究するジェニファー・クーニャ氏、グラスゴー大学のイリアナ・ハースキーダグラス准教授らからなる研究チームは、さまざまな種類のオウムとその飼い主を募り、タブレットやスマートフォンを使ってMessengerでオウム同士でビデオ通話させるという実験を行いました。
実験に参加したのは18羽のオウムで、飼い主は最初に「ビデオ通話をしたい場合はベルを鳴らす」ということをオウムに教えます。さらに、スマートフォンやタブレットの使用方法も教えていますが、これらの学習に報酬としてエサを与えることはなかったそうです。そして、オウムがベルを鳴らすと、飼い主はオウムにタブレットのホーム画面を見せ、通話できる相手(オウム)の写真を見せ、オウムに通話相手を選ばせたそうです。
実験では3時間にわたるトレーニング時間を設け、オウムがくちばしを使ってタブレットの画面をタップすることで、最大5分のビデオ通話を行えるようにしました。飼い主はオウムに攻撃などの兆候が見られた場合、すぐに通話を切るよう指示を受けています。このトレーニングに挑戦したオウム18羽のうち、15羽がビデオ通話に成功しましたが、3羽は実験から離脱することとなっています。
オウムにビデオ通話の方法を学習させたのち、研究チームは3カ月にわたりオウムたちの様子を追跡調査しました。すると、ビデオ通話の機会を与えられたオウムたちは、定期的にビデオ通話を要求するようになったそうです。研究に参加したクラインバーガー准教授は、「オウムたちがビデオ通話を経験することで、いくつかの強力な社会的ダイナミクスが現れ始めました」と語っています。
ビデオ通話中、オウムは通話相手のオウムがいることを明確に理解しているようで、自由に鳴き声を発したそうです。また、飼い主はオウムにとってビデオ通話が圧倒的に肯定的な経験であると報告しています。実験に参加した何人かの飼い主は、「ペットのオウムがビデオ通話相手のオウムから採餌・鳴き声・飛行などに関する新しいスキルを学ぶ様子を見た」と報告。別の飼い主は、「オウムが通話によって生き返った」とまで報告しています。
研究調査に参加した専門家のクーニャ氏は、自身のペットであるエリーという名のオウムが遠く離れた土地で暮らすクッキーという名前のオウムとすぐに仲良しになったと語っています。クーニャ氏によると、エリーはクッキーと友達になって1年以上経つそうですが、いまだにビデオ通話を通じた交流を行っているそうです。
クラインバーガー准教授によると、ペットのオウムが使用する発声の種類は野生の鳥が行う「呼び出し・応答の発声」の性質を反映しているとのこと。つまり、オウムたちはビデオ通話で「こんにちは!」などのコミュニケーションを適切に行っていると、研究グループは主張しているわけです。
以下の動画は実際に実験に参加したオウムたちがビデオ通話を行っている様子を撮影したもの。
Ellie the Parrot – YouTube
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研究チームによると、ビデオ通話で最も人気のオウム、つまり最も頻繁に通話相手として指定されたオウムは、最も多くの鳴き声を発するオウムであったそうです。そのため、研究チームはオウムにも人間社会によく似た相互作用のダイナミクスが存在すると示唆しています。
また、オウム同士のビデオ通話において人間の飼い主も大きな役割を果たしたそうで、一部のオウムは人間の反応を注意深く楽しんでおり、ビデオ通話の相手として画面に映り込む人間に愛着を持つオウムもいたそうです。
クラインバーガー准教授は「オウムの飼い主がZoom通話をすると、すぐにオウム同士が仲良くなるということだと思い違いすべきではありません」と言及。今回実験に参加したのはオウムの反応を注意深く監視しながら物事をトレーニングすることができる熟練の飼い主であったとして、一般人がペットのオウムに同じようにビデオ通話の方法を教え込もうとしても、タブレットの画面を粉々に砕いてしまう可能性があると警告しました。
それでも今回の研究結果はビデオ通話がペットのオウムの生活の質を改善することに役立つことを示唆しています。クラインバーガー准教授は「オウムがペットとして飼われるようになってから、まだ1、2世代しか経っていないため、オウムは犬や猫、馬のように飼いならされているとは言えません」と言及。さらに、ビデオ通話で幸福度を向上させられるとしても、「野生で暮らしている時と同じくらい幸せになれるというわけでもありません」とも述べています。
ただし、オウムのいくつかの種では精神面に起因する病気がまん延しているそうで、ビデオ通話はそういった精神病の改善に役立つ可能性があります。
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