問われる大学の質:新卒一括採用が廃れてくる中での存在意義は?

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日経ビジネスが「崖っぷち大学 再生へ立ち上がる経済人」という特集を組んでいます。やや唐突感がある特集で「なぜ今、大学なのだろう」と思った方も多いかもしれません。私は大学教育についてはずいぶん前から高い興味があり、このブログでも時折、意見させて頂いています。ただ、意見しているだけでは遠吠えにしかならないし、日本独特の「おたく、教育関係者、じゃないですよね…」という人を区別する見方、考え方に辟易としているので今後、ちょっとそちらの方に踏み込むかもしれません。

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それはさておき、日本に大学がいくつあるのか、と言えば2022年で807校あるかと思います。2000年が649校だったので22年で24%増の158校も増えています。一方、学生数は2000年の274万人から293万人ですので7%しか増えていません。国立大学は減っているので公立と私立が大きく増えたわけです。

この学生数、今から20年後を想像してみましょう。出生者数が80万人、大学進学率が50%、4年制なので4倍すると160万人しか学生はいなくなります。つまり、ざっくり今の半分です。但し、実際にはその計算通りにならない可能性はあります。因子は2つ。1つは大学進学率が今の50%から7割以上に上がる公算です。特に女子の比率が大きく伸びるとみています。その背景には女子の社会進出と短大の消滅方向です。短大進学率は94年が13.2%だったのに2019年で4.4%、この傾向は更に続くとみています。

もう一つが留学生です。東南アジア諸国からの留学生をがっつり呼び込む、これが大学の経営戦略的に大きな比重を占めてくると思います。但し、日経ビジネスにも指摘があったのですが、到底大学の授業を理解できると思われない日本語能力の学生で溢れている一部の大学は明らかに文科省の補助金狙いとされており、私から見れば悪質で排除すべき経営体制だと思います。

留学生に「Youは何しに日本の大学へ」と聞けばレジメの学歴欄に書くためだけではないかと思うのです。ご承知の通り、北米の大学に外国人が入学するには一定の英語能力が必要で試験結果のレベルで入学資格が得られる大学が決まってきます。日本も日本語能力試験という立派な試験制度が1984年からあるのになぜ、それを要件としないのか、不思議なのです。

もちろん日本の大学で英語の授業でもいいですが正直、英語で教鞭をとれる日本人の先生は非常に限られています。また、私が過去2年間、UBCの日本研究のオンライン講座を10数回取った限りでは日本の先生は賢いし、良い意見も言うのですが、英語が下手なのです。下手というのは通じるし、文法もいいのですが、プレゼンテーション能力が極めて劣っていて、自己主張を早口でまくしたてたり、まるで抑揚のない棒読みのような発言をする方など正直言って聞き手に印象を与えないケースが多かったのです。

さて、大学経営です。私が見る限り、多くの大学は一般企業と同じ、儲けることを主眼としている節が見て取れます。また、教育者は聞こえがいいですし、〇〇大学の理事長なんていうとそのあたりの企業の社長さんとは別格の雰囲気になったりします。多くの方は大学経営の組織を理解されていないと思うのですが、理事長は経営者で寄付金や文科省の補助金などを扱い、学長が教育のトップです。どちらが偉いかと言えば一般には理事長です。

もしも私が大学を作るなら落第生が5割出ても驚かない大学にします。その大学の卒業証書をもらったら真の意味で社会に役立つ学生を養成します。但し、日本の社会では落第=失敗者という烙印を押されるのでその救いの道として大学に併設して技能養成専門学校を作り、2年目が終了した時点で落第生はそちらに転籍し、役に立つ技能を身につけ卒業するというルートを作ります。卒業の証には「お前、総合科卒なの?おれ、専門科だよー」という会話になることが想定できるでしょう。

大学を卒業して40年も経った今だから思うのですが、大学で学んだことはとても抽象的でありながらも社会活動をするうえでの基礎だったと思うのです。私はそれに気がつき、基礎を応用しながら自分の社会人としての生活に役立てることが出来ました。多分、多くの人はそれに気がつかないと思うし、大学時代に勉強した記憶すらない人が多かったりするのでしょう。

日本の某大学で国際、グローバルを学ぶ学科が4月に新規開校になったのでその責任者とよく話をしています。初期チームに幼児英語教育がバックグランドの方が入っているので「なぜですか?」と聞けば「今の大学生なんてそのレベルの英語しかできないということですよ」とあっさり言われたのに驚きを隠せませんでした。

その点、5割が落第する大学は真の強さを育む大学になると強く思った次第です。日本もそのうち新入社員一括採用は廃れてくるとみています。外国人社員も増えてくる中で新たな競争社会が必ず復活してくると思います。それに備えるには今から準備をしないと間に合わないとも言えないでしょうか?

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年4月23日の記事より転載させていただきました。

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