暗雲漂う株式市場の行方

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株式投資をしている方は気が気ではないでしょう。私もその一人ですが、パフォーマンスは維持しています。長くお読みの方はご存知かと思いますが、私のポートフォリオが鉄鉱石、原油、金、ガスなど資源関係に強くシフトしておりハイテク株を一株も持っていない強みなのかもしれません。

市場で何が起きているのか、私なりの理解を説明します。今回の疑心暗鬼は以下のような理由によるところと考えています。

① アメリカの利上げがより早く、そして回数ももっと増えるのではないか
② インフレが止まらない
③ 原油価格が高すぎる
④ ウクライナ情勢は極めて緊迫
⑤ ポストコロナの消費者や労働者の行動心理が読めない
⑥ 中国経済の不振
⑦ 日本独自の問題として東証再編失望感、岸田政権の海外での低評価で外からマネー入らず

こんなところだと思います。一つずつ説明すると長くなるので気になる点だけフォローします。

①の利上げ不安ですが、これがナスダック市場やミーム銘柄を恐怖のどん底に陥れているといえます。そもそもハイテク業界からは聞こえる今年の目玉材料はメタバースなのですが、またビジネスとして立ち上がらないせいか、メタ(フェイスブック)の株価もさえません。そんな中、明らかに買われ過ぎたハイテク株の化けの皮がはがれつつあるということかと思います。

私が気にしてみているのはキャシーウッド氏の巨艦ファンド、ARKの行方です。キャシーは女性版ウォーレンバフェットともてはやされたのですが、今やその運用成績はボロボロで資金流出が止まらなくなっています。ETFなので倒産はしませんが、償還(清算)はあり得るのかもしれません。そうなればナスダック市場は大きな失望を誘うでしょう。

ETFは投信と違い、人気が出て流入資金が増えれば投資先がなくても否が応でも運用する縛りがあります。キャシーに資金が集まり始めたのは既にハイテク株が8合目から9合目だった2020年です。そもそも彼女がスタートしたのは16年で当初の運用資産はわずか12億円程度だったのにピークの21年2月は3.2兆円となり運用のレベルがまるで変ったのです。私はARKの不振はETFの仕組みと群がるマネー、それにコロナという複合要因であると思っています。彼女は今や夜も眠れないでしょう。いやそれ以上にARKに投資している人たちは厳しいと思います。

②のインフレ懸念ですが、これは③の原油高にリンクするところもあります。それ以外に半導体から食糧まで押しなべて高騰しています。さらに追い打ちをかけたのが「ゴールドマンサックスショック」ともいえる同社の決算発表の内容の悪さでした。その理由を同社CEOが「Wage Inflation(賃金インフレ)」と述べ、同業のJPモルガンは「人材獲得競争に勝利するため、必要なだけの資金を投じる用意がある」と述べています。つまり企業収益が悪化してでも優秀な人材の獲得競争を行わざるを得ない理不尽さと生き残り競争が展開されているのです。

④のウクライナ情勢はアメリカのサキ報道官が「いつ何が起きてもおかしくない」と述べている通りギリギリの情勢にあります。政治的決着には程遠いとされプーチンが押し、バイデンが土俵際にある状態です。地政学的不安は資源と金に資金がシフトします。今回は安全通貨のドルにはシフトしないように見えます。この行方はあと数週間のうちには新展開入りするはずで、固唾を飲んで見守るしかないといえます。

⑦の日本独自の問題ですが、4月4日からスタートする東証の新制度、特にプライム市場に対する批判と不評が外国人投資家から強いように感じます。そもそも「東証第一部」という日本を代表する銘柄群は知名度だけではなくコーポレートガバナンスを含めた投資安全度の高さを示すブランド群であるべきでした。それが投資家がもっとも重視する指標なのです。しかし、東芝やみずほ、三菱電機など日本を代表する企業においてガバナンス問題を抱えています。その上東証一部上場企業を「ふるいにかけた」のに「ふるいからほとんど落ちなかった」ことが問題なのです。

新規上場や上場廃止基準も甘いとされます。また、私は北米で投資をしていると結構な頻度で「HALT(売買停止)」が起きます。特定銘柄に大きなニュースがあった場合、投資家への情報周知がなされるまで売買停止が発せられるのです。日本でもありますが、それはよほどのニュースでないとありません。その点からすると東証の管理体制そのものが国際スタンダードとかけ離れている気はします。

年初に今年はよいニュースがないので気をつけよう、と申し上げました。また乱高下しやすいとも予想しています。今回の下げがどのくらいの深さになるか、まだ判断はつきませんが、3月のFOMCまでは弱気トレンドになり、その間に世界でどんなニュースが飛び出すか次第で基調変化が起きるのではないかと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年1月20日の記事より転載させていただきました。

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