新しいPCの購入を検討する際、ゲームを遊べるものを求める傾向は強くなっているように思う。さらに、せっかくなら仕事や学業などにも使えて、動画や写真編集などの趣味でも使えたら良いな、あわよくばゲーム実況配信やVTuberデビューも……などと夢を膨らませている人も多いのでは。要するにゲームも含めて1台で全部できるPCが欲しいというわけだ。そんなときにはゲーミングPC、その中でも特にゲーミングノートPCがもっとも有力な候補となる。
今回はその理由も含めて、ゲーミングPCのメリットやオススメのPCスタイル、買い換えのタイミングなどを紹介する。2023年の春は、注目ポイントが出揃った買い時タイミングでもあるので、ゲーミングPC選びの参考にしていただきたい。
ゲーミングPCってどういうPC? 家庭用ゲーム機と何が違うの?
PCと一口に言ってもさまざまな機能、性能のものがあり、同じゲームをプレイしても、映像がカクカクするPC、操作に応じてなめらかに動くPC、ビジュアルが荒いPC、繊細で美しいPCなど、さまざま。ゲーミングPCはゲームがなめらかで美しく動作するように高性能パーツを組み合わせて作られている。
そのゲーミングPCのスタイルはPCデスク回りなどに据え置きで使う“デスクトップ”タイプと、持ち運びが可能な“ノート”タイプに二分される(2タイプの違いは後述)。
ゲーミングPCは付属のキーボードやマウスもゲーマー向けの仕様になっていることが多い。これはデスクトップPCでもノートPCでも同様だ。さらに、デスクトップPCでは自分のプレイスタイルに合わせて市販のゲーミングキーボードやマウスに交換できる。ノートPCの場合ノートPC本体に備え付けのキーボードは交換はできないが、市販のゲーミングキーボード、マウスをつなぐことができる。
家庭用ゲーム機との違いについて。まず挙げられるのは入力デバイスだろう。専用コントローラでの操作が基本となり、入力デバイスの選択肢はPCよりずっと狭くなる。家庭用ゲーム機用のマウスやキーボードも存在しているが、ゲーム側が対応していなかったり、規約上禁止されていたり、ユーザーコミュニティに使用に対する強い反発があったりする場合も。
また、PS5など高画質&なめらかな描画が可能な“ハイスペックなゲーム機”も登場しているが、それでも“ゲームプレイのための最高性能、最先端機能”という点ではハイスペックのPCのほうがかなり上をゆく。ただ、誰もが同じ環境ですぐにゲームを楽しめる“手軽さ”はゲーム機ならではだろう。
ゲーミングPCにあって、家庭用ゲーム機にないのは圧倒的な“汎用性”だ。最近のゲーム機は多機能化しているが、ゲームのほかはコンテンツ視聴が中心。一方、ゲーミングPCはゲーミングと銘打っているが、PCならではの汎用性を失っていない。デバイスやアプリの導入によって、さまざまなコンテンツ視聴やZoomといったWeb会議サービスによる学習や打ち合わせ、オフィス系アプリを使ったリモートワークを軽々こなすことができる。さらに、ゲーミングPCは基本スペックが高いため、動画編集などのクリエイティブワークも快適。動画のライブ配信や投稿などにもチャレンジしやすい。PCのほうが汎用性はずっと上だ。
本体の価格で言えば家庭用ゲーム機に軍配だ。大型で高性能なPS5は4万円台、Xbox Series Sは3万円台、携帯型のSwitchなら2万円台から購入できる。一方ゲーミングPCは安いデスクトップ型でもフルセットで10万円切るのは難しい。しかし、前述した通り汎用性の高さはゲーム機を上回り、以前は家庭用ゲーム機専用タイトルも多かったが、現在はPC版が出るケースも非常に増えている(ゲーム機版から発売に時間がかかることはあるが)。ゲームを始めるまでゲーム機よりも手間はかかるが、さまざまな楽しみ方、使い方ができるのがゲーミングPCの魅力と言える。
家庭用ゲーム機 | ゲーミングPC | |
導入コスト | 〇 2万円前後~6万円前後 | △ 10万円前後~(仕様しだい) |
ゲームの種類 | 〇 機種ごとのリリースされているタイトルが異なる | ◎ 基本的にPC用ならば機種を問わず利用可(ただし、低スペックのPCでは満足に動作しないことも) |
ゲームの“映像美” | △~〇 携帯機はイマイチ、大型機は高レベル | △~◎ (PC予算しだい) |
ゲームの“フレームレート” | ×~〇 120fpsなどの高fpsで動作するタイトルは一部のみ。携帯機では上限30fps | △~◎ ~240fps以上(PCのスペックしだい) |
携帯性 | ×(大型機)/◎(携帯機) | ×(デスクトップ)/〇(ノート) |
拡張性 | △ ごく限定的 | ◎(デスクトップ)/〇(ノート) |
配信のしやすさ | 〇 始めやすいが配信機能はシンプル | ◎ 規模や品質は自由自在 |
ゲーム以外の用途 | △ ごく限定的 | ◎ |
どんな人向き? | ゲームのための環境を一発で揃えたい、ゲームを気軽に遊びたい | ゲームはもちろんほかの用途にも使いたい、ゲームのための性能を重視、拡張性・カスタマイズ性も確保したい |
ゲーミングPCは「ノート」と「デスクトップ」どっちがよいの?
ゲーミングPCには「デスクトップPC」と「ノートPC」が存在するが、どちらがよいのかは一長一短だ。
デスクトップPC | ノートPC | |
導入コスト | 〇~△ 本体以外にモニターが必要 | ◎ |
ゲームでの“最高性能” | ◎ | 〇 |
省電力性 | △ | 〇~◎ |
携帯性 | × | ◎ |
拡張性:ビデオカード | 〇 | × |
拡張性:メモリ | ◎多くの機種で交換、増設可能 | 〇一部の機種で交換、増設可能(MSIのノートPCは公認サポート店にて増設可能)。ただし、メモリスロットはデスクトップより少ない |
拡張性:ストレージ | 〇 SSD/HDDなど自由度高 | △ 一部機種で内蔵の交換・増設に対応 |
拡張性:外付け周辺機器 | ◎ | ◎ |
キーボード/ポインティングデバイス | 別売り or セット | 内蔵(マウスは別売りが多い) |
モニター | 別売り or セット(増設可) | 内蔵(増設可) |
どんな人向き? | 最高の性能が欲しい、携帯性は不要、より自由にカスタマイズしてPCを楽しみたい | 高い性能のPCをいろんなところで使いたい、用事や気分に応じてPCの使用場所を気軽に移動したい、コストパフォーマンスを考慮しつつ環境をまとめて揃えたい、ハードの拡張はUSB中心でOK |
デスクトップPCは、拡張性が高く、ストレージやメモリを追加しやすいのに加え、CPUやビデオカードを交換して長く使えるなど、拡張性の自由度が非常に高い。“絶対性能”という点では、サイズに余裕がある大型のデスクトップPCが有利。ただし、性能は予算しだいの面がある。スペックをうまく調整してあげれば「予算に見合う性能のゲーミングPC」をゲットすることも可能。細かくスペックを決めたいなら“PC自作”という方向性もアリだろう。
その一方で、選択肢が豊富というメリットはあるが、セットモデルでない限りは、キーボード、マウス、モニターといったの必須デバイスを別途揃える必要がある点はお忘れなく。ゲーミングPCに仕上げる以上は、ゲーミングPCにふさわしい、ゲーミングキーボード、ゲーミングマウスを選びたいし、“ゲーミングモニター”と呼ばれる、反応速度が速く描画がなめらかな高性能モニターを用意したい。つまり、快適なゲーミング環境を整えるには、PC本体以外にもプラスの予算と手間が必要になるのだ。
性能重視でPCを選びたい、設置場所は固定でスペースも確保できている、手間をかけてカスタムすることも大歓迎、という人には、デスクトップタイプのゲーミングPCはオススメ。BTOやPC自作などで、こだわりの1台を選ぶのも楽しいだろう。
一方、ゲーミングノートPCは、ゲーミングマウスこそ別途用意する必要はあることが多いものの、ゲーミング仕様のモニター、ゲーミング向きのキーボード、基本的な操作に必要なトラックパッドなどのポインティングデバイスが標準で備わっている。つまり、ゲーミングPCとして必要な装備が最初からほとんど整っているのが最大のメリット。
また、設置が苦ではないサイズのコンパクトさ、バッテリ駆動も可能で持ち運べる、という携帯性やフットワークの軽さという強みを活かして、仕事や学業との併用もしやすいのもアドバンテージ。さらに、最高性能こそ大型でマシンパワーをガンガン発揮できる(=消費電力も多い)デスクトップPCに譲るものの、ゲーミングノートPCもハイレベルなゲーム(映像がとんでもなく美麗、シビアな射撃精度や高いアクション性、など)を問題なくプレイできるだけの高い性能を持っている。つまり、ゲーム以外の用途でもラクラクこなせる、ということになる。ゲーム専用機にはない“いろいろな用途に大活躍できる汎用性”という特徴は、ゲーミングノートPCにも十分以上に当てはまるのだ。
性能は確保したいがコストパフォーマンスも重要、自宅の決まった位置だけでなくいろいろな場所でPCを使いたい、ゲーム以外の用途にも使いたいけど家庭用ゲーム機のように気軽に使い始めたい、ということであれば、ゲームを筆頭にさまざまな用途に活躍できる高い性能を持ち、かつ携帯性も確保されていてオールインワンですぐに使えるゲーミングノートPCは、心強いパートナーとなり得る。
ゲーミングノートPCの“パフォーマンス”ってどうなの?
性能面も最上級を目指すなら放熱や電力供給の制約が少ないデスクトップPCのほうが上にはなるのだが、最新ノートPCの性能は着実に向上している。特に、ゲームという重い処理を快適にこなせるゲーミングノートPCの実力はハイレベルで、そのパフォーマンスは旧世代のデスクトップPCを凌駕する。ここではMSIのゲーミングノート3製品を例にスペックを紹介しよう。
製品名 | Thin GF63 12Vシリーズ (Thin-GF63-12VE-069JP) |
Cyborg 15 A12Vシリーズ (Cyborg-15-A12VF-859JP) |
Katana 17 B12Vシリーズ (Katana-17-B12VFK-038JP) |
CPU | Core i7-12650H [10コア(Pコア6+Eコア4)16スレッド] |
Core i7-12650H [10コア(Pコア6+Eコア4)16スレッド] |
Core i7-12650H [10コア(Pコア6+Eコア4)16スレッド] |
メモリ | DDR4 16GB(8GB×2) | DDR5 16GB(8GB×2) | DDR5 16GB(8GB×2) |
GPU | NVIDIA GeForce RTX 4050 Laptop GPU |
NVIDIA GeForce RTX 4060 Laptop GPU |
NVIDIA GeForce RTX 4060 Laptop GPU |
SSD | 512GB(NVMe SSD) | 512GB(NVMe SSD) | 1TB(NVMe SSD) |
電源 | ACアダプタ 120W | ACアダプタ 120W | ACアダプタ 200W |
OS | Windows 11 Home | Windows 11 Home | Windows 11 Home |
ディスプレイ | 15.6型フルHD/144Hz | 15.6型フルHD/144Hz | 17.3型フルHD/144Hz |
サイズ (幅×奥行き×高さ) |
359×254×21.7mm | 359.36×250.34×21.95~22.8mm | 398×273×25.2mm |
重量 | 1.86kg | 1.98kg | 2.6kg |
参考価格 ※4月10日現在 |
16万9,800円 | 20万6,800円 | 22万4,800円 |
まず、PCの処理性能の核となるCPU。今回ピックアップした3製品は、すべて10コア20スレッドとメニーコアのCPU「Core i7-12650H」を搭載。コアの数だけ見ると、すでに1世代前のデスクトップ用CPUを超えている。また、メモリも16GBとゲームプレイに十分な容量が確保されている。
さらに、ゲーミングPCの心臓部と言えるGPUにはNVIDIA最新のRTX 40シリーズが採用されている。ゲームのフレームレートを高め、高画質設定でもスムーズなプレイを実現するには最高のGPUだ。Cyborg 15 A12VとKatana 17 B12Vは同じCPUとGPUを搭載しているが、本体サイズにゆとりがあってより性能を出しやすいKatana 17 B12Vのほうがパフォーマンスは頭一つ上になる。
モニターは解像度こそフルHDと一般的だが、すべてリフレッシュレートは144Hzと一般的なモニターの60Hzよりも高くなっている。“リフレッシュレート 60Hz”とは“1秒間に60コマ、画面表示を描き換えられる”ということを意味し、“144Hz”になると、これが2.4倍の144コマになる。1秒間に描画できるコマ数が増えれば増えるほど、ゲームの動きはなめらかになっていくので、たとえば、プレイ中に敵の動きが把握しやすくなったり、大きく振り向いた際でも見やすくなったりと、ゲームプレイのクオリティがぐっと高まるのだ。ゲーマーが高リフレッシュレートモニターを求めるのはその効果が非常に高いためで、“リフレッシュレート144Hz以上のモニター”は、ゲーミングPCには必須に近い装備と言われている。
なお、“ゲーム中に1秒間に何コマ描き換えられるか”の指標にはもう一つ、“フレームレート”という数値がある。リフレッシュレートがモニターが描き換えられる回数なのに対し、フレームレートはPC/ゲーム側が何回画面を描けるかを示すもので、ゲームのグラフィックスの複雑さとGPUの性能によって大きく変わってくる。たとえば、リフレッシュレートが144Hzであっても、GPU性能が低くフレームレートが低いままであれば、高いリフレッシュレートは活かせないことになる。
今回ピックアップしたMSIのノートPCは、GPU性能も十分に高い。フルHD解像度であれば、多くのゲームで十分なフレームレートを得ることが可能。リフレッシュレート 144Hzの効果を享受できるシーンは多いはずだ。
ベンチマークテストでその性能を具体的にチェック
このように、最新のゲーミングノートPCは最初からゲームを快適に楽しむための性能や機能が揃っており、20万円前後のゲーミングノートPCであれば、チョイ古デスクトップPC、具体的には2017年ぐらいの人気パーツで構成された「Windows 11がギリギリインストールできる世代」の“チョイ古”デスクトップPCを上回ってくる。実際に上記で紹介した3モデルと性能を比較してみよう。
今回用意したデスクトップPCのスペックは以下の通りだ。
CPU | Intel Core i5-8600K(6コア6スレッド) |
マザーボード | MSI MPG Z390 GAMING PLUS(Intel Z390) |
メモリ | DDR4-2666メモリ 32GB(PC4-21300 DDR4 SDRAM 16GB×2) |
ビデオカード | NVIDIA GeForce GTX 1060搭載カード |
SSD | 2.5インチ SSD 1TB(Serial ATA 3.0、1TB) |
OS | Windows 11 |
Core i5-8600KとGeForce GTX 1060は2017年にミドルレンジ構成として人気だった組み合わせ。特にGTX 1060搭載カードは価格の性能のバランスがよく大ヒットした。
まずはWebブラウジングや表計算、写真編集などを実行してPCの基本性能を測定する「PCMark 10」から見ていこう。
今回の3モデルとも旧世代のデスクトップPCよりも大きくスコアを伸ばしている。一般的な用途であっても、現在のゲーミングノートのほうがずっと快適というわけだ。
次は3D性能を測定する定番ベンチマークの「3DMark」を試そう。DirectX 11ベースの「Fire Strike」、DirectX 12ベースの「Time Spy」、リアルな光の処理をシミュレーションして映像表現に活かす“レイトレーシング”という技術を取り入れたゲームにおける性能を見る「Port Royal」を実行した。
すべてのテストで旧世代のデスクトップPCを大きく上回った。特にPort Royalに関してはGTX 1060はレイトレーシング専用の処理回路を備えていないため、かろうじて動くというレベル。レイトレーシング専用の処理回路を持つRTX 40シリーズとは大きな差が出ている。リアルな光の反射を実現するレイトレーシング対応ゲームを快適にプレイしたければ、最新のGPUを搭載した環境が必要だ。
また、MSI Katana 17 B12Vのスコアが同じスペックのMSI Cyborg 15 A12Vよりも高いのはCPUとGPUに対する電力の供給量が異なるため。17.3型の大画面液晶を採用し、サイズが大きいMSI Katana 17 B12Vは放熱にも余裕があり、ほかの2モデルよりもCPUとGPUに大きな電力を回すことが可能になっている。それがスコア差として出ているわけだ。
一口に“ゲーミングノートPC”と言っても、製品設計の味付けの違いでこのようなテスト結果の差が生じる。製品選びの際には参考にしてみていただきたい。
続いて、人気のFPSゲーム「Apex Legends」を試してみよう。トレーニングモードの一定コースを移動した際のフレームレートを「FrameView」で測定している。
ゲームが快適にプレイできる目安が「60fps」だ。これは多くのディスプレイのリフレッシュレートが60Hz(=60fps)であるため。144Hzのリフレッシュレートを活かすには144fps以上が必要になる。最高画質に設定すると旧世代のデスクトップPCでは平均60fpsにギリギリ到達できない。その点、ゲーミングノートは3モデルとも60fpsを超え、MSI Katana 17 B12Vは特に高いフレームレートを出している。
ゲーミングノートPCの搭載モニターはリフレッシュレートが144Hz。少しゲームの画質設定を下げて、平均フレームレート144fpsが出せるようにすれば、十分に活かし切れる。高リフレッシュレート&高フレームレートによるスムーズな描画を対戦プレイでの勝率アップに活かしてみたいところだ。
続いて、描画負荷がPCゲームの中でも特に重い「サイバーパンク2077」を実行する。ゲーム内のベンチマーク実行中のフレームレートを「FrameView」で測定した。このゲームは、映像表現は非常にハイレベルなのだがその分描画が大変“重い”ことでも知られている。そのため、「DLSS」という描画負荷軽減技術(フレームレートを向上させる技術)が導入されているのだが、RTX 40シリーズだけで利用できるの最新モデル「DLSS 3」にも対応している。
3台のノートPCはRTX 40シリーズのGPUを搭載しているため、もっとも効果の高いDLSS 3が利用できるが、旧世代のデスクトップPCのGTX 1060はDLSSを利用できず、最新技術への対応という点でも古いビデオカードは弱くなってしまう典型例と言ってよい。ゲーミングノートに関してはDLSS 3を有効、無効にした場合の両方のフレームレートを掲載する。
高画質設定では旧世代のデスクトップPCは平均28fpsと快適なプレイは難しい。その一方で、DLSS 3が利用できるゲーミングノートの3モデルはすべて平均100fps以上を達成。最小も60fpsを超えており、非常に快適なプレイが可能だ。
サイバーパンク2077は、光と影の表現がよりリアルになるレイトレーシングにも対応している。レイトレーシングを有効にした高画質設定の「レイトレーシング:ウルトラ」という設定でのテストも行なってみた。これは本当に重い!
旧世代のデスクトップPCのGTX 1060はレイトレーシングを有効にできないため、そもそもフレームレートの測定ができない。この辺りも旧世代がキツイところだ。ゲーミングノートの3モデルはレイトレーシングを有効にするとさすがに描画負荷はさらに高くなるが、それでもDLSS 3を利用すれば平均60fps以上を達成できる。AAA級のゲームを最高画質で楽しめる性能を持っていると言ってよいだろう。
同じくレイトレーシングやDLSS 3に対応する「ホグワーツ・レガシー」も試してみよう。DLSSの有効/無効、レイトレーシングの有効/無効のそれぞれ測定している。寮の中の一定コースを移動した際のフレームレートを「FrameView」で測定した。
サイバーパンク2077と同じ傾向だ。旧世代のデスクトップPCではレイトレーシングを使わなくても平均60fpsには届かない。このゲームはGTX 1060でもレイトレーシングを有効にできるが、あくまでも“動くだけ”で、まともにプレイできる状態にはならない。
一方、ゲーミングノートPCはレイトレーシングを使わない状況なら高画質設定でもDLSS 3頼らず平均60fps以上を達成。DLSSを使えば、144Hzのリフレッシュレートを活かしたなめらかな描画を堪能できる。レイトレーシングを有効にすると描画負荷は増加するが、それでもDLSSを使えば、3モデルとも平均60fpsを超える。リアルの光の反射を加えた美麗なグラフィックスで快適にプレイできるのはうれしいところだ。
最後に消費電力をチェックしておこう。OS起動10分後のアイドル時と、サイバーパンク2077実行時の最大値を測定した。電力計にはラトックシステムの「REX-BTWATTCH1」を使用している。
旧世代のデスクトップPCに比べて高性能にもかかわらず消費電力では3モデルとも低くなっている。しかも、デスクトップPCは本体だけで、実際にはこれに液晶モニターの消費電力が上乗せされる。ゲーミングノートはディスプレイの消費電力も含まれているので、総合的なワットパフォーマンス(消費電力あたりのPC性能)でも大きく上回っていることになる。旧世代のデスクトップPCから最新ゲーミングノートに乗り換えることで、ディスプレイも含めたゲーミング環境が整い、基本性能はすべて向上、しかも消費電力はダウンで省エネ、とよいことずくめである。
ちょっと古めのデスクトップPCをベースに快適なゲーミング環境を整えるためには、ビデオカードの更新だけではなく、CPUやストレージ、モニターの強化もしたいという状況にあるのなら、思い切ってゲーミングノートPCへの乗り換えるを検討してみてはいかがだろうか。
持ち運びか性能重視かでオススメは変わる
ここまでゲーミングノートPCとしてMSIの3モデルを紹介してきたが、オススメは何を重視するかによって異なる。大学や会社でも使うので頻繁に持ち運ぶ、という使い方なら「Thin GF63 12Vシリーズ」だろう。高さ21.7mmで本体質量は1.86kgと3モデルのうちもっとも薄くて軽い。バッテリ駆動時間も最大9時間(JEITA 2.0)と十分だ。また、実売価格で16万円を切るとコストパフォーマンスを重視したい人にもよいだろう。この価格でAAA級ゲームも快適にプレイできるのが素晴らしところだ。
バランス型は「Cyborg 15 A12Vシリーズ」だ。サイズや重量はThin GF63 12Vよりもわずかに大きく重いだけで、GPUにワンランク上のRTX 4060を搭載。キーボードもテンキー付きと仕事や学業に使いやすいのもポイント(Thin GF63 12Vはテンキーレス仕様)。こちらもバッテリ駆動時間は最大9時間(JEITA 2.0)だ。持ち運びもするけど、性能も確保したいという人に向いている。レイトレーシングを使った場合は、Thin GF63 12Vよりワンランク上の性能を発揮する。
性能を重視したり、据え置きでの利用中心なら「Katana 17 B12Vシリーズ」だ。サイズも大きく重たいが、17.3型と大きな画面でゲームを楽しめ、放熱力にも優れているためCPU、GPUともほかの2モデルよりも高い性能を発揮でき、動作音も静かだ。キーボードもテンキー付きとなっており、据え置き中心で仕事もゲームもクリエイティブな作業もこなしたい人にオススメと言える。
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