Amazon アグリゲーター、卸売の清算市場を揺さぶる:「収益性の高いブランドに集中」したその後

DIGIDAY

こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
※モダンリテール[日本版]は、DIGIDAY[日本版]内のバーティカルサイトとなります

Amazonアグリゲーターの台頭は、卸売の清算、すなわちブランドや小売業者から過剰在庫を買い取り、オフプライス販売業者のような大幅割引に強い業者に売る、というビジネスに変化をもたらしつつある。

卸売業者のマックホールセール(Mac Wholesale)で最高執行責任者を務めるマット・ミラー氏は、「当社は2005年に設立し、主に実店舗で販売されている大手消費者向けブランドと取引を行ってきた」と語る。しかし、同社はこの1年間でオンラインビジネスの新しいソースからの需要が顕著に増加していることに気づいたと、同氏は述べている。「実際に大きく変化したのは、これらの実店舗の小売業者のことを念頭に置いて作られたことのない、はるかに大量の過剰在庫が、今は市場に出回っているということだ」。

同氏は特に、Amazonアグリゲーターについて話している。すなわちAmazonの個々のブランドを掘り起こして、商品売上のほとんどをAmazonに依存してポートフォリオビジネス全体を作り上げるロールアップ企業のことだ。同氏によれば、アグリゲーターからのビジネスは少なくとも2倍になった。同社は「これらのビジネスで、この6〜12カ月で100万ユニット以上の商品を処理した」と、同氏は述べている。

ミラー氏に言わせれば、これは今の時代の動向を表している。「これらのアグリゲーターにすべての投資が集中した時期があった」と、同氏は述べている。しかしそのあとで、これらのビジネスの多くは、利益率と最高の実績をあげている商品に着目するようになり、収益性の低いブランドやSKUを切り捨てはじめた。「これらのアグリゲーターは現在、どの商品が良い実績をあげており、どれを切り捨てるべきかに重点を置いている」。

eコマースの成長が停滞

もちろん、リクイデーション(清算)業界は新しいものではない。しかし、Amazonの個々のブランドは多くの場合、自分たちが売った商品がAmazonで安く再販売されるのではないかという懸念から、過剰在庫を清算業者に販売するのを避けてきた。「ほとんどのeコマース出品者はすでにサードパーティーのマーケットプレイスにも出品している。また、これらの出品者が望んでいるのは、自分たちのブランドだけを守ることだけだ。つまり、自社の20ドル(約2640円)の商品が3ドル(約396円)で売られることを望んでいない」と、ミラー氏は述べている。

しかし、アグリゲーターの台頭は、ある意味この分野における独自の機会を表している。2020年と2021年に、これらのロールアップ企業は、けん牢なAmazonのみの商品カタログを作り上げるという意図で、数十億ドルの資金を調達した。しかしそのあとで経済が低迷し、eコマースの成長は停滞した。そのため、かつては資金が潤沢だったこれらのビジネスの多くは、自社のビジネスモデルを再考しはじめるようになった。

フォーティアグループ(Fortia Group)による最近の調査では、Amazonアグリゲーターの90%は昨年締結した契約の数が10未満だ。これは、わずか1年前におよそ80ものブランドを買収したセラシオ(Thrasio)のようなロールアップリーダーと対照的だ。このように契約が落ち着いているため、これらの企業の多くは自社のポートフォリオ全体について再考し、もっともよく売れているブランドだけに注力しようとしている。「2022年に入ると、Covidの残した影響に直面した。すなわち、ブランドの対等な比較が非常に難しくなり、特定のカテゴリーでは需要が減少した」と、フォーティアグループのCEOを務めるエメット・キルダフ氏は以前米モダンリテールに語った。

リバースロジスティクス企業で、清算プラットフォームのバルク(Bulq)などを保有するオプトロ(Optoro)でリコマースのジェネラルマネージャーを務めるオマール・エルトレビー氏によれば、この1年でAmazonからの清算ビジネスが大幅に増加した。しかし同氏の目には、その多くが、パンデミックに関連して行われた、以前の決定によるものに映るのだろう。

「Covidの期間のうち、長くにわたって、Amazonは在庫整理の多くを中断していた。同社はそれをしばらく停止して、前方のサプライチェーンにサービスを提供することに集中していた」と、同氏は述べている。

収益に注目するアグリゲーター

しかし現在になって、大手業者の多くは商品のバックログを抱え、多くのアイテムを卸売市場に放出している。「これにより、清算の価格をさらに引き下げることへの圧力が生まれた」と、同氏は語る。

たとえばミラー氏は、高級キャンプ用品のように、従来ならディスカウント市場に出回ることがなかった商品が清算され、オフプライス販売業者に出荷されるようになったと語る。これらのアグリゲーターからは、かさばるアイテムや、季節性の強い商品が、より多く荷下ろしされていると、同氏は付け加えている。

エルトレビー氏も、歴史的にAmazonの出品者が清算を避けるのは、「商品の値崩れ」を恐れているからだという、ミラー氏の見解に同意している。しかし、アグリゲーターの場合、「より大きな企業となり、投資家に応える必要が出てくると、従来よりはるかに利益率を重視するようになる」と、同氏は述べる。「今後は、多くのアグリゲーターが収益に注目するようになるだろう」。

しかし俯瞰してみると、こうした変化はリクイデーション業界全体の浮き沈みを表すものだ。「これは非常に周期的なビジネスだ。しかしそのサイクルが、パンデミックによって異常なものになった」と、カンター(Kantar)でクロスボーダーおよびテクノロジー担当のシニアバイスプレジデントを務めるデビッド・マルコッテ氏は語る。すなわち、清算業者は2020年に、実店舗が事実上営業停止したことから、膨大な量のアイテムを自由に利用できた。そのあとで在庫の削減がはじまり、多くのアイテムが不足するようになった。それから、eコマースの記録的な売上増大を受けて各ブランドが商品を買い込みすぎ、記録的な水準の過剰在庫が発生した

より高級なアイテムが流入

それでも、事態はしだいに安定しつつある。以前は何よりも成長を最優先にしていたアグリゲーターが、今では収益をより重視するようになってきており、これはある意味正常な状態だといえる。「これはまだ同じサイクル内だ」と、マルコッテ氏は語る。

しかし、ビジネスのいくつかの部分は変化していくかもしれない。ミラー氏は、より高級なアイテムが清算市場に流入しつつあると語る。「これまでに見られなかったような商品が売り尽くし市場で見られるようになってきた」と、同氏は述べる。Amazonのビジネスの多くが、より大手の業者と競合するため、中級から上級の商品を作り出そうと試みている。「これらの業者は、よく知られていないブランドから、より活気のあるカテゴリーの良質な商品を、大幅割引カテゴリーに流しつつある」。

[原文:Amazon Briefing: Aggregators are shaking up the wholesale liquidation market]

Cale Guthrie Weissman(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Illustration by Ivy Liu

Source

タイトルとURLをコピーしました