「なぜゲームのリメイクは成功するのか?」をカプコンやスクエニのプロデューサーら4人のゲーム開発者にインタビュー

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過去に人気を博したゲームをリメイクして新たに発売するということは、過去のゲームが築いた価値を守りつつ、商業作品として成功させるという高いハードルを乗り越えなければならないものです。そんなハードルを乗り越え、高く評価される作品を手がけたゲーム開発者らに、テクノロジー系メディアのInverseがインタビューしました。

Why Video Game Remakes Are So Good (When Most Movie Remakes Aren’t)
https://www.inverse.com/gaming/video-game-remakes-trend-interviews

Inverseがインタビューしたのは「The Last of Us Part I」「バイオハザード RE:4」「龍が如く 維新!」「FINAL FANTASY VII REMAKE」のクリエイターたちです。Inverseは全員に同じ3つの質問をしました。

◆Q1:(映画やテレビ番組に比べて)なぜビデオゲームはリメイクに適しているのでしょうか?
・ノーティードッグ(The Last of Us Part I)のゲームディレクター、マシュー・ギャラント氏(以下、ギャラント)
ビデオゲームが芸術的なメディアとして興味深いのは、その基礎となるテクノロジーといかに本質的に結びついているかという点にあります。開発者は、ハードウェアの性能と制約の中で難しい選択をし、頭の中にあるゲームのビジョンを完全に実現しようと努力しています。技術の進歩はめざましいので、ゲームの中で実現可能な領域もどんどん広がっています。

The Last of Us Part Iでは、人間を主軸とした描写を見せながら、植物が生い茂り、光と影に彩られ、水や火、雪が渦巻く、人のいない自然界の美しさも表現しています。こうした美的感覚はオリジナルとリメイク版で変わりませんが、10年にわたるハードウェアの改良により、キャラクターも環境もよりリアルに、ダイナミックに、詳細に、美しく、忠実に再現されるようになったのです。テクノロジーは、私たちをオリジナルの創造的ビジョンに近づけてくれるのです。


テクノロジーの応用は、ゲームプレイにも及んでいます。処理能力が高まれば、敵のAIをより賢くしたり、画面上の敵の数を増やしたりすることができます。開発者は、現代の常識に合うように操作方法を更新したり、遊びやすさにつながる機能を追加したりすることができます。これは、近年急速に進歩し、音声合成やハプティクス(触覚)などの新しい技術を活用したアクセシビリティにおいて特に重要です。

・カプコン(バイオハザード RE:4)のプロデューサー、平林良章氏(以下、平林)
正直なところ、ゲームが他よりリメイクに向いているかというと、そうでもないんですよね。映画など他の媒体でも、リブートも含めて良いリメイクはたくさんあります。ただ、ゲームのリメイクで思いつくのは、リメイクすることでプレイヤーに新しい体験を提供しつつ、オリジナルの思い出に触れることができるという、完全新作とは違う魅力があるということです。

・龍が如くスタジオ(龍が如く 維新!)のチーフプロデューサー、阪本寛之氏(以下、阪本)
ゲームには、ファンが積極的に参加できるという独自の魅力があります。ストーリーやキャラクターを思い浮かべたり、オリジナルの作品をプレイしたりできたとしても、アップグレードが施された現代のプラットフォームで記憶を追体験できるのは、映画やテレビとはまったく違うものです。だからこそ、リメイクの発表はワクワクするんです。開発チームがこの新しいバージョンに何を持ち込んでいるのか、小さな変化がどのように大きな違いを生むのか、気になるところです。

・スクウェア・エニックス(FINAL FANTASY VII REMAKE)のプロデューサー、北瀬佳範氏(以下、北瀬)
ゲーム自体が特にリメイクやリブートに向いているとは思いませんが、ひとつ言えることは、ハードの進化が著しいということです。


映画は、無声映画からトーキーへ、白黒からカラーへ、2Dから3Dへとハードの進化はあっても、俳優が生身の人間を演じ、実際の場所で撮影した映像という基本体験は変わっていません。したがって、単なるリメイクでは大きな違いが出ないため、変化を生み出すためには、ストーリーや設定などに手を加える必要があります。

一方、ゲームはモーションキャプチャーやAIの進歩により、2Dピクセルから3D CGへと飛躍的な進化を遂げました。仮にゲームをそのままリメイクしたとしても、プレイヤーの体験は大きく変わってしまうでしょう。

◆Q2:今はリメイク作品の方が流行ってるのですか?
・ギャラント
リメイクが流行っているようです。何が変わったかといえば、パブリッシャーがリメイクの強い需要に応えているだけではないでしょうか。プレイヤーは愛する旧作を再びプレイすることを楽しんでおり、その需要はより多くのゲームをリメイクする動機となっています。私もその一人です。FINAL FANTASY VII REMAKEでは、子供の頃の想像の中にしか存在しなかったミッドガルを歩き回ることができたので、とても嬉しかったですね。

リメイクは開発者にとっても魅力的です。10年前に手掛けた作品を、より多くの知識と経験を得て、再びアプローチする機会を得ることは、実にスリリングなことです。ハードウェアの制限やその他の制約のために行わなければならなかったトレードオフを、もう一度やり直すことができるのです。

同様に、「The Last of Us Part I」の開発者の多くは、(オリジナルの)「The Last of Us」をプレイしたことがきっかけでゲームの世界に足を踏み入れています。彼らは、ファンとして大好きだったゲームに携われることに興奮しているのです。

・平林
プレイヤーに喜ばれているリメイク作品は、リメイクで手を加えるだけでなく、オリジナルと同じものを残している、原作への愛が感じられる作品だと思います。これは、リメイク作品が人気があるかどうかを示す一般論ではありませんが、プレイヤーがリメイクを楽しめるかどうかの重要な要素だと思います。


・阪本
この業界も古くなり、多くのタイトルが発売されるにつれて、ゲームに対するニーズは高まる一方です。だからこそ、私たち開発者は、タイトルを見直すタイミングを慎重に見極めることが重要です。


・北瀬
PlayStation 4/5、Xbox One/Series Xの時代にグラフィック性能がピークを迎えたことは大きかったと思います。2Dピクセルや、初代PlayStationのノーテクスチャー・ローポリゴン時代のクラシックな外観のゲームをリメイクしたい場合、現世代ハードの性能に見合ったアセットを作成することで、今後10年以上通用するものになると思っています。

◆Q3:リメイクプロジェクトで最も困難な点は何でしたか?
・ギャラント
愛されるゲームをリメイクする際の難しさは、何を変え、何をそのままにしておくべきかを見極めることにあります。「The Last of Us Part I」の制作では、オリジナルゲームのフィーリングを再現することを第一に考えました。ジョエルとエリーが共に歩む旅には、特定の感情的な波動があり、すべての追加・削除要素はその波動と調和するかどうかで決めました。

具体的な例を挙げると、ボストンの隔離地域(ゲーム最序盤に登場するマップ)を作り直す際、草木の追加を意図的に控えたエリアがありました。隔離地域は、壁の外の危険な自然美とは対照的に、醜く、不毛で、圧迫感のある場所のように感じるです。もし、視覚的なアップグレードのためにこのエリアを美化していたら、環境が持つ物語性とは合わなかったことでしょう。

ゲームプレイ面での例としては、湖畔地帯での防衛戦が挙げられるでしょう。プレイヤーはボルトアクションライフルを使って襲い来る感染者から身を守るのですが、緊張感のある難しい戦いになっています。The Last of Us Part Iでは、ライフルを撃つたびに弾を入れ直すというディテールを追加しました。しかし、そのタイミングを工夫して、できるだけ速く、レスポンスの良いアニメーションにすることで、ただでさえハラハラする戦闘を難しくしないようにしました。アニメーションの忠実さのために、原作の感覚を失わないようにしたのです。


・平林
RE:4では、困難とまでは言いませんが、原作の魅力であるテンポや緊張感、カタルシスのバランスを、現代の基準に合わせながら再構築することに、多くの時間と労力を費やしました。

・阪本
一般的には、オリジナルから残す部分と変える部分のバランスを取ることだと思います。原作の良さを残しつつ、原作を尊重しながら、原作をより良くして、ファンをもう一度ワクワクさせる方法を考えています。

・北瀬
2つあります。まず、特にRPGについては、古いゲームでは表現が簡略化されていましたが、それと引き換えにスケールの大きな世界を展開することができていました。これらを現在のHD画質でリメイクするとなると、膨大なボリュームになります。原作のエッセンスを損なうことなく、現代のクオリティに近づけるゲームデザイナーの感性がここでは重要な鍵となります。

もうひとつは、原作に対するファンの思い入れです。昔好きだったゲームの思い出が、実際の体験よりもより美しく、より強調されるというユーザー体験を大切にしながら、リメイク作品を制作する必要があります。

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