ワクチン接種を完了した人でもコロナに感染する「ブレークスルー感染」とは?

GIGAZINE
2021年07月30日 22時40分
メモ



新型コロナウイルスのワクチン接種を完了したにもかかわらず、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を発症する事例が報告されています。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)はこの事例を「vaccine breakthrough cases(ブレークスルー感染)」と名付けて警戒を呼びかけていますが、そのブレークスルー感染がいったいどのような特徴を持っているのか、海外メディアのInverseが解説しています。

What You Should Know About the Possibility of COVID-19 Illness After Vaccination | CDC
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/vaccines/effectiveness/why-measure-effectiveness/breakthrough-cases.html

Delta variant: 8 things vaccinated people should know about breakthrough Covid-19
https://www.inverse.com/mind-body/breakthrough-covid-delta-variant

‘The war has changed’: Internal CDC document urges new messaging, warns delta infections likely more severe – The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/health/2021/07/29/cdc-mask-guidance/

◆ブレークスルー感染とは何か?
CDCはブレークスルー感染を「FDAに認可されたワクチンの接種を完了した人の呼吸器検体中の抗原から、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のRNAまたは抗原が検出された事例」と定義づけています。なお、CDCはワクチン接種を完了した人々のためのガイダンスの中で、「ワクチン接種の完了」の定義を「ファイザー&BioNTech、およびモデルナが開発した2つのワクチンを、2回接種してから2週間以上経過したタイミング」「ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)のワクチンは、1回目の接種から2週間が経過したタイミング」としています。

CDCは同じガイダンスの中で「ワクチン接種を完了した人は、SARS-CoV-2への感染、重症化、および死亡のリスクは減少する」と述べています。しかし、「軽度である傾向があるが、ブレークスルー感染がごく一部でのみ発生する」「仮に感染力が強いデルタ株(B.1.617.2)に感染した場合、他の人に感染させる可能性がある」とし、ワクチン接種を完了した人に対し「感染率の高い地域では屋内であってもマスクを付けること」「COVID-19の症状が表れた場合は検査を受けること」などを推奨しています。

◆ブレークスルー感染はどれくらい報告されているのか?
CDCによると、2021年1月1日から4月30日までにアメリカで報告されたブレークスルー感染の患者数は1万262人です。このうち2725人が無症候性で、160人が死亡しました。CDCの研究によると、感染者の年齢の中央値は58歳、死亡者の年齢の中央値は82歳でした。また、2021年5月1日から7月19日までにアメリカで報告されたブレークスルー感染のうち、入院した患者は5601人、死亡した患者は1141人でした。Inverseは「CDCの研究から、入院または死亡した患者は高齢であるか、免疫不全であるか、既存の疾患を抱えていた傾向にある」と述べました。

◆症状はどのようなものなのか?
メハリー医科大学の微生物学および免疫学の准教授であるドナルド・アルセンドール氏は「ブレークスルー感染の症状は完全に無症候性のものから重度なものまで広範囲に及び、入院または死亡につながる可能性がある」「併存症のない65歳未満の人々にとって、ブレークスルー感染は無症候性または軽度である可能性が高い」と述べています。また、CDCも「ワクチン接種を受けていない人々よりも、入院・死亡の可能性ははるかに低い」と述べています。

◆ブレークスルー感染により子どもにウイルスを感染させてしまうことはあるのか?
日本やアメリカでは、11歳未満の子どもはファイザー&BioNTechおよびモデルナのワクチン接種を受けることが出来ません。ワクチン接種を完了した人であっても、ウイルス、特にデルタ株を子どもに感染させてしまう可能性はあるとのこと。

アルセンドール氏は「SARS-CoV-2やデルタ株以外の変異株については、約15分の密接な接触の後に感染が起こると考えられていたが、デルタ株ではほんの一瞬で感染が起こります。密接に接触し合う親子間で、デルタ株が感染することは非常に現実的。しかし、11歳未満の子どもが大人よりも重症になる可能性ははるかに低い」と述べました。


感染力が強いとされているデルタ株の感染力については、海外紙のワシントン・ポストが報じたCDCの(PDFファイル)内部文書により、CDCが「水痘(水ぼうそう)と同様」と考えていることが明らかになりました。以下の表の縦軸が死亡率、横軸が1人の感染者が何人の二次感染者を発生させるかを表します。


なお、感染力については、「ある感染症に対してまったく免疫を持たない集団の中で、1人の感染者が平均して何人の二次感染者を発生させるかを示す「基本再生産数」、あるいは「既に集団に感染が広がっている状態で、ある時間において1人の感染者が平均して何人の二次感染者を発生させるか」を示す指標「実効再生産数」が参考になります。COVID-19については、2020年11月に公開された複数の国を対象とした研究によると、基本再生産数は2.4~3.4。ロンドン大学衛生熱帯医学大学院を拠点とする感染症数理モデルセンター統計によると、アメリカ国内での実効再生産数は、2021年7月27日時点で1.1~1.6です。なお、デルタ株の基本再生産数はCDCの資料の通り5~9.5、はしかの基本再生産数は6~7、2009年型のインフルエンザウイルスの基本再生産数は1.3~2.0とされています。

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