つかみどりはたいてい硬貨やお菓子など、価値があるものだ。
そしてつかんだものを持って帰ることができる。
この価値&持ち帰るという部分を抜きにして、ただゲームとしてつかみ取りをしたら楽しいのだろうか。
つかみどるのは洗濯バサミ
家にあったダンボール箱に洗濯バサミを100個入れた。
これをエイプリルフールの喫茶デイリーポータルZに置いておいた。
まずは編集部のメンバーにやってもらう。
「え、もらえないんですか?」と言いながらも挑戦する。
なんらかの気遣いがあったのかもしれない。だが……
いきなりコツを発見してしまった。無償の行為が遊びになった瞬間である。
コツから師弟関係も生まれた。稲作から身分が生まれた。
だめもなにも、少なくても多くてもいいことはない。
だからなんなのか、たくさんつかんだところでなんの誉れはない。でも人間は頑張ってしまう動物なのだ。
資本家に使われてしまうぞ!
楽しみにする人まで登場した。だから何ももらえないんだってば。それを知った上での盛り上がりだ。
「主催者として負けてられないからな!」と言ってしまった。この100個の洗濯ばさみは何個つかんだところでも僕のものである(私物だから)。
無為の遊びから身分が生まれ社会になってきた。クニの誕生までもうすぐだ。
ライター井上さんが記録を出した瞬間にガッツポーズが出た。
「知らなかった才能だ」
「宇宙人と戦うために国がこの才能を探しているかもしれない」
「つかみ取り型の秘密兵器のオペレーターは君だ!、みたいな設定で」
とむちゃくちゃ盛り上がった。そして井上さんはなにももらえずに(洗濯バサミひとつももらえない)またコーヒーを飲んでいた。