「黒字化100%ムリ」それでも地域のために 福島・浪江町「スマホで呼べる車」がもたらす未来

J-CASTニュース

   「交通弱者」という言葉がある。地域の公共交通機関が貧弱で、車がないと社会生活に支障をきたす人たちだ。主に高齢者や子ども、体の不自由な人が挙げられるが、状況次第では誰でも弱者の立場に陥る。

   福島県浪江町では、暮らしに車が欠かせない。だが地元住民にとって、車が使えない場面は意外とある。こうした課題のひとつの「解」として実証実験が続けられているのが、スマートフォン(スマホ)ひとつですぐ車を呼び出せる交通サービスだ。

  • スマモビの車両。スマホでの配車手続きから3分ほどで来た

    スマモビの車両。スマホでの配車手続きから3分ほどで来た

  • 取材に答えた日産自動車総合研究所・宮下直樹さん(左)

    取材に答えた日産自動車総合研究所・宮下直樹さん(左)

  • 記者のスマホ画面に表示されたバーチャル停留所。路上から車を呼び出せた

    記者のスマホ画面に表示されたバーチャル停留所。路上から車を呼び出せた

  • JR浪江駅前に設置されている大型タッチパネルでも、スマモビの車を手配できる

    JR浪江駅前に設置されている大型タッチパネルでも、スマモビの車を手配できる

スマホに表示されるバーチャル停留所

   2011年3月の東京電力福島第一原発の事故で、浪江町全体に避難指示が出された。JR浪江駅を軸にした沿岸部の一部地域で指示が解除されたのは、17年3月。だが常磐自動車道西側は広範囲にわたり、今も帰還困難区域のままだ。23年2月末時点の町の居住人口は1355人で、震災前の約6%に過ぎない。

   記者は23年2月、町を取材で訪れた。浪江駅前には人も車も見当たらない。バスは1時間に1本、時間帯によっては2時間以上待つ。タクシーは台数が少ないと聞いた。行先が徒歩圏内ならよいが、目的地が遠方だと移動が困難だ。

   駅のバス乗り場で、大型のタッチスクリーンを見つけた。町役場や「道の駅なみえ」、大型ショッピングモールといった行先が並び、タッチ操作で車を呼ぶ「なみえスマートモビリティ」(スマモビ)のサービスだ。日産自動車が22年2月、浪江町で実証実験を開始した。

   メインの呼び出しツールはスマホだ。専用アプリをインストールし、利用者登録しておく。乗車地は駅などの大型施設のほか、アプリに表示される地図から指定できる。ユニークなのは、地図上に「バーチャル停留所」が多数現れる点だ。町の中心部は徒歩1分以内に、郊外では利用動向を踏まえて登録者の自宅付近などに作られる。利用者の声を拾い、数を増やしている。遠くまで歩かなくても乗車できるので、特に子どもや高齢者は助かるだろう。

   記者も、目印のない路上でアプリを開くと停留所が示されたので、その場で配車依頼。3分ほどで車が到着し、目的地の「道の駅なみえ」まで運んでもらった。料金は200円と、タクシーよりずっと安い。有料化したのは23年1月から。運賃は中心部からの距離に応じて、200円、300円、500円、800円の4段階に分かれている。

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