TP-Linkから、「日本特別仕様」のコンセプトを引き継いだ第2弾のWi-Fi 6ルーター「Archer AX3000」が発売された。1万円前後の売れ筋価格帯で、シンプルなデザイン、コンパクトな筐体、IPv6 IPoE対応と、確実に日本のマーケット、それもボリュームゾーンで競合に勝つための要素を詰め込んだ製品だ。
ひっそりWi-Fi EasyMeshにも対応しており、メーカー間の互換性の壁も越えられるかもしれない意欲作となっている。
国内マーケットのボリュームゾーンでの戦いが激化
TP-Linkから、Wi-Fi 6ルーターの新製品「Archer AX3000」が登場した。
昨年末、「日本特別モデル」として発売されたアンテナ内蔵のArcher AX80のコンセプトを引き継ぎつつ、より進化させた新製品で、簡単に言えば、国内マーケットのボリュームゾーンで、国内メーカーの売れ筋モデルに勝つために開発された意欲作だ。
ブラックでシンプル、アンテナ内蔵のデザイン、国内で主流になりつつあるIPv6 IPoEサービスへの対応、セキュリティ対策やペアレンタルコントロールなどの付加機能の充実など、日本のユーザーが求める機能を詰め込みつつ、さらに一回り小型を実現し、価格も約1万円という購入しやすい設定となっている。
現状、国内でのWi-Fiルーターの売れ筋ランキングを見てみると、以下のような特徴を持つ製品が強いが、今回のArcher AX3000は、この傾向を全て満たした、まさに売れ筋ド真ん中のモデルとなっている。
- 1万円以下の実売価格
- アンテナ内蔵
- ブラックのシンプルなデザイン
- コンパクトなサイズ
筆者的には、こうした点もさることながら、これまでメーカー間の互換性に問題があったEasyMesh環境での「EasyMesh互換」をうたっているあたりにも注目したいが、本製品の登場で、国内Wi-Fiルーターマーケットのボリュームゾーンでの戦いが、一層激化することは確実と言えそうだ。
ちょうどいいサイズ
では、実機を見ていこう。まず外観だが、やはりサイズが小さくなったメリットは大きい。
サイズは157×45×166mm(幅×奥行×高さ)と、同じデザインのArcher AX80(189×59×200mm)と比べて一回り小さくなっており、どこにでも設置しやすいサイズとなった。縦置きで使えるうえ、アンテナも内蔵で余計な出っ張りがないので、壁際などにすっきりと設置できる(壁掛けも可能)。まさにちょうどいいサイズと言えるだろう。
無線のスペックは、デュアルバンドで、各バンドが2ストリーム対応となっており、2.4GHz帯が最大574Mbps、5GHz帯が160MHz幅時で最大2402Mbpsとなっている。最近では、PCもスマートフォンも2402Mbps接続が可能となってきたので、端末のWi-Fi性能をきっちり引き出せる仕様と言えそうだ。
有線LANは、全て1Gbps対応で、WAN×1、LAN×4を搭載している。WAN側は、接続方式としてIPv6 IPoEにも対応しており、国内の回線事業者が採用するv6プラス・OCNバーチャルコネクト・DS-Lite環境での利用も可能となっている。こうした点からも、日本市場をしっかりと見据えて開発されたことが伺える。
国内メーカー製品に一歩も譲るところのない仕様と言えそうだ。
Archer AX3000 | |
価格 | 1万450円 |
CPU | デュアルコア |
メモリ | – |
Wi-Fiチップ(5GHz) | – |
対応規格 | IEEE 802.11b/g/a/n/ac/ax |
バンド数 | 2 |
160MHz対応 | 〇 |
最大速度(2.4GHz) | 574Mbps |
最大速度(5GHz) | 2402Mbps |
最大速度(6GHz) | – |
チャネル(2.4GHz) | 1-13ch |
チャネル(5GHz) | W52/W53/W56 |
チャネル(6GHz) | – |
ストリーム数(2.4GHz) | 2 |
ストリーム数(5GHz) | 2 |
ストリーム数(6GHz) | – |
アンテナ | 内蔵(2本) |
WPA3 | 〇 |
メッシュ | 〇(EasyMesh、OneMesh) |
IPv6 | 〇 |
DS-Lite | 〇 |
MAP-E | 〇 |
WAN | 1Gbps×1 |
LAN | 1Gbps×4 |
LAG | – |
USB | – |
セキュリティ | TP-Link HomeShield |
VPNサーバー | OpenVPN/PPTP |
動作モード | RT/AP |
ファーム自動更新 | 〇 |
LEDコントロール | 〇 |
本体サイズ(幅×奥行×高さ) | 157×45×166mm |
使いやすさも確保
使いやすさも問題ない。丁寧なマニュアルも付属しているが、スマートフォン向けアプリの「Tether」を利用することで、初期設定や管理が簡単にできる。
IPv6 IPoE対応ということで、筆者宅のv6コネクト(DS-Lite)環境に接続してみたが、回線の自動判定機能によって、AFTR設定も含め自動的に接続を構成できた。こうした国内回線環境への対応もしっかり実現しているあたりは高く評価したい。
このほか、ネットワーク上の脅威の検出、保護者による制限、QoSなどが可能なセキュリティ機能TP-Link HomeShieldにも対応している(ブリッジモード接続時は利用不可)。DDoS保護やIoTデバイス保護、利用時間制限などは有料のHomeShield Proが必要だが、手軽に自宅のWi-Fiのリスクを軽減することが可能だ。
EasyMesh互換を実現
機能面では、国内メーカーでは採用が少ないVPNサーバー機能を搭載していることも特徴と言えるが、注目は「EasyMesh互換」を表明している点だろう。
EasyMeshは、メッシュ製品の相互互換性を確保するためのWi-Fi Allianceの標準規格だ。実体は別として、規格の趣旨としては、EasyMeshに対応していれば、他メーカーのメッシュ対応製品ともつながることになっている。
今回のArcher AX3000は、正式にEasyMeshに関するWi-Fi Allianceの認証を受けたわけではないが、実質的にEasyMeshと同等の機能を実装しており、そのことから「互換」という表現を採用している。
では、実際に他メーカーの製品とつながるのかというと、製品やモデルによると言えそうだ。
現状、EasyMeshに正式対応しているのはバッファローのWi-Fi 6対応ルーターや中継機となっているが、筆者が個人的に購入したバッファローの中継機(WEX-1800AX4EA)を利用してみたところ、EasyMeshならではの有線ケーブル直結のセットアップ方法では接続できなかったが、WPAボタンを使った無線設定でEasyMeshが構成でき、相互接続できることを確認できた。
筆者は、以前、何度かメーカー間でのEasyMeshの互換性をテストした経験があるが、異なるメーカー間でのEasyMesh接続を確認できたのは、本製品が初めてだ。
しかしながら、他社製品の場合、Archer AX3000の管理画面で「メッシュデバイス」としてはオフラインとなり、「クライアント」として表示されてしまうなど、さすがに管理上の互換性までは確保できない。こうした機能を利用したい場合は、やはりTP-Link製品同士で利用することをおすすめする。
また、異なるメーカー同士の場合、トラブルが発生した際の切り分けやサポートが難しくなる。個人的には、実質的なメッシュのメーカー間相互接続が実現できた記念すべき第一歩だと思っているが、実質的には同一メーカーでの利用をおすすめしたいところだ。
パフォーマンスも文句なし
気になるパフォーマンスも良好だ。以下は、木造3階建ての筆者宅の1階にArcher AX3000を設置して、各階でiPerf3による速度を計測した結果だ。
1F | 2F | 3F入り口 | 3F窓際 | ||
Archer AX3000 | 上り | 948 | 602 | 343 | 255 |
下り | 938 | 778 | 460 | 386 |
近距離の1階は有線の限界に近い900Mbpsオーバーを実現できている上、床を1枚隔てた2階でも600~700Mbpsとかなり高速だ。長距離も、3階で300~400Mbps出ているため十分だし、もっとも遠い場所でも200~300Mbpsとなかなか速い。
アンテナが内蔵されているだけでなく、今回のモデルは小型化もなされているため、パフォーマンスに対象の影響があるかと心配したが、まったく問題ないようだ。特にもっとも遠い場所で下り386Mbps出ているのは優秀で、動画の再生やビデオ会議などでもストレスを感じることはないだろう。
将来的にメッシュにもできる「安心感」
以上、TP-LinkのArcher AX3000を実際に利用してみたが、サイズも、価格も、性能も、日本のユーザー環境にマッチした製品と言えそうだ。
性能も十分で、正直、一般的な住宅であれば本製品1台でも十分に全室をカバーできそうだが、前述したように本製品はメッシュでの利用も可能になっているため、本製品を2台利用したり、メッシュ対応の中継機を組み合わせることでさらに範囲を広げたりすることができる。
「将来的にメッシュにすればいい。場合によっては、他メーカーもつながる可能性が高い」という安心感は、本製品ならではの大きなメリットだ。どのような環境にも、誰にでも、おすすめできる万能な一台と言えるだろう。
(協力:ティーピーリンクジャパン株式会社)