これまでに「あの時こうしておけばよかった」など後悔した経験がある人は多いはず。過去の行動が未来に影響を及ぼす「順行性」という概念が現代の科学では一般的ですが、一部の物理学者や哲学者の間では、未来の行動が過去の結果に影響を与える可能性があるという「逆行性」という概念が注目されています。
A Growing Number of Scientists Are Convinced the Future Influences the Past
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逆行性の可能性について研究を行っているサンノゼ州立大学の物理学者、ケネス・ウォートン氏やケンブリッジ大学トリニティ・カレッジのヒュー・プライス氏らは、量子力学の領域では、「量子もつれ」や「トンネル効果」などの不思議な現象が発生することを例に挙げ、過去の行動が未来に影響を及ぼす「順行性」に対して疑問を投げかけています。
ウォートン氏らによると、「逆行性」のような「逆因果律」は「量子もつれ」や「トンネル効果」などの従来の物理学や量子力学では説明が困難な不思議な現象を説明できる可能性があるとのこと。さらに逆因果律は、時間が順行・逆行するかに関係なく物理法則が同じになるという「時間対称的な宇宙観」について探求することが可能とされています。
逆因果律の考え方は一般的なタイムトラベルとは異なり、信号や物体を過去に送ることはできません。逆因果律とは未来の状況が過去の状態と相関するというメカニズムだとされています。
ウェスタン大学ロットマン哲学研究所のエミリー・アドラム氏は「時間対称的に量子力学を理解するためには、逆行性のような何らかの遡及(そきゅう)的な因果関係が必要です」と述べ、「同じ発生源から粒子を受け取った2人の人物が、何光年も離れているにもかかわらず、相関関係を見いだす」という思考実験を紹介しています。アドラム氏によると、逆因果律の研究者は、これらの粒子が過去から生じる相関を示していると主張しているとのこと。つまり、2人の人物がそれぞれ粒子に対して行う測定は、過去の粒子の特性に影響を与えることができるとされています。
ウォートン氏は「逆因果律は、量子もつれについて量子力学よりも自然に説明することができます」と述べ、また「逆行性の理論は万物の理論で重要視されている、重力が量子レベルでどのように働くかについて説明することができる可能性があります」と明かしています。
しかし、逆因果律については物理学者や哲学者といった専門家の間でも意見が分かれており、ウォートン氏らによると、「科学者が実用的な理由で書き記した法則」と「自然現象として発生すること」を区別するためには注意が必要とのこと。
プライス氏は「逆因果律が、量子力学と古典物理学との間の矛盾を解決するために役立つ可能性があります」と述べ、逆行性によって未来の状態と過去の出来事の相関関係を説明できる可能性があることを明かしています。
さらに、逆因果律の考え方は波動関数と波動関数の収縮を理解するための新たな方法を提供することで、従来の量子力学と古典物理学を統合する新たな手段を提供することができるとされています。
ウォートン氏は「我々の目標は、逆因果律に関するより一般的なモデルを考案することです」と述べ「成功するかどうかはまだわかりませんが、多くの物理学者がこれを新たなの選択肢として真剣に受け止めていることを心強く思います。私たちは引き続き研究を進めます」と述べています。
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