「ピーナツバターが上顎にくっつくこと恐怖症」など実在する奇妙な恐怖症10選

GIGAZINE
2023年03月04日 20時00分
メモ



好き嫌いが千差万別なように恐怖症にもさまざまなものがあり、その中には「死体恐怖症」などむしろ好きな人の方が少なそうな対象を嫌う恐怖症もあれば、普通の人が気にもしないことを病的に恐れるものもあります。科学系ニュースメディアのLive Scienceが、医学的な報告や報道などから実在が確認されている恐怖症を10種類選んで解説しました。

10 unusual phobias that actually exist | Live Science
https://www.livescience.com/unusual-phobias-that-actually-exist

・目次
◆01:トライポフォビア(Trypophobia)
◆02:風船恐怖症(Globophobia)
◆03:衣類恐怖症(Vestiphobia)
◆04:バナナ恐怖症(Bananaphobia)
◆05:ピーナッツバターの上口蓋付着恐怖(Arachibutyrophobia)
◆06:長い単語に対する恐怖(Hippopotomonstrosesquipedaliophobia)
◆07:へそ恐怖症(Omphalophobia)
◆08:「恐怖症」恐怖症(Phobophobia)
◆09:毛髪恐怖症(Chaetophobia)
◆10:トイレ恐怖症(Toilet phobias)

◆01:トライポフォビア(Trypophobia)
トライポフォビアは蜂の巣や蓮(はす)の実が並ぶ様子など、穴や突起が並んでいる模様に対して恐怖や抵抗感を覚える症状です。日本では「集合体恐怖症」とも呼ばれており、蓮を合成した写真を使った嫌がらせである「蓮コラ」が一時期流行したことでも知られています。

トライポフォビアを報告した2018年の論文では、スライスしたパンや種が振りかけられたパン、穴あきチーズ、水玉模様などを極端に恐れる12歳の女性患者が取り上げられました。この患者の母親は、「浴室の壁のコンクリートに穴がたくさん開いているのを見つけて必死に逃げ出した」と医師に報告しているほか、ミツバチは怖くないのに蜂の巣の画像を見て泣き出してしまったこともあったとのこと。

以下のうち左は患者が恐怖を感じたコンクリートの壁で、右がその際の恐怖を本人に表現してもらった絵です。


最終的に、患者は認知行動療法と薬物療法で恐怖を克服しましたが、嫌悪感まではなくならなかったそうです。

◆02:風船恐怖症(Globophobia)
風船恐怖症は風船を対象とした恐怖症で、風船を見た時、触った時、あるいは風船のにおいを感じたときに強い恐怖を覚えるというものです。また、風船が割れた時の音だけを怖がる人もいます。


風船恐怖症を取り上げた2013年の文献によると、この恐怖症は自分の子どもの誕生パーティーに出席した父親や母親がそこで見た風船に恐怖し、医師に助けを求めることで発覚するケースが多いとのこと。また、風船恐怖症の根本的な原因は風船が破裂することへの恐怖なので、しぼんだ風船に触ってもらったり、わずかに膨らんだ風船で小規模な破裂を起こしたりする療法で乗り越えられるとも論じられています。

◆03:衣類恐怖症(Vestiphobia)
衣類恐怖症は文字通り着衣に対する恐怖症で、特定の服を恐れることもあれば、拘束感のあるぴったりとした服を恐れることもあるとのこと。極端な例では、服を着ることを避けるあまり社会から完全にドロップアウトしてしまうこともあります。


2011年に医学誌に掲載された症例報告では、中国軍に徴兵された21歳の患者の事例が取り上げられています。この患者は精神疾患の既往歴はありませんでしたが、野外訓練中に過呼吸や圧迫感を訴えたとのこと。症状は負荷がかかっていない防護ベストを着用している時にだけ発症し、ゆっくり歩いていると悪化しますが、ベストを脱いで数分間すれば収まりました。

こうした症状から患者は衣類恐怖症と診断されましたが、その後症状が再発することはなく、訓練や任務にも支障が生じなかったことから経過観察は打ち切られました。なお、衣類恐怖症になった患者と接する上では、患者が露出癖やヌーディストではないことを理解するのが重要だと指摘されています。

◆04:バナナ恐怖症(Bananaphobia)
イギリスのメディアであるDaily Mailは2011年に、バナナが同じ部屋の中にあることにすら恐怖を感じたという女性の事例を紹介しました。この女性患者は子ども時代からバナナ恐怖症で、バナナを振り回す同級生のいじめにも苦しみましたが、バナナと嫌な記憶を切り離す神経言語プログラミングという治療でバナナ恐怖症を克服し、治療後は職場の同僚がランチでバナナを食べていても問題なくなったと話しています。


◆05:ピーナッツバターの上口蓋付着恐怖症(Arachibutyrophobia)
2008年に「Food Bites」という雑誌に掲載された論文では、「Arachibutyrophobia」という恐怖症が紹介されています。これは、ラテン語でピーナッツを意味する「arachis」と、バターを意味する「butyro」に恐怖症を意味する「phobia」をつけた合成語で、ピーナッツバターそのものではなくピーナッツバターが口の中に付着することに対する恐怖症とのこと。

食べ物の食感が苦手だというケースは珍しくありませんが、この恐怖症の人は「粘着質の感覚」がパニックを引き起こすため、患者は同様に粘り気のある食べ物を口にしない傾向があるとされています。


◆06:長い単語に対する恐怖症(Hippopotomonstrosesquipedaliophobia)
「長い単語に対する恐怖症」のつづりは「Hippopotomonstrosesquipedaliophobia」で、もともと長い単語である「hippopotamus(カバ)」に、「monstrum(怪物)」や「sesquipedalian(長ったらしい単語)」をくっつけた合成語となっており、この言葉自体が「長い単語に対する恐怖症」の人にとって悪夢のような言葉となっています。また、単語をさらに長くするために意図的なスペルミスをしのばせた「Hippopotomonstrosesquippedaliophobia」というバリエーションもあります。

なお、改まった文書で用いられる正式名称は「Sesquipedalophobia」で、これはラテン語の「sesqui(1.5)」と「pedal(足)」にphobiaを付けて作った言葉です。「sesquipedal」を直訳すると「1.5フィート」となりますが、これは古代ローマの詩人であるホラティウスが「詩論」の中で、不必要に長々しい言葉を使わないよう若い詩人たちをさとした時の例えが元になって生まれた表現だと言われています


「長い単語に対する恐怖症」は多くの場合、長い単語をうまく言えずに恥ずかしい思いをした幼少期の経験がきっかけだと言われています。例えば、教育者向けの学術雑誌・The Reading Teacherで2011年に発表された論文では、読み書きに困難を抱える障害であるディスレクシアとの関連性が指摘されました。

◆07:へそ恐怖症(Omphalophobia)
へそ恐怖症の事例は、へそを触ったり他の人のへそを見たりすると気分が悪くなるという女性を取り上げた2016年のDaily Mailの記事で紹介されました。

当時、イギリスのレスター大学の医学生だったローレン・ジョーンズ氏は、腹部検査の講習を受けた際にパニック発作を発症してしまったとのこと。記憶をたどると、子ども時代に誰かから「へそをさわってにおいを嗅いでみろ」と言われた時の強烈な臭さが原因だと気づいたジョーンズ氏は、学位取得に向けて認知行動療法を受けることを決意しました。ただし、Daily Mailはジョーンズ氏が無事試験に合格して医師になれたのかどうかまでは記していません。


◆08:「恐怖症」恐怖症(Phobophobia)
1983年の事例研究によると、この恐怖症は恐怖症そのものを対象としたものとのこと。研究者は、この漠然とした不安を「浮動性不安」と呼んでおり、息切れや動悸(どうき)など恐怖に伴う身体的な感覚に対する恐れだとしています。また、生命や身体を脅かす可能性のあるものや、特定の恐怖症になることを恐れている場合もあるそうです。

◆09:毛髪恐怖症(Chaetophobia)
毛髪恐怖症は人間や動物の毛を恐れるというもので、中には自分自身の体毛に恐怖を覚えて脱毛に躍起になる人もいます。髪の毛や毛深い人に対する否定的な経験が発端となっている場合があるほか、毛を不潔なものと捉えることから潔癖症の類型と考えられるケースもあるそうです。


◆10:トイレ恐怖症(Toilet phobias)
不安症の人の支援を目的とした慈善団体・National Phobics Societyによると、トイレ恐怖症はトイレの利用に伴う困難に関するものだとのこと。具体的には、トイレまでの距離が遠すぎることへの恐怖、公共のトイレを使うことへの恐怖、トイレを使っているところを他の人に見られたり音を聞かれたりすることへの恐怖などがあります。


この恐怖を持っている人は、トイレを使うことを避けるために極端な行動に走ってしまうことがあり、ニュースメディア・HuffPostの2015年の記事では、2カ月近くも排便を我慢して命を落としてしまった16歳の患者の事例が伝えられました。

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