パブリッシャーの希望は プログラマティック 直接取引:「現在のプログラマティックには、競争、広告主、価格圧力が不足している」

DIGIDAY

1月末にDIGIDAYが報じた通り、一部のパブリッシャーの広告直販事業の2023年はスロースタートとなっており、第1四半期の広告収入は予測を10~25%下回っている。加えて、広告事業のプログラマティック部門も好調とはいえないようだ。

パブリッシャーのセールスチームがクライアントを交渉の席につけようと躍起になっている一方で、プログラマティックオープンマーケットプレイスも状況は芳しくない。中・大規模の米国内パブリッシャー3社の幹部は米DIGIDAYに対し、RPM(1000ページビューあたりの売上)は20~55%下落していると述べた。また、別のパブリッシャー2社もプログラマティック広告事業が低調であることを認めたものの、正確な数字は明かさなかった。

プログラマティック広告市場全体を見ると、オペラティブ(Operative)のSTAQベンチマーキングデータによれば、オープンマーケットプレイスでの平均月間CPM(1000インプレッションあたりの価格)は、2020年1月には1.45ドル(約192円)、2021年1月には1.41ドル(約187円)で、2022年1月も同様に1.41ドルだった。これに対し、2023年1月の平均CPMは1.21ドル(約160円)と、0.2ドル(約27円)も急落している。

競争・広告主・価格圧力が不足

サロン(Salon)の最高売上責任者を務めるジャスティン・ウォール氏によれば、パブリッシャーのプログラマティック事業にとって、ページあたりの売上を明確に把握するにはRPM基準の指標のほうが適切だという。CPMは個々の広告枠あたりの価格の指標だが、RPMはページあたりの広告提示数などの変数も考慮されているためだ。

ウォール氏は、自社がオープンプログラマティックマーケットプレイスで獲得している平均RPMの正確な数字を明かさなかったものの、「2022年1月と2023年1月を比較すると、平均RPMは55%下落した」と話す。パンデミック以前の2020年1月との比較でも、2023年1月の平均RPMは約21%下落しており、2023年1月は「2020年以降で広告(RPM)にとって最悪の1月」だったという。一方、2020年1月と2021年1月、2021年1月と2022年1月の比較では、RPMはそれぞれ24%、43%上昇していた。

「現在のプログラマティック事業には、競争、広告主、価格圧力が明らかに不足している」と、ウォール氏は嘆く。

ニュースパブリッシャーのガーディアン(The Guardian)米国版もまた、プログラマティック事業の低迷に直面しているが、同社の広告担当シニアバイスプレジデントを務めるルイス・ロメロ氏によれば、主にブロックリストに登録されたことが原因だという。これは、多くのニュースメディアに共通の悩みでもある。同社では「プログラマティック事業の縮小に着手している」と同氏は述べたが、規模の詳細は明かさなかった。ただし、ガーディアン米国版のプログラマティック広告売上への依存度を下げることを2023年の目標としており、「2023年に入った段階では広告事業の50%を占めているが、年末までにその割合を50%未満にするとの展望だ」という。

あるデジタルメディアの幹部が匿名を条件に語ったところによると、「同社の間接プログラマティックCPMは前年比で30~40%減となったが、同部門は広告事業のごく一部を占めるにすぎないため、今四半期や今年度の売上への影響については心配していない」と話す。「弱い部分ではあるが、我々の事業のイベントや人材の部分で補うことが可能だ」。

プログラマティック直接取引に賭ける

複数のメディア幹部は、プログラマティック直接取引により、直販とオープンプログラマティックの減少分を補うことができるはずだと希望をもっている。オープンマーケットプレイスプログラマティックで広告主が購入する、パブリッシャーのサイト上のディスプレイ広告は、どんなコンテンツに隣接して表示されるかに関する情報が乏しい。一方、プログラマティック直接取引はプライベートマーケットプレイスまたは(プログラマティックギャランティード)セラーを通じておこなわれ、隣接コンテンツ、インプレッション、エンゲージメントなどの条件がより保証される。

別の2人のパブリッシャー幹部が匿名を条件に語ったところによると、プログラマティックギャランティード(PG)購入のRFPは増加傾向にあり、こうしたキャンペーンのRPMも上昇しているという。

「我々のプログラマティックRPMは上昇している。毎年1月はプログラマティックが比較的沈静化するのだが、我々のRPMは(2022年の)第3四半期から約30%増加した」と、2人目のメディア幹部は語った。なお、2023年の第1四半期と2022年の第3四半期を比較しているのは、第4四半期のプログラマティック価格はしばしばインフレ傾向を示すため、比較可能な直近の四半期が第3四半期であることに加え、景気後退の影響も考慮してのことだ。

同幹部はまた、「主としてプライベートマーケットプレイスでプログラマティック直接取引の収益化をおこなっており、CPMは横ばいであるものの、広告ユニットの強化とより多くのページでの広告インベントリー(在庫)の確保により、売上は増加している」と述べた。さらに、同社のセールスチームは勢いを取り戻しつつあり、プログラマティックギャランティード取引は2022年後半にやや落ち込んだものの持ち直し、全体としてのプログラマティック広告売上のさらなる増加を支えているという。

一方、オペラティブのSTAQベンチマーキングデータによれば、プログラマティックギャランティード取引での平均CPMは、2021年1月の9.39ドル(約1245円)から、2022年1月には9.91ドル(約1314円)に上昇し、さらに2023年1月には10ドル(約1326円)に達した。ただし、2022年から2023年にかけて平均CPMは増減の波を経験しており、ピークは6月の14.50ドル(約1923円)だった。

さらに、3人目のメディア幹部によれば、「今四半期のRFPの大部分をブランデッドコンテンツではなくプログラマティックギャランティード取引から獲得している」と話す。ここからは、クライアントとエージェンシーはいずれも依然として人の手を介したキャンペーン展開を望んでいるものの、迅速に実施可能であることや固定価格による簡便性も重視していることが示唆される。

CPMの下落はチャンスの可能性も

オープンマーケットプレイスでのパブリッシャーの経験は均一ではない。本記事で取材したほかのパブリッシャー幹部とは異なり、3人目のメディア幹部は、自社のオープンマーケットプレイス売上は逆境にありながら極めて順調であり、この事業分野は「我々の予測に忠実だと考えている」とした。同幹部は、売上の具体的な数字や前年比の成長率への言及を避けたものの、売上の大部分はGoogleのオープンマーケットプレイスを介したものであると話した。

メディアバイヤーにとってCPMの下落はチャンスになりうると、メディアトゥー・インタラクティブ(Media Two Interactive)のCEOであるセス・ハーグレーブ氏は指摘する。価格下落の主な要因は予算承認の遅れであり、クライアントはいずれにせよプログラマティック広告市場に不在な可能性があるからだ。

クライアントが広告計画のサイクルの終わりに予算を放出すれば、こうした傾向は今四半期の終わりまでに変化するかもしれない。実際、すでに先月末には変化の兆しが見えている。しかし、このような土壇場の投資によって、パブリッシャーのプログラマティック広告事業が被った1四半期分の損失が補填されるかどうかは未知数だと、ハーグレーブ氏は付け加えた。

[原文:The programmatic open marketplace is faltering, but publishers see a bright spot in private programmatic deals

Kayleigh Barber(翻訳:的場知之/ガリレオ、編集:島田涼平)

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