ミンク農場で壊滅的な鳥インフルエンザが発生。毛皮を手放さないファッションブランドに警鐘

DIGIDAY

歴史上、ミンクの毛皮はクラシックな魅力とラグジュアリーの象徴だった。だが、ミンク農場は現在では人類の半分を殺す可能性のある病気の伝染場となっている。

鳥インフルの人への具体的な脅威

コロナ以前の感染の発生により、すでにいくつかの国でミンク農場の禁止が実施されている。スペインのミンク農場で、致命的なH5N1「鳥インフルエンザ」ウイルスの哺乳動物から哺乳動物への感染が発生したことについて、不安を掻き立てるような新しい研究結果が2月初めに見出しを飾った。現時点ではこのウイルスに感染した人の死亡率は56%であり、複数の専門家がミンク農場の完全閉鎖を求めている。大手ファッションブランドの大部分はすでにすべての毛皮を放棄しているが、ミンク製品は世界最大のラグジュアリーブランドのいくつかのコレクションでまだ目にすることがある。

1月に発行された科学ジャーナル、ユーロサーベイランス(Eurosurveillance)の論文によると、スペインのミンク農場でのH5N1ウイルスの発生でミンクからミンクへのウイルス感染の可能性が示されたという。これまでのところ、鳥との直接的な接触による人への感染例が確認されており、哺乳類から哺乳類への感染が懸念されている。さらに、この研究ではヒトを含む哺乳動物間の感染の可能性を高めるウイルスの突然変異が存在する可能性があることが示唆されている。

トロント総合病院研究所の臨床研究者、アイザック・ボゴッチ医師は次のように述べている。「これは、至近距離にいる多数の哺乳類に鳥インフルエンザが入り込み、それらの哺乳類間で感染したという一例だ。問題は、現在、ミンクのあいだでもっと感染しやすい重度の感染症がある場合、それはミンクとヒトのような異種間で感染しやすいのか、また、人間の間で大規模な感染を引き起こすような感染しやすい可能性があるのかということだ」。

ミンクファー製品に関するブランドと小売業者の対応

ミンクファーの衣服をオンラインで検索すると、ザ・ロウ(The Row)、フェンディ(Fendi)、オスカー・デ・ラ・レンタ(Oscar de la Renta)、フィリッププレイン(Philipp Plein)といったブランドのミンクファー製品の販売が表示される。また、ブランドンブラックウッド(Brandon Blackwood)はミンクファーを使ったハンドバッグとサンダルを販売している。イヴサロモン(Yves Salomon)、ポロジョージス(Pologeorgis)、ゴルスキー(Gorski)、バーネット(Burnett)、ケリークウリ(Kelli Kouri)、ライヒ(Reich)などの毛皮専門ブランドのミンク製品は、24S、ハロッズ(Harrods)、FWRD(フォワード)、ニーマン・マーカス(Neiman Marcus)、バーグドルフ・グッドマン(Bergdorf Goodman)、ハーヴェイ・ニコルズ(Harvey Nichols)といった高級小売店でいまでも取り扱われている。ただし、このうち最後の小売業者3社は2023年にすべての毛皮を段階的に廃止することを約束している。

1850ドル(約24万円)のフェンディ(Fendi)の染色済みミンクファーを使ったサンダルには現在、バーグドルフ・グッドマンの「コンシャスキュレーション(Conscious Curation)」ラベルが付けられている。このラベルについて、バーグドルフ・グッドマンは「顧客が自信を持って購入できるように、世界にポジティブな変化をもたらすブランドや製品に対して」サステナビリティの「定義を明確にする」イニシアチブであると説明している。

ボゴッチ医師は病気の感染を早める「ミンク特有の何かがある」と述べている。「ミンクやそれに近い動物は実験室で実験動物として使われることがよくある」が、それは「そのような動物がこのような感染症を獲得して伝染させる能力が高いから」だという。「哺乳類から哺乳類への感染は以前にもあった。小規模だっただけで、今回ほどではなかった。これこそが今回が異なっている理由だ」と付け加える。

各国のミンク養殖禁止法

ウイルスの感染によってミンク養殖の禁止が叫ばれるようになったのは今回が初めてではない。H5N1の発見により、すべてのミンク農場を閉鎖を訴える新しい動きが起こった。ミンク農場でのミンクと人間の間の新型コロナウイルス感染が起こったあと、デンマークは2020年に一時的に、イタリアとオランダは2021年に政策を制定した。米国下院は2022年にミンクの養殖を禁止する法案を可決。毛皮に反対する国際連盟(Fur Free Alliance)によると、動物の毛皮のための飼育は20カ国以上で禁止されているという。

このような禁止や数百万頭のミンクの殺処分により、世界最大の毛皮オークションハウスであるコペンハーゲン・ファー(Kopenhagan Fur)は今年閉鎖すると発表している。

コペンハーゲン大学の研究者の論文によると、世界の毛皮小売取引の規模は 201億ドル(約2.6兆円)と推定されていた。市場はこの10年間で大幅に縮小している。2013年にプライスウォーターハウス・クーパーズ・イタリア(Pricewaterhouse Coopers Italy)が国際毛皮連盟(International Fur Federation)の委託により行った調査によると、パンデミック前の毛皮市場の規模に関するデータでは400億ドル(約5.3兆円)と評価されていた。2018年の時点で市場規模の見積範囲は240億330億ドル(約3.2兆〜4.3兆円)だった。

また、この論文では、新型コロナウイルス感染症対策の結果、生のミンク皮の世界生産の25%と世界貿易の30〜35%が排除されたと推定されている。

ミンク養殖禁止への高まる声

現在、世界中でミンク農場の閉鎖を加速するように求める声が高まっている。コラムニスト、ゼイネップ・ トゥフェックチー氏によるニューヨーク・タイムズ紙の2月3日付の論説では、終末論的な規模のパンデミックのリスクを軽減するために全ミンク農場の閉鎖が推奨されている。また、1月24日に掲載されたサイエンス(Science)の記事では、別の専門家がH5N1ウイルスの「実存的脅威」を引用してミンクの養殖をやめるように呼びかけた。

ボゴッチ氏は、自分には特定の政策を要求できるほどミンクの養殖慣行についての専門知識はないと述べているものの、「現状維持は前進の道ではない」という事実を強調している。

「異なる動物種間で感染する可能性があるということに細心の注意を払わなければならない」。

ブランドと小売業者による毛皮製品排除の動き

近年では世界最大級の高級ブランドのほとんどが生産から毛皮を削減しており、ミンク農場を経営しているファッションブランドは現在少数派だ。この動きはコロナパンデミックの前に始まっていた。グッチ(Gucci、2017年)、ボッテガ・ヴェネタ(Bottega Veneta、2018年)、バーバリー(Burberry、2018年)、シャネル(Chanel、2018年)、ヴェルサーチ(Versace、2018年)、プラダ(Prada、2019年)などのブランドが動物の権利と環境への懸念により毛皮を排除すると発表した。パンデミックが始まった後、ケリング(Kering)の残りの全ブランド、クロエ(Chloé)、ヴァレンティノ(Valentino)、ドルチェ&ガッバーナ(Dolce & Gabbana)、モンクレール(Moncler)がこれに加わった。オスカー・デ・ラ・レンタのミンクファー製品は引き続き販売されているが、ビリー・アイリッシュ氏からの圧力により、同社も毛皮製品の販売中止を2021年に発表している。

LVMH モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)の担当者は声明の中で、LVMHはL同社ブランドが毛皮製品を生産することを依然許可してはいるものの、「LVMHの規則と慣行を大幅に強化している」と述べている。この声明によると、「毛皮部門は、公衆衛生、動物福祉、持続可能性を懸念事項の中心に考えている政府と業界双方の基準により、すでに大部分が規制されている」という。LVMHは「主に」フィンランド、北米、カナダからミンクの皮を調達している。「当グループは供給において粗放養殖を保護している。集中養殖はしばしば人畜共通感染症をもたらし、病気を広めることで知られている」。

毛皮を生産し続けている企業にとって販売拠点はさらに減少している。今年の1月1日からカリフォルニア州では毛皮の販売が全面的に禁止されている。また、ニーマン・マーカスとその子会社に加えて、ユークス・ネッタポルテグループ(Yoox Net-a-Porter Group)、ファーフェッチ(Farfetch)、ブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)、ノードストローム(Nordstom)、メイシーズ(Macy’s)、マイテレサ(Mytheresa)などの小売業者はすべて毛皮の販売を中止している。

Z世代にはアピールしない毛皮製品

全体的に毛皮はファッションの時代精神から急速に脱落している。ロンドンファッションウィークは2018年のショーでファーを禁止した。2022年にはコペンハーゲンファッションウィークがそれに加わった。バウム・ウント・フェルドガルテンによる(映画『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』の登場人物の)マーゴ・テネンバウムをテーマにした最近のランウェイショーではミンクコートはゼロだった。ライオンの頭が付いたドレスをまとったカイリー・ジェンナー氏が登場してバイラルになったスキャパレッリ(Schiaparelli)のファッションショーではすべてフェイクファーが使われていた。

若い世代の顧客を狙うブランドが毛皮を段階的に廃止するのには市場の力が働いているかもしれない。ラグジュアリー製品の世界の中心であるフランスでは、フランス世論調査研究所(IFOP)による2021年の世論調査で人口の90%が毛皮に反対していることが判明している。ボストン・コンサルティング・グループ(Boston Consulting Group)の2019年のレポートによると、Z世代のラグジュアリー顧客の間では動物福祉が持続可能性の最大の懸念事項であり、Z世代とミレニアル世代の購入客の64%が持続可能性が購入の決定に影響を与えていると回答したことが判明している。だが、特にほかのグローバル市場ではミンクファーに対する需要は未だに存在している。たとえば、中国のラグジュアリー消費者は依然毛皮の購入に関心を持っている。

無行動という選択肢はない

現在、議員やブランド、小売業者や消費者にとっての問題はこのH5N1の新しいニュースを踏まえてミンク農場をどうするかということである。コメントを求めたが、LVMHを除いて、この記事で言及したブランドからはコメントはなかった。

「確実性と答えが求められているのは理解しているが、不確実性は存在するのでそれを伝えることが重要だ。また、行動しないのは良い選択肢ではないと伝えることも重要だ」とボゴッチ氏。「新型コロナウイルス感染症よりもはるかに深刻なウイルスによるパンデミックの可能性は常に存在している」。

[原文:Catastrophic bird flu outbreak at mink farm sparks alarm as some fashion brands won’t give up fur

LIZ FLORA(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

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