メモ
メールやコミュニケーションツールでやり取りをしている時、自分の投稿に対して誰からも返事が返ってこなくてやきもきしたことがある人は多いはず。この投稿に対して返事が返ってこない状態に考えられる解釈を「ワーノックのジレンマ」と呼ぶそうで、オープンソースソフトウェアのエンジニアであるFlorian氏が自身のブログで解説しています。
xahteiwi.eu – Warnock’s Dilemma, Objections, and Acknowledgements
https://xahteiwi.eu/blog/2021/10/30/warnock-dilemma/
実際に顔を突き合わせて行う対面での会話で相手に何かを話しかけた場合、相手からその場で反応が返ってこないということは基本的にありません。発声言語によるメッセージを受け取った人は、例え言葉を発しなかったとしても、表情やボディランゲージなどの「非言語的反応」を無意識のうちに返します。また、対面での会話は基本的に1対1のコミュニケーションであり、その場にいる相手に注意を向けています。
しかし、メールやコミュニケーションツールなど、リアルタイムでの返答を期待しない非同期型コミュニケーションをオンラインで展開する場合は同時に複数人と会話する状況が多く、誰かと1対1で話すよりも多くの情報を受け取らなければならないことがよくあります。そのため、対面での会話では相手に言われたことに対しての反応を示せばいいのに対して、オンラインでの1対多人数のコミュニケーションでは、「まず何に反応して何をインプットするのか」を選択しなければならず、さらにオンラインではメッセージの送り手に何のフィードバックも与えられません。
「オンラインでのコミュニケーションで相手から返答がない時はどうすればいいのか」という問題は、インターネットコミュニティでは少なくとも2000年頃から取り上げられていたもので、Perlの開発者だったブライアン・ワーノック氏が2000年8月に言及したことから「ワーノックのジレンマ」と名付けられています。
Re: RFCs: two proposals for change – nntp.perl.org
https://www.nntp.perl.org/group/perl.bootstrap/2000/08/msg1127.html
ワーノック氏による「ワーノックのジレンマ」とは、オンラインコミュニケーションで投稿に対する返事がない場合、送信者は主に次の5パターンの可能性で悩んでしまうというもの。
1:投稿の内容は正確でよく書かれており、追加のコメントは必要ないと判断された。
2:投稿は完全にナンセンスなものであり、誰もこれを指摘するためにエネルギーや転送量を無駄にしたくない。
3:何らかの理由で誰も投稿を読んでいない。
4:誰も投稿を理解できていないが、何らかの理由で説明を求められることもない。
5:何らかの理由で、誰も投稿を気にしていない。
新型コロナウイルス感染症の流行に伴って、プロジェクトを進めるチームスタイルにもリモート環境を中心とする「分散型」が増えてきました。しかし、分散型チームはオンラインの非同期型コミュニケーションを基盤とするため、「ワーノックのジレンマ」が発生しやすくなります。
Florian氏は、チームの管理者としてワーノックのジレンマに対処するためには、「異論を特に奨励する習慣をつけること」「認める文化を確立すること」の2点を心掛けるべきだと述べています。
また、Florian氏は、どんな内容でもすべての返信に対して「確認しました」「OKです」「素晴らしい、ありがとう!」など、かならず確認したことを示すことをルールとすることもすすめており、「親切にするのにコストはかかりません」と述べました。
なお、実際は「ジレンマ」とは相反する2つの選択肢で悩むことですが、ワーノック氏が提示した可能性は5パターンであるため、ワーノック氏自身は「ジレンマではなくペントレンマでしょう」と指摘しています。
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