書き出し小説大賞 254回秀作発表

デイリーポータルZ

書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)

そういえばもうすぐバレンタインなんですね!女子高生のみなさーん、本気チョコ待ってまーす!(54歳・自営業)それでは今週もめくるめく書き出しの世界へご招待しましょう!

書き出し自由部門

ダムに沈んだ村の空に、今年も薄氷が張った。

タカタカコッタ

発想と情景がぴったり重なった秀作。ブラボーです。

9131回目の朝日が昇る頃、僕は死ぬことをやめた。

のゆう

櫻の花びらが水面に落ちた。近寄ったこいはどこかへ消えた。

華ニ付ク

さくらは「櫻」、鯉は「こい」。表記を変える試みと深み。

拭わずにいる一筋の鼻水が鎖骨を通り、ヘソ横を通過するが、裸の私はまだ寒い事を認識していない。

かつを

虫歯の治療中、妻と愛人が入ってきた。

ウチボリ

修羅場プラスα

強風の日は空飛ぶ山田さんを見ることができる。

あの

挽き肉を炒めてしまったらもうハンバーグは作れないのだ。

寂寥

実際に実感したリアル。当たり前のことこそ深く刺さる。

おれはジル。しじみ汁をぶちまけた日からそう呼ばれてる。正確にはぶちまけられたんだけどさ。

井沢

スピードワゴンの井戸田なら上手くやってくれそうなキャラ。

気圧が下がるとぺっとりとした薄っぺらいものが空から降ってくる。私にだけ見える。

葱山紫蘇子

「2」をなぞるのが好きだ。最後の緊張感がたまらない。

いずも

海を眺めて意識のピクルス。

モンゴノグノム

ふいんきが好きだったです以上です。また大切な夜を失う。

須能がる↑

舞い降りる雪が死ぬほど綺麗で、舞い降りる様子にただ呆然としていた。そして気付いた「死ぬほど」という言葉が嫌いだと。

DIC

寂れた港町に住む哲学者。人生の「何か」を知っているが、その「何か」を生かす方法を知らないので、いつも体育座りで海を見ている。

正夢の3人目

最新鋭サイボーグと昼食を取る機会があった。彼は数種類のサプリメント、ビスケットをいくつか食べ、珈琲を1杯飲むと、自ら満腹中枢を電気刺激して食事を終えた。

prefab

明るくも暗くもない夕方は窓から家々が透けて見える。

みよおぶ

語られることではじめて思い出せる情景。胸の奥が締め付けられる。

いったん広告です

つづいては規定部門。今回のテーマは『お仕事小説』でした。息を吸うのも屁をこくのも、仕事と思えばそれが仕事。

規定部門・モチーフ『お仕事小説』

働く者に、朝は2回来る。

有機

かっこええ!……でもちゃんと寝てね。

眠れない夜に駄作と名作が生まれる。

人馬一体勘

何のネジを作っているのかは知らない。

ろっさん

地上げガールの朝は早い。

モンゴノグノム

これは二本髷で角界に新しい風を吹かせる床山の物語。

カズタカ

床山視点!面白そう(笑)

依頼を受けて、バスの「次、停まります」のボタンを押す仕事をしている。

いそうろう

細かい脚本家は、通行人Aの親族がたどった数奇な人生に思いを馳せている。

東ことり

自分が人間であることを忘れなければならない。ゆるキャラの着ぐるみの中とは、そういう世界だ。

はらけん

昔『ダイアポロン』って巨大ロボットアニメがあって、それはパイロットがロボットの中で同じ大きさに巨大化するって設定だった。それを思い出しました。

朽ちたほだ木が転がる山の斜面に、種駒打ちの乾いた高音だけが響き渡っている。

はらけん

ほだ木も駒打ちもシイタケ栽培の用語のようです。専門用語って好奇心くすぐるよね。

週明けの郵便局保険窓口には、土日の間考えに考え抜き思い詰めた顔をした人が証書を握りしめて押し寄せてくる。

やつかふつつか

その時、ボイラー技士にとって命ともいうべきボイラー技士免許が灰と消えた

S.虚無

この「逆転無罪」、私が書いたんだよ。

平真琴

先日書き出し作家のある方が、裁判所から判決の紙を持って出てくる仕事をしたそうです。(実話)

狼煙の濃い奴から出世していった。

措置

狼煙の濃さとか考えたことなかった(笑)

好きな人と話ができた日、わたしはいつもより強めにENTERキーを押す。

もんぜん

風呂場の黄色いアヒルを手に取り尻を見る。ひよこ鑑定士の職業病だ。

ぐるりん

ネオンを音符に変えるのが風俗店専門ユーロビート作曲家の醍醐味である。

吉田髑髏

元警察犬のラッキーは、フリーになった今も冤罪事件を追い続けている。

g-udon

男はこの世で借りなれないものはないと言う。

ミミズグチュグチュ

「ルパンはとんでもないものを借りてきました」

一流が使うものは一流が作ったものでなくてはダメなのだ。指揮棒職人は酔うといつもそう言った。

高田

深夜一時、機材車は揺れる。

南極行太郎

プロゾンビ役者は、まるでゾンビのように朝のバスを待つ。

タカタカコッタ

喫煙所のゆとり世代はシャボン玉を吹かし、さとり世代は空を見上げて常に何かと交信していた。

タクタクさん

「悪くない。」それは親方の最大の褒め言葉だった。

えむけい

親方はこれくらいでありたい。

それでは次回のモチーフを発表します!

次回モチーフ
『ベビースターラーメン』

次回のお題はキングオブ駄菓子、ベビースターラーメンです。とくにおやつカンパニーから依頼があったわけではありません。ただ個人的に大好きなお菓子ということと、商品名まで絞り込んだお題にどんな作品が集まるのかという好奇心によるものです。特定の商品をお題にさせて頂くので、前提として悪意のないものでお願いします!
締め切りは2月24日、発表は26日を予定しています。下記の投稿フォームからご応募下さい。力作待ってます!

最終選考通過者

青一月 ZERU 兎刑 たこフェリー アビゲイル 雨谷雁 やつかふつつか ユーラクロン

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