一般にフランスパンと呼ばれるバゲット、パリジャン、バタールなどは、常温で放っておくとすぐに石化してしまう。最近、フレンチトーストにすればおいしく蘇生できることに気がついた。
バゲットが、ゴッチゴチなのである。
バゲットは冷凍保存せずにいると、みるみるうちに硬くなる。この写真の個体もそうだ。一見普通のパンだが、パン切り包丁で叩くとカン、カンと金属のような音がする。
「霧吹きで水をかけてラップをしてレンジにかける」とか「濡らしてアルミホイルに包んで温める」とか、バゲットをやわらかくする方法はいくつか知られているようだが、ここまでくるとちょっと水をかけたくらいでは戻らない。乾きの権化として君臨しているようなパンだ。
こんなとき、フレンチトーストにしてしまえばおいしく食べられることに気がついた。今回はそのレシピをご紹介したい。
ただ、木こりのような気持ちでパンをこるのみである。あんたは旅の人かい、このあたりは最近ツキノワグマが出るから気をつけな、そんなことを考えながらなんとかパンを切り出す。もはやノコギリがほしい硬度だ。
(バゲット1/2本ぶん)
・牛乳または豆乳……250cc
・卵……4個
・砂糖……大さじ山盛り1杯
ラップをかけて冷蔵庫に入れ、たまに裏返す。フォークがすんなり刺さる硬さになるまで待つ(だいたい30〜40分ほど)。
最後にフタをして、ごく弱火で5分ほど蒸して火を通したら完成だ。
余ったアパレイユはこのフライパンで焼いてやわらかいスクランブルエッグ(筆者の家では「賢者のスクランブルエッグ」と呼んでいる)にし、貴重なタンパク源になってもらおう。
フレンチトーストというと食パンで作るイメージが強いが、食感などの面でバゲットで作る方が好みだ。旨味が強く、パンを噛みしめる喜びを感じる。毎朝これがいい。
筆者のお気に入りはスーパーの安い生ハムと、スライサーで雑に切ったハードチーズ、イタリアンパセリとたっぷりのオリーブオイル。塩と油と炭水化物、これがまずいはずがない。
サラダチキンやアボカド、バナナなどを添えるのもおすすめだ。
うっかり冷凍保存するのを忘れて、石化したパンを生み出してしまった際は、捨てずにフレンチトーストとして蘇生させてみてはいかがだろうか。