千葉県が、スクラップヤードの規制について本腰をいれはじめました。
記事では、千葉県にスクラップヤードは330か所あり、その3分の1ほどで、騒音や土壌・水質汚染、火災などが確認された、とあります。
千葉県は、スクラップヤードをはじめとするヤードは多く立地しています。
とりわけ佐倉市を管轄する佐倉警察署管内のヤード数は、全国一多いということはあまり知られていない事実です。
佐倉市は、
- 成田空港に近いこと、
- 高速道路の入り口が市及び市周辺に複数存在すること、
- 千葉港が近いこと、
- 比較的広い未使用地や森が多数存在すること、
などから、ヤードの立地が多いと分析されています。
十把一絡げに「ヤードは悪」というつもりはありません。本来ゴミとして扱われる各種廃品を、有価物と廃棄物により分ける作業は必ずだれかがやるべき仕事であり、その担い手がヤードであるからです。
他方、管理の悪いヤードでは、先のとおり「騒音や土壌・水質汚染、火災」などが発生しているうえ、特に悪徳なヤードでは、犯罪が行われることもよく知られた事実です。例えば、盗難車を分解し、素早く海外に運び出すことを業とする事業者も存在します。
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そのような犯罪目的でヤードを営む業者は、主に海外からやってきます。一度ヤードとなった未使用地は、仮に当該悪徳業者が摘発された後にも、別の外国籍の事業者が借り、不正行為を繰り返すという悪循環が生まれてしまっています。
そこで、盗難車を、ヤードに持ち込ませることを未然に防ぐことを目的に、ヤードを監視する監視カメラを設置する条例を制定することはできないか、と考えました。この条例を考えた当初は、佐倉市に条例を制定させる趣旨で検討していたため、書きぶりもそのようになっています。
想定していた条例の骨子
背景:上記のとおり
目的:ヤードに盗難車を持ち込ませないための監視
監視対象:① ヤードに盗難車を持ち込もうとする者、② ヤード管理者(ヤード内部の作業)
手段詳細:① ヤードの出入口、② ヤードの内部、を監視する監視カメラの設置
※監視カメラの設置場所はヤードの外の道路等を想定
※監視カメラは、出入口の数や面積に応じて、複数台の設置も想定
適用:新規にヤードを営もうとする者、または、行政が監視カメラの設置を要請した者
費用負担:① 新規にヤードを営もうとする者、または、行政が監視カメラの設置を要請した者、もしくは② ヤードとして利用する事業者に土地を貸す地権者
監視カメラの管理者:佐倉市
※千葉県警とデータの共有を想定
実効性の確保:監視カメラの設置を拒否した場合、ヤードとしての利用許可をしない
関連法規の整理
以上の構想はありつつ、上記のような条例を策定する際、私ではどうしても知見が追い付かないポイントは、「法律の整理」です。効果が見込める条例であっても、法的に逸脱してしまっていては制定することはできません。
そこで私は、防犯カメラやサイバー犯罪の権威である、東京都立大学教授の星周一郎先生に、2020年9月、以下の点についてご知見をいただきました。
- 上記条例では、憲法13条の肖像権、プライバシー権がどのように影響するか。
- 上記条例を制定する場合、憲法29条の財産権がどのように影響するか。
- 上記以外で、下段の趣旨の条例を制定する際考慮すべき法文はあるか。
【関連条例】
千葉県:千葉県特定自動車部品のヤード内保管等の適正化に関する条例
以下の資料は、私からの上記3点の問い合わせに対して、星先生からいただいたコメントです。
ヤードにおける防犯(盗難車の搬入・搬出等)を目的とした街頭カメラの設置に関するメモ
※上記資料は、私からの私的な問合せに対して、星先生にご好意で作成していただいたものです。よって、公式文書の体裁をとっていません。アゴラで公開させていただくご許可はいただいたものの、もしより詳細な相談が必要な場合は、公式なルートでお問合せください。また、個人情報保護法の改正に伴い、同法の地方公共団体への直接適用の開始等の件について、資料作成当時とは状況の変化がございますこと、予めご賢察ください。
千葉県としては、ヤード規制に関する条例制定等取り組みにつき、本情報もぜひご参考にしていただきたいと考えます。
もしくは、この内容を国内法として制定する、という方策も考えられます。量刑の変更とは違う犯罪抑止のアプローチのひとつとしてご検討いただければ幸いです。
星先生には、大変重要な法的整理をいただきながら、佐倉市では諸事情で条例制定まで話をすすめることができなかったため、アゴラにて改めて公表させていただくこととしました。
ご多忙の折ご対応いただき、誠にありがとうございました。この場を借りて改めて深くお礼申し上げます。