採用担当者が知らない「掘り出し物人材」はここにいる

アゴラ 言論プラットフォーム

黒坂岳央(くろさか たけを)です。

筆者は会社の経営者なので、人材採用をする立場だ。最近は採用した人が辞めないので採用する機会はご無沙汰ではあるものの、ありがたいことに真面目で一生懸命働き、何より会社を辞めない非常によい人材に恵まれている。その理由の一つは「掘り出し物人材」の拾い方について、多少なりとも理解があるからだと自負している。

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「人材と賃貸における物件には掘り出し物など存在しない。経済学のメカニズムが働くことで、必ず価格相応にランディングする」との反論がありそうだ。結論を先に言えば、掘り出し物人材とは「他社で敬遠されがちな人材」がそれにあたるのである。今回の話は企業ブランドや、採用に巨費をかけられる大手企業には当てはまらないが、良い人材の採用に苦慮する中小零細企業には何らかの気付きになる可能性はある。

会社で採用されにくい属性

世の中には採用されやすい人、されにくい人がいる。とはいえ、「学歴やキャリア」「高度な資格」といったスペックの話ではなく、「子供がいる主婦」「派手な見た目をしている」といったその人の置かれた状況や価値観の方だ。

差別的な思想のつもりは毛頭ないが、現実的に小さな子供がいる主婦は、仕事を見つける難易度が独身者に比べて必然的に高まる。採用者側にとっては「もしも急な子供の熱で休まれたらどうしよう…」とリスクを恐れるからだ。そして応募者側はこれが痛いほど理解できているため、過去に面談をした際には、該当する属性の持ち主のほぼ全員が「うちは子供がおりますが、仕事でご迷惑をおかけしないように工夫します」と自らウィークポイントであることを認めつつ、意欲的な姿勢をPRしてくれた経験からもそれが分かる。

同じく、世の中には金髪、ピアスをしているなど派手な見た目をしている人がいる。企業側は「自己主張が強そう」「常識を知らなそう」と敬遠しがちだろう。

こうした属性を「採用されにくい人材」と定義して話を進めたい。

お宝物件を引き当てた体験談

しかし、こうした属性を逆手に取って、あえてそうした属性の中から優良な人材を見つける方法は非常に有効だと感じる。

筆者はフルーツギフトショップの会社経営をしているが、管理職にしたのは小さな子供のいるワーキングママである。彼女は子供が突発的な熱を出したり、学校や保育園行事で休むことは確かにある。だが、彼女の労働生産性は極めて高く、一切のムダがない。これはその人物だけではなく、他のワーキングママにも共通している。人間は時間や資金など、制約下におかれることで、「どうすれば実現できるだろうか?」とクリエイティビティが働く。その逆に潤沢にリソースを与えられすぎると、その全てを使おうとしてしまう(ちなみにこの機能性はパーキンソンの法則で提唱されている)。時短のひらめきとは、1時間かかる仕事を前に、30分しか時間がないような状況で生まれる。子供がいることをできるだけ気を使わせず、働きやすい労働環境を作り上げた結果、今後も辞めずに長く自社で働いてくれそうである。

また、正社員ではなくアルバイトで金髪や銀髪の若者を採用した。同社内の役員からは「大丈夫か?」と不安の声があがった。しかし、「問題ない。この人は絶対にいける」と自分がGoサインを出した。結果的にこれが大成功した。内一人は、大学一年生の時に採用した人物だったが、卒業するまで4年間在籍してくれ、仕事ぷりもパート・アルバイトや派遣の中でも、もっとも生産性が高く、尚且つ非常に真面目である。彼の話を聞くと、過去のアルバイト歴は派手な見た目を問われない工場勤務だったという。勝手な想像だが、派手な見た目を敬遠されてのことだったかもしれない。その逆に過去に真面目そうな大学生を雇った結果、隠れて仕事をサボってばかりだったり、ミスが多くやる気もなかったりしたことがあった。「見た目が9割」「外見は内面の見える化」といった言葉があるものの、「やはり、人は見た目だけではわからない」と感じたものである。

採用の眼力が必要なのは大手より中小

人口減少が続くことが想定される我が国において、労働生産性を高めて競争力を維持するには優秀な人材採用が不可欠となる。大手はその企業ブランド力や、採用費をかけることで価格相応の優秀な人材採用が可能だろう。お金をかければ、良い人材は採用できるのだ。

しかしそのような資金力やブランド力がない中小零細企業こそ、良い人材を採用する力が求められると考える。その1つには、市場から敬遠されがちな属性の人材の中から、掘り出し物の人材を探し当てることだ。

来年には金髪大学生の彼が、就職で離脱することが決まっている。次の採用が迫る中、同じやり方で良い人材を引き当てたいと思っている。

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