世界最大のテック・イベントCES。かつてはコンシューマー・エレクトロニクス・ショー、すなわち「家電見本市」といわれたこのイベントですが、いまやその内容はスマホやドローンに宇宙ロケットまで多岐にわたり「ハイテク見本市」の様相を呈しています。
そんなCESでは、ここ数年「ヴィークル・テック」と呼ばれる自動車産業とその周辺の技術の展示が盛んに行なわれています。その中でも毎年「サプライズ」を提供してくれるのがBMW。昨年(2022年)は電子ペーパーの技術を応用して「白黒に色が変化する車体」を披露し、SNSなどでも大きな話題となっていました。
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「リスクに値する」。おそらくBMWにとって「チャレンジ」とは、そういうことなのです。
老舗の高級カー・ブランドにはおおよそ似つかわしくない大胆な挑戦を続ける理由はその価値があるから。そんなBMWの攻めの姿勢を知る筆者は「今年も何かあるだろうな」という期待を抱いて発表会場に向かいました。
BMWの発表:CES 2023
BMWによるプレス向け発表会の会場はパール・シアターという劇場。
CEOのOliver Zipse氏が登壇。
i Vision Dee:BMWミドルセダンの新型コンセプト
ここでの発表は「ディー(Dee)」と呼ばれるミドルセダン型のコンセプトカーを中心に進められます。
変幻自在なカラー
2023年のモデルも昨年と同様に車体の外装に電子ペーパー技術を応用したものですが〝カラー化〟したことが最大の進化。合計240枚のパネルが、それぞれ32色に変化するというカメレオンのような姿です。
@mr.masahira_tate THIS IS NOT CGI. color changing car in real life! #BMW #ces2023 #ces2023vegas ♬ オリジナル楽曲 – Mr.TATE
参考:BMW GROUP KEYNOTE AT THE CES 2023.
車=コンパニオンという提案
カラーパネルによる変色ギミックに目が行きがちですが、それにダマされてはいけません(笑)。〝Dee〟の正体は「人工知能アシスタント/運転アシスタント」であり、むしろこちらのほうが未来のBMW車を予測する上でのキモになりそうなのです。
〝Dee〟という愛称には「Digital Emotional Experience」という意味が込められており、ドライバーや搭乗者のコンパニオンとなる個性や感情(?)を持った存在へと車を進化させる試みとなっています。ちなみに、日本語で「コンパニオン」というとイベント・ブースやパーティーなどで接客や接待を行う人のイメージがあるかもしれませんが、ここでの意味は「仲間」としたほうが適切。
今回の〝Dee〟コンセプトのデモに見られたおもな特徴をまとめると以下の通り。
なお、今回の明らかにされたこれらの仕様はBMWが2025年発売を目標としている「ノイエ・クラッセ」への搭載が想定されているとのこと。〝コンセプトそのまま〟で発売ということにはならずとも、一部それに近い機能を備えた車が数年のうちに市販されることになるというわけ。これはなかなかエキサイティングな話です。
おまけ
発表にはアーノルド・シュワルツネッガー氏がゲスト登場。〝Dee〟の音声アシスタントとのかけあいで「古き良き車のイメージ」と近未来的なコンセプトをつなぐ役割を演じていました。ときどきプロンプター(登壇者が見るプレゼン用原稿)を無視してジョークをかまし、会場を暖めるなどエンターテイナーぶりは健在。シュワちゃん、さすがです。
80年代特撮の金字塔『ナイトライダー』に登場する人工知能を備えたスーパーカー〝K.I.T.T.〟もステージに現れ、(筆者を含めた)会場のおっさんたちは大喜び。
〝Dee〟は変幻自在のカラーパネルだけではない〝コンパニオン〟というコンセプト・カーになっており、車は単なる移動手段ではなく、音声アシスタントやHUD、VRなどを組み合わせた〝体験空間〟として進化する、という方向性が明確に示されていました。あえていうのであれば、Appleの「Siri」やAmazonの「Alexa」に近い領域へとBMWが挑んでいる、という印象。
なお、ラスベガスでは時を同じくしてソニー・ホンダモビリティが「AFEELA」を発表しています。
〝未来のクルマ〟をめぐる競争の盛り上がりを感じされるCES 2023でした。
*Category:テクノロジー Technology